あなたの職場に発達障害をもった社員がいたら、うまくサポートできるでしょうか?改正障害者雇用促進法により、事業主には「合理的配慮」の義務が定められています。
また、民間企業の障害者の法定雇用率は2.3%です。従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。身体・知的・精神障害のうち、発達障害は精神障害に含まれます。
正しい知識を身につけて、いざというときに対応できるようにしておきましょう。
1.大人の発達障害とは?
大人の発達障害は主に「自閉スペクトラム症」「注意欠如・多動症」「限局性学習症」の3種類があります。他に、トゥレット症候群、発達性協調運動障害などがあります。
ここでは、「自閉スペクトラム症」「注意欠如・多動症」「限局性学習症」の特性について詳しくご説明します。発達障害は、いくつかのものが併発する場合があります。
(1)注意欠如・多動症の特性と日々の仕事で起こりうる問題
次の3つの症状を特徴とする障害のこと。中枢神経系の機能障害と言われています。
1 不注意
- 注意が持続しない。反面興味のあることには異常に集中します。
- 気が散りやすい。
- 仕事中でも外での物音などに関心が向いてしまう。
- うっかりミスが多い。
- 忘れ物が多い。書類などを紛失してしまう。
- 整理整頓が苦手で机が散らかっている。
- 話していること を聞いていないように見える
2 多動性
- じっとしていられないため、そわそわと動いてしまいます。
- 仕事中にウロウロする。
- 会議中にそわそわと手足を動かす。
- 商談中にも キョロキョロ、もじもじ落ち着きがない。
- 過度にしゃべる。
3 衝動性
- 出し抜けに話し出したり、手順が守れないなどの特徴があります。
- 仕事の手順が守れない。手順をふまずに唐突に始めてしまう。
- 話をよく聞かずに話し始める。
- 順番を待てずに割り込む。
- 話の途中に相手をさえぎったりする。
(2)自閉スぺクトラム症
知的発達に遅れはないものの次のような3 つの症状があらわれます。
1 人とのかかわりが乏しく、社会的関係形成の困難さをもっています。
- 目と目で見つめあえない。
- 身振り手振りなどの非言語での表現が苦手。
- 同僚とチームを組んで仕事するよりも、一人での仕事を好む。
- 同僚との協力関係を構築できない。
- 相手の気持ちを考えない発言をしてしまう。
2 言葉 の理解の問題。
- 会話の仕方が形式的で、抑揚なくしゃべる。
- 含みのある言葉の本当の意味をとらえられず、表面的な意味として
- とらえてしまう。比喩や暗黙の了解事項が理解できない。
- 会話が一方的になったり、続かなかったりする。
3 興味や関心が狭く、特定のものにこだわる。
- 興味のあるものだけにこだわる。
- 特定の習慣や自分の手順にこだわる。
- 変更や変化を嫌う。
- 自分の空想の世界があり、現実との切り替えが下手。
(3)限局性学習症
知的発達におくれはなく、「聞く」「読む」「話す」「計算する」「推論する」のうち特定の分野に著しい困難がある場合があります。
1 「読む」が困難な場合
- 似たような形の文字を混同する。「さ」「ち」、「い」「り」、「石」「右」
- 読み違いが多い など
2 「聞く」が困難な場合
- 指示を聞き漏らす
- 伝言の聞き間違いが多い
3 「計算する」が困難な場合
- 簡単な計算が暗算できない
- 計算ミスが多い
2.発達障害と診断された社員への対応法やポイント
発達障害が原因で起こる問題は、本人の努力ややる気で解決できる問題ではありません。また、改正障害者雇用促進法により、事業主は本人の希望があれば「合理的配慮」をすることを義務付けています。
「合理的配慮」とは、障害のある人から職場でのやりづらさを取り除くために対応が必要との意思が伝えられたときに、事業者の負担が重すぎない範囲で必要かつ合理的な対応を行うことです。
そのため周りの人が特性を理解して対応できるようにしておくことが大切です。対応する場合のポイントを4つあげます。
(1) 二次障害としてのメンタルヘルス不調の防止
発達障害を抱える人が職場で孤立したり、叱責を繰り返し受けたりすることでうつ病などを発症することを「二次障害」と呼びます。
発達障害そのものではなくて、あらたにメンタルに不調を抱えることになるのです。
これは決して珍しいことではなく、うつ病と診断されてから、後に発達障害が原因であったとわかることも多くあります。
(2) 特性に応じた部署、職種に配置
苦手な仕事を避けて、発達障害を持つ人が能力を発揮できる部署や職種に配置することが、職場全体の生産性の向上にも役立ちます。
障害を抱える本人だけでなく、上司や同僚にとってもいい結果となります。
(3) 管理職や同僚への教育研修
