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エンゲージメントを高める最大の近道とは?

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写真ACより

近年、従業員エンゲージメントに力を入れる企業が日本でも増えてきています。

エンゲージメントを高めるには、組織・人、の両側面からアプローチする必要がありますが、筆者が住むアメリカでは、「パーパス」と「コミュニケーション」がエンゲージメントを高めるための要素として重要視されています。

パーパスを絵に描いた餅で終わらせず、個人と企業のパーパスをつなげるにはどのようなコミュニケーション戦略を取ったらよいのでしょうか。

ニューヨークで約30年間にわたり、戦略コンサルタント、そして異文化コミュニケーションのスペシャリストとして、あらゆるグローバル企業に、コミュニケーションやファシリテーションの企業研修を提供してきた筆者が、良く語られる人事制度の側面から一段視座を高めた切り口でお話しします。

エンゲージメントを高める2つの要素

そもそもエンゲージメントとは何か、と問われたら、皆さんはどのように説明するでしょうか。

エンゲージメントとは、一言でいうと「愛社精神」、つまり、会社への思い入れや愛着、といった、従業員の自発的な意欲のことを指します。

英語でEngagementというと、「契約」、「約束」、という意味合いがありますから、従業員と企業間における双方向の強い結びつきを指す言葉です。

エンゲージメントが高い従業員は、モチベーションや自社への帰属意識が高い傾向にあることから、従業員エンゲージメントの向上に力を入れる企業が近年増えてきているのです。

法政大学大学院政策創造研究科、石山 恒貴教授によると、愛社精神とは、以下の3点が揃っている状態で得られるもの、と定義しています:

  • ワーク・エンゲージメント:仕事に対する熱意がありモチベーションが高い状態
  • 組織コミットメント:企業への満足度が高く愛着を持っている状態
  • 職務への満足感:仕事内容そのものや職務環境に満足している状態


つまり、仕事に熱意を持てて、組織にコミットできて、職務に満足できてはじめて、エンゲージメントが高い状態を保てるということです。

これを実現するため、日本では、キャリアプランや評価・報酬、研修など、人事制度の側面から取り組みが行われるケースが多いですが、アメリカの企業では、エンゲージメントを高めるための要素として重要視されている二つの要素があります。

それは、「パーパス」と「コミュニケーション」。
企業の存在意義や、志、と訳されることが多い「パーパス(Purpose)」。

人を動かすためには、企業が提供する商品やサービスの機能的価値ではなく、ブランド、そしてその企業の在り方に対する「共感」が必要。

だからこそ企業は、自分たちが社会にどういう価値を提供するのか、存在意義から考え直す必要がある、という考え方です。

SDGsが世界的な潮流になり、ESG経営の重要性が加速する中、企業がどう社会に貢献していくのか、が改めて問われていることも背景にあるかもしれません。

会社のパーパスが可視化されており、それがしっかりと社内全体にコミュニケートされ、それに沿ったマネジメントがされていれば、従業員も納得感をもって貢献することができます。

その結果、従業員エンゲージメントも向上し、優秀な人材が定着する効果も得られるのです。

もはや事業戦略の一環ともいえる「パーパス」ですが、ともすると抽象的、机上の空論、哲学的にもなり得てしまいます。

必要なのは、社員ひとりひとりが「企業のパーパス」と「自身のパーパス」のつながりを見出し、「企業のパーパス」を自分事化することです。

社員に対して、ただ自社のパーパスを説明するだけでは限界があります。企業のパーパスは、社員ひとりひとりにとっても大切なもの、共感できるものであるべきです。

そのためには、まず個人の価値観を明確にし、「企業のパーパス」と「個人のパーパス」の重なるところやつながりを見出し、そのつながりを可視化するストーリーを企業のリーダーたちが継続的に語っていくことで、従業員も「企業のパーパス」に共感し、自分事化することができるようになるのです。

ではどのようなプロセスを経れば、真の共感を得られる「パーパス」を「コミュニケート」していくことができるのでしょうか。

パーパス、ミッション、バリュー、ビジョン、〇〇Way…どう違う?

