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【金融審議会報告】サステナビリティ開示の義務化へ、企業が取るべき対応とは?

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サステナビリティ開示の義務化へ

coki読者の皆様、こんにちは。 近年、投資家の間では、企業の財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素を含む「サステナビリティ」に関する情報開示の重要性がますます高まっています。

2022年6月13日、金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループは、「中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて」と題した報告書を公表しました。

本稿では、coki読者の皆様に向けて、本報告書のポイントをわかりやすく解説するとともに、特にサステナビリティ情報開示に関して、企業が今後取るべき対応について解説します。

1. 報告書の背景:企業価値向上と「新しい資本主義」

本報告書が作成された背景には、

  • 企業経営や投資判断におけるサステナビリティの重要性の高まり
  • 企業のコーポレートガバナンスに関する議論の進展
  • 「成長と分配の好循環」を柱とする「新しい資本主義」の実現に向けた動き があります。

従来の財務情報中心の開示だけでは、企業の長期的な価値創造や社会への影響を十分に評価することが難しくなってきています。 そこで、企業がサステナビリティやコーポレートガバナンスに関する取り組みを積極的に開示し、投資家との建設的な対話を通じて企業価値の向上を図ることが求められています。

2. サステナビリティ情報開示のポイント

本報告書では、サステナビリティ情報開示に関して、以下の3つのポイントが示されています。

ポイント1:有価証券報告書における「記載欄」の新設

投資家にわかりやすく投資判断に必要な情報を提供するため、企業は有価証券報告書にサステナビリティ情報を記載することができるようになります。具体的には、有価証券報告書にサステナビリティ情報の**「記載欄」**が新設されます。

「記載欄」には、国際的なフレームワークと整合的な以下の4つの構成要素に基づく開示を行うことになります。

  • ガバナンス: サステナビリティに関する企業の考え方や取り組みのガバナンス体制
  • 戦略: サステナビリティに関する企業の戦略
  • リスク管理: サステナビリティに関する企業のリスク管理
  • 指標と目標: サステナビリティに関する企業の目標設定や実績

「ガバナンス」と「リスク管理」は全ての企業が開示し、「戦略」と「指標と目標」は、各企業が重要性を判断して開示することになります。

ポイント2:国内体制の整備

国際的なサステナビリティ開示基準の策定動向を踏まえ、日本における具体的な開示内容について実務面も含めた検討を行うため、公益財団法人財務会計基準機構(FASF)が**サステナビリティ基準委員会(SSBJ)**を設置しました。

SSBJは、国内の開示実務や投資家の期待や意見を集約し、我が国からの国際的な意見発信の中心となるとともに、ISSBにおけるサステナビリティ開示基準の策定動向を踏まえつつ、日本における具体的な開示内容について実務面も含めた検討を行うことが期待されています。

ポイント3:任意開示の促進

企業の創意工夫を生かしつつ、気候変動対応をはじめとするサステナビリティ開示の質と量の充実が進むよう企業を促すとともに、投資家も含め、サステナビリティ開示の適切な評価・分析、さらにはそれを活用した対話が進むよう促していくことになります。

3. その他の情報開示に関するポイント

本報告書では、サステナビリティ情報開示に加えて、以下の情報開示についても言及しています。

  • コーポレートガバナンスに関する開示:取締役会や指名委員会・報酬委員会などの活動状況、監査の信頼性確保、政策保有株式に関する開示の充実
  • 四半期開示をはじめとする情報開示の頻度・タイミング:四半期開示のあり方、適時開示の促進、有価証券報告書の株主総会前提出
  • 「重要な契約」の開示:企業・株主間のガバナンスに関する合意、企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意、ローンと社債に付される財務上の特約の開示
  • 英文開示:海外投資家との建設的な対話を促進するための英文開示の促進
  • 有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の記載事項の関係:重複する記載事項の整理

4. 企業が取るべき対応

本報告書を踏まえ、企業は、サステナビリティ情報開示に関して、以下の対応を進めることが重要になります。

「記載欄」への対応:

  • 早急に社内の体制を整備し、「記載欄」で求められる情報開示の準備を進める
  • 特に、「ガバナンス」と「リスク管理」については、全ての企業に開示が求められるため、対応を急ぐ
  • 「戦略」と「指標と目標」についても、重要性が高いと判断される場合には、積極的に開示を検討する
  • 開示内容については、SSBJの検討状況や「記述情報の開示の好事例集」などを参考に、充実を図る
  • 将来情報の記述に関しては、事後に状況が変化した場合における虚偽記載責任について、金融庁による更なる明確化を待つとともに、現時点で合理的と考えられる範囲で具体的な説明を行う

任意開示の促進:

  • 統合報告書やサステナビリティ報告書など、任意開示書類においても、積極的に情報開示を進める
  • 特に、気候変動対応に関しては、TCFDのフレームワークに沿った開示の質と量の充実を図る
  • 人的資本や多様性に関しても、戦略や方針、関連する指標の実績や目標などを積極的に開示する

英文開示:

  • グローバルな投資家との対話を促進するため、有価証券報告書の英文開示を積極的に検討する
  • まずは、利用ニーズの特に高い項目について、英文開示を行う
  • サステナビリティ情報についても、英文開示を検討する

5. まとめ

金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループの報告書は、サステナビリティ情報開示の重要性を改めて示すとともに、企業に対して具体的な対応を求めるものです。企業は、本報告書の内容を十分に理解し、適切な情報開示と投資家との対話を通じて、中長期的な企業価値向上につなげていくことが求められます。

cokiでは、今後もサステナビリティ情報開示に関する最新情報や企業の取り組み事例などを発信していきます。

参考資料

  • 金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ 報告 – 中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて – 令和4年6月13日
  • 企業内容等の開示に関する内閣府令
  • 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」
  • 記述情報の開示に関する原則
  • 記述情報の開示の好事例集
  • TCFDコンソーシアム
  • 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)
  • サステナビリティ基準委員会(SSBJ)

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