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弁護士法人 永 総合法律事務所

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東京都千代田区霞が関三丁目8番1号 虎の門三井ビルディング14階

03-3519-3880(代表)

契約書の書き方 弁護士法人永総合法律事務所

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法律事務所として中小企業等の法務対応をしている弁護士法人 永 総合法律事務所。今回は「契約書の書き方」について紹介します。

1 契約書の役割

 (1) 「契約」というものはビジネスの場のみならず私生活も含め日常生活のあらゆる場面で日常的に交わされています。その契約の交わし方については、日本の法律上は保証契約など特別なものを除き、口頭ベースの口約束でも当然に有効とされ、書面の形にすることは必ずしも必要ではありません。このことは民法第522条1項が「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対して相手方が承諾をしたときに成立する」とし、意思表示(口頭)のみで契約が成立することを明記しており、加えて、同条2項にて「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と定め、契約書など書面の形にすることはマストではないと断定していることからも明らかです。

 このように契約の締結は口頭ベースのみでもよく、その形式は問わないとされています。とはいうものの、口頭ベースの口約束では言った言わないの水掛け論になってしまうことは火を見るより明らかですから、主にビジネスの場においては、誰と誰がどのような内容についてどのような約束をしたのかについて、後日、客観的に確認できる形にしておくことが非常に重要となってきます。

 このような契約内容の食い違いといった後日のトラブルを避けるためにも取引関係は「契約書」など客観的な書面の形に残しておくことが望ましく、ビジネスの場では契約書を交わしていたかどうかでその後の企業の運命を左右しかねないといっても過言ではないケースも多々あるところです。

(2) このようにビジネスの場においては従前より「契約書」の形にすることがほとんどの業界にて慣習とされてきたものですが、市民生活のみならず企業活動にとっても最も関係の深い法律のひとつである「民法」がおよそ120年ぶりに大改正され、2020年4月1日より施行されるに至りました。この改正において、「債権法」など契約に関する最も基本的かつ重要なルールが変更されましたので、各企業においては、それまで使用してきた契約書の内容について改めて見直すことが迫られています。万が一、改正前の古い民法時代の契約書をそのまま使ってしまった場合、最悪の場合その契約自体が無効ということにもなりかねませんので十分に注意する必要があります。

 (3) 電子契約 契約書の形式について一般的に最も多いのはペーパーに記載された契約条項に各当事者が署名押印するという「書面」での契約書の形でしょう。
 しかし、最近では書面による形以外にも、電子データで作成される「電子契約書」での契約書も多く導入されており、クラウドサインやドキュサインなど多くのオンライン契約サービスが登場しています。
 オンラインでの電子契約サービスを用いることで、ペーパーでの契約書とは異なり以下のようなメリットが得られると言われています。

① 業務の効率化
電子契約を採用することで、ペーパー形式であれば1~2週間程度かかっていた契約締結までの時間が、遠方の当事者同士であってもデータの送受信により即日直ちに契約締結手続を完了させることができます。

② コスト削減
従来のペーパー形式の契約書において必要とされていた印紙代、郵送代、契約書保管費用といった費用について、電子契約の形であればこれらのコストを全てカットすることができます。
③ コンプライアンス強化
ペーパー形式の契約書に比べて、原本紛失や毀損・劣化のリスクが低いこと、後日の内容改ざんのリスクが低く、よりコンプライアンスが強化されていると言えます。

2 ひな形使用時の注意点

 売買契約や賃貸借契約など日常的な契約書の書式であれば、町の本屋に書式集が売っていたり、インターネット上で無料の契約書式などを簡単にダウンロードして入手することができます。

これらの書式は、作成者が弁護士など専門家なのか素人なのかにもよりますが、定型の契約書において盛り込むべき一般的な条項などをある程度幅広くカバーできるという点ではそれなりに便利ではあろうと思います。 

しかし、契約書は本来的に利害関係が対立する当事者同士の約束事を書面にまとめたものです。それゆえ、買主側にとっての有利な条項と売主側にとっての有利な条項とでは、それぞれその内容は大きく異なります。ところが、一般的な書式集のひな形は、売主・買主のどちら側の立場からも使える中立的な内容になっていることが多く、必ずしもその会社の立場にとって有利な内容になっているとは限らない点に注意する必要があります。