発達障害の知識がないばかりに、上司からパワーハラスメント被害を受けている人は少なくありません。
管理職に発達障害の知識がないとやる気がない、何度注意しても改善しない、自分勝手などと誤解を受け、ハラスメントに発展する可能性があります。
発達障害をもつ人を受け入れる際には、事前に研修することをお勧めします。
(4) 発達障害をもつ人と向き合う姿勢
発達障害の特性は多様です。「合理的配慮」をするには、まず本人がどんなことにこまっていて、どんな配慮を必要としているかを知らなければなりません。
わがままと決めつけることなく、向き合う姿勢が必要です。
3.改善した対応例
対応が功を奏して、職場でのトラブルが改善した事例をご紹介します。
事例1
ある職場で、電話の取次ぎ時に相手の用件や折り返し連絡するための電話番号の聞き間違えの多い社員がいました。
本人も周囲のスタッフも困惑していましたが、専門医を受診した結果、「聞く」が苦手な「限局性学習症」と診断されました。
その後、電話対応の少ない部署に異動し、聞き間違いなどのトラブルがなくなりました。
事例2
「注意欠如・多動症」と診断されたスタッフの配属先はワンフロアに100名近くが働く環境でした。
人の動きや会話に気を取られ、注意力が維持できないことが原因で仕事のミスが大変多く、本人から職場環境を変える「合理的配慮」の申し出がありました。
5名ほどの少人数の部署への配置転換がなされました。部屋も小さく仕切られており、他部署の音、会話などが聞こえない環境であり、ミスが激減しました。
事例3
「自閉スペクトラム症」のスタッフは、先輩からの指導を受けてもなかなか仕事をおぼえられず、連日、「ちゃんとしてください!」と叱責を繰り返し受けていました。
体調を崩しがちになったため、会社から当研究所にどのように改善したらよいかの相談がありました。
「自閉スペクトラム症」の人には「ちゃんと」というようなあいまいな指示は理解しづらいため、具体的な作業と納期を伝えるように助言しました。
その後、障害をもつ本人からも支持の内容がわからないときは質問できるようになりました。
4.まとめ
障害者の法定雇用率が引き上げられ、また、「精神障害者」として発達障害をもつ人が障害者雇用数として算参入されるようになったため、あらゆる職場で発達障害をもつ人ともたない人が一緒に働くようになりました。
その一方で特性を知らない管理職や同僚とのトラブルが増えている現状があります。誰もが生き生きと働ける職場づくりのためにも、発達障害についての基本的な知識の普及は必須です。
発達障害をもつ人を雇用する場合には、受け入れる側があらかじめ研修などで特性を理解しておくことで、無用なトラブルは避けられます。
またトラブルが起こった際には、こじれる前に発達障害に詳しい専門家に相談されることをお勧めします。
◎プロフィール
芙和せら(ふわ せら)
公認心理師、シニア産業カウンセラー、芸術療法士
心理職として長年、発達障害者に寄り添い、同時に雇用する企業等への情報提供、研修などを実施してきました。自社でも発達障害、精神疾患をもつ人材を採用し、多様な働き方を支援してきました。経験と実績に裏付けされたノウハウ提供には高評価をいただいています。
◎会社概要
社名:一般社団法人<芙和せら>心理研究所
住所:東京本部 東京都中央区日本橋2-1-17 丹生ビル2階
メール: theralabo@gmail.com
電話:03-4221-4068
HP:https://www.thera-labo.org/
個人、企業、学校のメンタル問題を支援します!発達障害者雇用のアドバイザー!
一般社団法人<芙和せら>心理研究所では、心理カウンセリングを誰もが気軽に受けられる社会にするための取り組みをしています。
個人の方の心理カウンセリングの他、企業、学校へのカウンセラー派遣、SNSカウンセリングを行っています。
メンタルヘルスに関する企業研修、コンサルティングも手掛けています。
全国に登録カウンセラーが在籍しているため、全国対応可能です。
発達障害に関する取り組み
不適応を起こす原因のひとつに発達障害があります。発達障害と診断を受けた際に、どうすればわからない人は多いものです。
また、発達障碍の人を雇用する企業等には知識やノウハウが十分ではありません。
対応策としては様々な場合が想起されますが、代表的な例としては以下が挙げられます。
1) 企業等で発達障碍者を雇用する場合
・基本的な知識の提供。トラブル時のアドバイス。受け入れ時の研修を実施。
2) 大人の発達障害の診断を受けた場合
・基本的な知識の提要と働き方や生活についてのアドバイス。SSTの実施。
3) 子どもの発達障害の診断を受けた場合
・保護者への知識提供、お子様の発達支援・SSTの実施。
4) 発達障害かもしれないと悩んでいる場合
・基本的な知識や診断方法のアドバイス