多くの企業には、ミッションステートメントや、ビジョンステートメントがあります。バリューや、〇〇Way(トヨタ・ウェイ、花王ウェイ、など)と呼ばれるものを明記している企業もあります。

パーパスと混同されやすく、ミッション、バリュー、ビジョン、〇〇Way…それぞれ複雑に絡み合っていて、ともすると、体裁はいいがよりどりみどり取り揃えて、表面的に言葉で作っただけ、となってしまう危険性もあります。

そこでまず、それぞれ、どのような役割を果たすものなのか、解説しましょう。

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(画像提供:ブレイクスルー・スピーキング)

ミッションとは

ミッションには、「目的、使命、役割」などの意味があり、企業として自分たちは社会でどんな存在であれ、誰に価値を提供し、何をしていくのか、を明確にするものです。

企業活動の中の、WHOとWHAT、ともいえるでしょう。例えば、「世の中にないものを常に生み出す」、などがミッションとして掲げられるでしょう。

企業理念を掲げる際、通常、ミッションからスタートし、ビジョン、バリュー、この3つが基本の構成要素となります。

バリューとは

バリューとは、企業組織として共通して持つ価値観のことです。私は、WHAT we adhere to、と表現しています。

企業に属するメンバーが、ミッションを共有し、ビジョンに向かっていくためには、「自社の価値基準」が明確であることが求められます。

企業として顧客に与える価値、サービスとは何なのかを考え、行動の基準とする考え方です。
例えば、「多様性を生かして創造力を最大化する」などがバリューとして掲げられるかもしれません。

個々人の価値観と企業の価値観の方向性に、共通項を見出していくことが重要です。

ビジョンとは

ビジョンは、実現したい理想の姿です。企業活動を通して、将来どこに向かっていきたいのか、WHEREの部分です。

経営目標や事業目標とも言われることがあり、時間軸を入れて策定し、時代に合わせて変化していくものです。例えば、「10年以内に〇〇業界世界最大規模のベンダーになる」などです。

〇〇Wayとは

最も有名なのは、「トヨタ・ウェイ」、ではないでしょうか。「○○流」、「○○方式」、「○○イズム」とも表現されることがあり、トヨタもまさに、「トヨタイズム」という言葉を使っています。

WAYは、その企業の生い立ちや創業理念、過去の成功体験&失敗体験等がベースとなって形成されることが多く、一言でいうならば、「企業らしさ」のことです。

WAYは明文化されていないケースも多いですが、行動規範として明文化されている場合、その企業で働くメンバーたちの間で意識的に共有され、自発的に行動を起こす、あるいは判断を行なう際の基準(規範)となります。そのためWAYは、人・モノ・カネ・情報に続く第5の経営資源と呼ばれることもあります。

パーパスとは

一方、パーパスとは、この組織は何のために存在しているか、という問いに答えるもので、存在意義や社会的意義も含まれているものです。

これはミッション、バリュー、ビジョン、すべての根底にあるもので、いわば、北極星のように、すべての行動の指針となるものです。ミッションとも非常に近い印象を受けるかもしれません。

パーパスとミッションの大きな違いは、パーパスは「社会的な」存在意義、つまり、社会に対してどう貢献しているのか、という視点が加わった、ミッションよりひとつ高い視座に立っている、と言う点です。

企業によっては、パーパスとミッションを同義語として扱っているところもあるかもしれませんが、厳密には、パーパスの方が視座が高い「存在意義」と言えるでしょう。

パーパスを構築する3つのステップ

Step 1: Identify ~発見する~
パーパスは、「何のために自社が存在しているのか」という存在意義を見出すものですので、根源に立ち帰る作業が最初に必要になります。

これまでも、ミッションやビジョン、バリュー、というような形で、企業の価値観を言語化してきていることと思います。

パーパスを構築するためにはまず、これらの言語化してきた企業の価値観を、すべて洗い出してみましょう。

その際、ポストイットを使いながら、1枚につき1アイデアを記載し、壁に張りだしていくと、後で整理をしやすくなります。

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(画像提供:ブレイクスルー・スピーキング)

アイデアが出つくされた、と言う段階になったら、今度はポストイットを見ながらチームで討議し、似たようなアイデアをカテゴリーごとにグルーピングしていきましょう。

各グループにはタイトルをつけていきます。

そして各タイトルを照らし合わせながら、最も大切な、根源を表現できるコンセプトはどう言語化できるのか、更に討議し、視座の高いメッセージとして引き上げていきます。

これを、ブレイクスルー・スピーキングでは、One BIG Message®と呼んでいます。

Step 2: Internalize ~自分事にする~
One BIG Message®としてパーパスを言語化できたら、今度は自社内はもちろんのこと、社外のステークホルダーたちも含め、一人一人が「自分事」として捉えることが出来るよう、パーパスの世界観を体験できる機会を作ることです。

そのためには、まず、ステークホルダーたちが自分自身の「個人のパーパス」を考える機会が必要です。

その上で、各々の「個人のパーパス」と、「企業のパーパス」の共通項を探していくのです。そうすることで、個人のパーパスと企業のパーパスが共鳴しあいます。

特に、リモートワークや働き方の多様性が広がっている今日においては、ステイクホルダー一人一人が孤立してしまうリスクも高まっています。

だからこそ、個人のパーパスと企業のパーパスをすり合わせ、同じ方向を向いて業務に取り組んでいけるよう、「パーパス」を共通基盤として設置することが大切なのです。

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(画像提供:ブレイクスルー・スピーキング)