また、特殊な状況における契約書の場合などはそもそも一般的なひな形が存在しませんので、想定される利害状況をイメージしながらゼロから作っていかなければなりません。

3 契約書の構成

既に述べたとおり契約の締結は口頭ベースのみでも成立しますから、契約書の体裁については、書式その他形式については特に決められたものはありません。一定の体裁に沿ったものでなければ契約書の効力が無効になるということもありません。
とはいえ、契約実務の場では契約書の体裁については概ね以下のような構成になっていることが多いと言えます。

 (1) 表題
冒頭部分に契約書の内容を示すタイトルをつけることになります。「売買契約書」や「不動産賃貸借契約書」、「業務委託契約書」など、その契約が何を定めるものなのかを一言で表す表題をつけるのが分かりやすいでしょう。

 (2) 印紙
契約書が印紙税法上の課税文書となる場合は契約書の原本の数に応じて必要な印紙を契約書の左上など空いているスペースに貼付します。
ただ、適切な印紙が貼ってあるかは印紙税法上の問題にすぎません。仮に契約書に印紙を貼り忘れていたとしても、契約書としての成否はもちろん、契約の内容の有効性についても何の影響もありません。印紙を貼っていない契約書も法的には完全に有効なものとなります。

 (3) 前文
契約書の冒頭に、この契約書が誰と誰との間の契約で、何について合意したものなのか、その契約を締結する目的を数行で説明するのが一般的です。

(4) 契約条項
前文の後に、具体的な契約条項を第1条から定めていくことになります。この契約条項が契約書の最も重要な本体部分となるものです。
一般的な契約書に盛り込まれる契約条項については4にて後述するとおりです。

 (5) 後文
契約書原本の作成通数や、契約当事者のうちの誰が契約書の原本を保管するのかについて定めておきます。

 (6) 契約書作成日
契約書を締結した日付を記載します。通常は契約書に実際にサインした日にちを記載します。
よく契約書の作成日付が空欄のままとなっているものを見かけますが、一般的に契約上の権利義務は契約締結日以降に発生するものですから、契約上の義務の発生日特定のためにも契約書作成日は必ず記載するように心がけましょう。

 (7) 当事者の署名捺印または記名押印
契約書の最後に、前文に記載された契約当事者全員による署名(またはゴム版などによる記名)とハンコが押されることになります。代理人が本人に代わって署名押印することもありますが、その場合は当事者のうちの誰の代理人なのか、その立場を明記しておく必要があります。

契約書に押されるハンコは必ずしも実印である必要はなく三文判など認印でも問題はありません。そもそもハンコがなかったとしても契約成立の法的有効性に変わりはありません。ただ、実印を押す場合は後日契約書の成立の真正を証明するうえで非常に有効な判断材料となるため、不動産売買や銀行融資など重要な契約書の場合は三文判ではなく実印を用いるのが一般的です。

4 契約書に盛り込まれるべき契約条項

契約書にどのような条項を盛り込むべきかについては、売買や賃貸借などその取引の内容や個別事情によってケースバイケースです。とはいえ、ほとんどすべてのジャンルの契約書において共通で盛り込まれる一般的な条項がありますので、そのうちの主たるものを以下にてご紹介します。

ア 目的
その契約が何を目的とするものなのか、その達成目標を明記する条項です。
契約の目的の達成可能性の有無を判断する際の指標にもなるものですので、ある程度細かく説明しておく必要があります。
通常は契約書の第1条として記載するものです。

イ 定義
契約中において多く多用する語句について、複数の意味合いで受け取られることのないように具体的な定義づけをします。特にソフトウェア開発など専門用語の多いジャンルの契約書においては、独立した定義条項を設け一括して契約書中で用いる用語の定義をすることもあります。

ウ 契約期間
その契約の有効期間として開始日と終了日をそれぞれ定めるものです。賃貸借契約など長期間にわたる継続的契約の場合は契約期間満了後の自動更新条項を併せて規定しておくのが一般的です。

エ 解除
契約の一方当事者が契約のとおりに義務を履行しない場合など一定の解除事由が発生した場合に契約を一方的に解除できる条項を定めます。仮に解除条項がなかったとしても契約違反の場合は民法に従い当然に解除することができますが、より柔軟に取引内容に応じた解除事由を盛り込むことができますので解除条項を独立して設けるのが一般的です。

オ 中途解約条項
長期間にわたる継続的契約の場合は、契約期間内であっても一方当事者の意思表示により途中で契約を解消することができる条項を入れることがあります。この場合、中途解約を申し入れようとする当事者は一定期間前の申し入れや一定額の違約金の支払いなどの条件が課せられるのが一般的です。

カ 損害賠償
契約の一方当事者が契約履行中に相手方当事者に損害を負わせた場合における損害賠償の取扱いを定める条項です。仮に損害賠償条項を盛り込まなかったとしても民法上の債務不履行や不法行為に基づき当然に損害賠償請求することはできますが、損害の範囲や損害賠償額の予定額の設定など、より柔軟に取引内容に応じた条項を盛り込むことができますので損害賠償条項を独立して設けるのが一般的です。

キ 反社会的勢力排除条項
取引から暴力団などの反社会的勢力の関与を排除するための条項です。双方当事者が反社会的勢力ではないことの確認はもちろんこと、これに違反した場合の無条件解除や損害賠償責任などを併記するのが一般的です。

ク 不可抗力条項
天変地異や戦争など契約当事者双方の責任ではない不可抗力の事情により契約が履行できなくなった場合に備えて、契約を解除して取引からの撤退を認める条項です。

ケ 裁判管轄
契約の内容に関してトラブルが発生し、もはや当事者同士で話し合いにて解決することができなくなった場合、後は裁判所を通じた訴訟手続によって紛争解決を図ることになります。その場合において、どこの裁判所に訴訟を提起するのかをあらかじめ決めておく条項が裁判管轄条項です。

例えば、北海道の会社と沖縄の会社が訴訟をする場合、札幌地裁に提訴するのか那覇地裁に提訴するのかは、いちいち遠方の裁判所に出頭しなければならないという点で地味に重要な問題と言えます。

コ 誠実協議
契約内容の解釈などでトラブルとなった場合において、いきなり訴訟をするのではなくまずは当事者同士で誠実に話し合いをしましょうという条項です。この条項は契約当事者に具体的な義務を課すものではなく、法的効力という点では乏しいものではあります。ただ、法律だけに従って杓子定規に解決するのではなく当事者同士の信頼関係・協力関係を大切にしましょうという心構えをあえて明記して確認するという意味で、多くの契約書で慣習的に盛り込まれているものです。

なお、このような誠実協議条項は日本特有のものであり、海外の企業同士の契約ではほとんど見られません。

5 まとめ

以上のように、主にビジネスの場においては取引内容については口頭ベースではなく、書面による契約書の形できちんと残しておくことは無用なトラブルを防止するという観点からも非常に重要です。

特に古くからの馴染みの取引先で長年にわたって同種の取り引きを続けてきたようなケースや、建築業界やエンターテインメント業界など、電話での口頭ベースのやり取りのみで済ませる慣習が根強い業界などにおいては、わざわざ契約書などを作成せずに口頭のみで済ませてしまいがちです。

しかし、いざトラブルとなった場合には取引の内容を定めた契約書がなければ、どちらが契約に違反しているのか、そもそもどのような義務を契約上負っているのかなどを判断することは極めて困難になってしまいます。そのような場合、下請け業者など取引上弱い立場の方が泣き寝入りせざるを得ないことにもなりかねません。

万が一のトラブルに備えて取引をスタートさせる当初からきちんと契約書を作成しておくことは非常に大切です。もし取引の途中段階で契約書を作っていないことが発覚したとしてもその時点で改めて取引内容を相互に確認して契約書を作成することでも十分間に合います。

既に述べたとおり、具体的な契約書の作成については、取引の内容や契約上の立場など個別の事情に応じてケースバイケースですので、細かな契約条項の内容をどのような内容にするのかについては早めに弁護士など専門家に相談することをお勧めします。

◎ 執筆者プロフィール

永滋康_prof

永 滋康(えい しげやす)
慶應義塾大学法学部法律学科 卒業。中小企業法務、不動産取引法務、寺社法務を専門とする弁護士法人永総合法律事務所の代表弁護士。日本弁護士連合会代議員。第二東京弁護士会常議員。文部科学省再就職コンプライアンスチームメンバー。東京家庭裁判所 家事調停委員。

弁護士法人 永 総合法律事務所HP:https://ei-law.jp/
寺社リーガルディフェンス:https://ei-jishalaw.com/ 

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