Step 3: Externalize~伝え、外面化する~
自分事化がある程度進んだ段階で、更にこのパーパスが事業活動のあらゆる側面で変革とイノベーションを起こすよう、パーパスと事業領域を照らし合わせながら、事業活動に落とし込んでいきます。

例えば、自社がもつ各事業領域、商品・サービス領域などはもちろんのこと、人事採用・育成、組織づくりや経営リーダーシップ、システム構築、業務プロセス、などにおいてです。

企業のすべての活動は、パーパスを基点として行われるよう、設計していくことで、マインドセットに変化が訪れ、イノベーションが生まれていきます。

もちろん、マインド変革を起こすということは、一朝一夜ではできませんし、綿密な戦略プランの設計が必要になります。その中で、最もマインド変革の近道にあるのは、「ストーリー」なのです。

パーパスに質感を持たせ、社内外に伝えていくには?

パーパスこそストーリーが効果的

パーパスが文字として示されているだけでは、組織変革やイノベーションにはつながっていきません。

経営層やチームリーダーなどのミドル層自らが、それぞれの立場に置き換えて、自分のことばでパーパスをストーリーとして語っていくことが必要なのです。社内のみならず、社外でも同様です。

アリババ創始者のジャック・マーがビジネスを成長させたのも、ほかならぬストーリー能力でした。
ソフトバンクの孫正義氏が、中国のビジネスプレゼンのイベントに来ていた時のことです。

ジャック・マー以外の人たちは、ビジネスプランや戦略を発表した中で、彼だけは、なぜこの世界にアリババが必要なのか、どんな未来を作りたいのか、どんな存在であるのか、ビジョン、そして、パーパスをストーリーとして語りました。

それに孫正義氏は感銘を受け、20億円をアリババに投資した、と言います。

ジャック・マーが語って見せたのは、ビジネスプランや戦略ではなく、「未来予想図」(ビジョン)であり、「世界における存在意義」(パーパス)です。

なぜ存在するのか、どんな未来を作り、どう世界に貢献したいのか。

それをストーリーとして語るからこそ、このリーダーを信じたい、投資したい、この会社とビジネスを共にしたい、と思わせる力があるのです。

パーパスを具現化して見せることで、従業員の愛社精神、つまり、エンゲージメントにも繋がっていくのです。

パーパスを具現化し、質感を以って見せ、エンゲージメントを高める。その最大の近道が、ストーリーなのです。

*ビジネス戦略としてのストーリーを更に学びたい方は、「ストーリーに落とし込め~世界のエリートは”自分のことば”で人を動かす」(フォレスト出版)がおすすめです。

◎会社概要
会社名:ブレイクスルー・スピーキング
URL:http://www.btspeaking.com
代表者:リップシャッツ信元夏代
設立:2004
事業内容:
ブレイクスルー・スピーキングは、言葉や文化、価値観の壁を打ちやぶり、人々の心をも魅了していく、グローバル・パブリックスピーキングの総合コンシェルジュです。アメリカ・ニューヨークを拠点に、世界に羽ばたく全ての日本人リーダーが更にグローバル舞台でのプレゼンスを高めていくことができるよう、以下のサービスをご提供しています:
・企業研修
・個人コーチング(一般向けコーチング、及び経営トップ向けプレミアムコーチング)
・ウェビナー
・Eラーニング
・スピーチ総合メディア,「20字で相手を動かせ 信元夏代のスピーチ術」運営https://natsuyo-speech.media/

◎執筆者プロフィール
信元夏代メインヘッドショット
リップシャッツ信元夏代(のぶもと なつよ)Natsuyo N. Lipschutz
ニューヨークを拠点とする事業戦略コンサルタント、プロフェッショナルスピーカー、グローバルプレゼンコーチ。
早稲田大学商学部を卒業後ニューヨークに渡り、伊藤忠インターナショナルの鉄鋼、紙パルプを経てニューヨーク大学でMBA取得。マッキンゼーでコンサルティングの経験を積み、起業。国際スピーチコンテストではニューヨークの強豪を勝ち抜いて地区大会5連覇、TEDxTalkへの登壇などを経てプロスピーカーに。全米で異文化コミュニケーションの基調講演登壇をしている。2021年6月には全米プロスピーカー協会ニューヨーク支部初のアジア人理事に就任。
戦略コンサルならではの分析力と現役プロスピーカーならではの実践力で、企業トップから起業家まで、文化や言葉の壁を越えて相手を動かすプレゼンを指導している。

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