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株式会社足利技研

https://ashigi.co.jp/

栃木県足利市野田町1308番地

0284-43-8741

「みんなが社長をさせてくれている」。創業80年の産業ロボット老舗・足利技研が築いた、聞く文化と継承の経営

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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株式会社足利技研 大野社長
株式会社足利技研 大野 和俊 社長(提供:株式会社足利技研、以下同)

「社長と思っていない。組織に必要だから誰かが立っているだけ」。

そう語るのは、創業80年を迎えた株式会社足利技研の代表取締役・大野和俊氏だ。栃木県足利市から産業用ロボットを使った自動化設備をオーダーメイドで提供する同社は、設計から製作、納品後のアフターフォローまで一貫して担う企業として、製造業の自動化を裏側から支えてきた。

30年余りを現場で過ごし、2020年に5代目として代表に就任した彼が選んだのは、「引っ張る」のではなく「聞く」経営。その背景にある思いについて、話を伺った。

 

栃木県足利市から、製造業の自動化を支える80年の老舗

製造業の現場には、人の手では追いつかない作業が無数にある。重い素材を機械に取り替える、同じ工程を一日中繰り返す、危険な箇所で部品を扱う。そうした作業を産業用ロボットに置き換える形で、工場の自動化を実現してきた企業がある。栃木県足利市に本社を構える株式会社足利技研だ。

同社は、産業用ロボットを軸とした工場用の自動化設備を、すべてオーダーメイドで設計・製作している。顧客の現場に足を運び、悩みや課題を直接聞き取ったうえで、ファナックや安川電機といった国内メーカーのロボットを軸に、周辺機器を組み合わせて1つのシステムへと仕上げる。受注から納品までの期間は、短ければ4〜5ヶ月、規模が大きければ1年に及ぶ。

最大の特長は、設計から製作、据付、納品先での指導、そして納品後のアフターフォローまでを一貫して担う「ワンストップ」の体制にある。内製比率は約80%。機械の設計、制御設計、ロボットのプログラミング設計までを自社で完結できる企業は、決して多くない。

足利技研 作業の様子

納入先は、これまで自動車業界が中心だった。1台あたりおよそ5万点の部品が組み上げられる自動車産業は、加工・組立・溶接の現場でロボット化のニーズが高い。SUBARU、日産、HONDA、三洋電機(現Panasonic)、日立など、北関東一帯のものづくり企業の生産現場を、同社は長年支えてきた。現在の受注比率はおおむね自動車4割、その他が6割。建築、食品、包装関連など、業種を超えた広がりも生まれている。

足利技研の歴史は、戦後日本の製造業の歩みとほぼ重なる。1945年、創業者が工場で使われるモーターの修理を生業として「桑子電機商会」を設立。1975年、大野氏の先々代が自動制御盤の設計・製作にまで領域を広げたタイミングで社名を「足利技研」に改め、自社の自動化・省人化のために産業ロボットの開発へと舵を切った。創業から80年。同社は栃木の地で、製造業の自動化を裏側から支え続けている。

 

「組み合わせの技術」と、40年伴走する責任

産業用ロボット自体は、ファナックや安川電機といったメーカーから仕入れる。足利技研の仕事は、それを顧客の業務に合わせてカスタマイズし、周辺装置と組み合わせて1つのシステムに仕上げることにある。大野氏はその発想を、こう表現する。

株式会社足利技研 大野社長

大野氏
「私が勝手に言っているのですが、うちは『組み合わせの技術』を持っているんです。1から設計するわけでも、開発するわけでもない。世の中にはいい商品がいっぱいあるので、それぞれを融合させて新しいものを作っているというイメージです」

近年は、3Dカメラを使った「ばら積みピッキング」など、新しい技術が現場に取り込まれている。これまで人が目で見て掴んでいたバラ積みの部品を、ロボットが画像認識で識別して取り出す技術だ。AIを組み込んだ画像検査も一つの武器として現場で活用されている。新しい技術が出てくれば、まずは知識として取り込み、顧客の悩みを聞いたときに「これとこれを組み合わせるとできますよ」と提案できる引き出しにしておく。それが足利技研のスタイルだ。

そしてもう一つ、同社が80年事業を続けてこられた背景に、納品して終わりにしない長期伴走の姿勢がある。工場に一度納めたシステムは、20~40年と使い続けられるという。

「使い続けてもらうためには、故障したときに対応できるよう、こちらもずっと続けていかなくてはなりません。『あの会社に頼めばいつまでも直してくれる』というのが一つの信用になっています。だからこそ、会社も残り続けなくてはならないのです」

「足利に電話すれば大丈夫」。顧客のあいだに広がるその安心感が、80年積み上がった信用の証となっている。

 

30年余の現場叩き上げが導いた、社長の経営観

大野氏が現在の足利技研で歩んできたキャリアは、まさに現場の叩き上げそのものだ。

1968年、織物の町・足利市に生まれた大野氏は、子どもの頃から引っ込み思案で、一人で過ごすことが多かったという。好きだったのは、機械いじりやブロックで物を組み立てる作業。学校では算数や数学を得意とした。理由を尋ねると、こう答える。

「答えが1つしかないような、国語みたいに答えがいくつもあって正解がないものより、正解がある方が好きだったんです」

中学・高校の頃にはすでに、人と関わる機会が比較的少ない仕事として工場勤務を志していた。1986年、工業高校を卒業して地元のプリント配線板メーカーに就職する。そこで初めて「治具(部品を固定するための補助具で、生産性を上げるためのもの)」と出会い、ものづくりの面白さに触れる。しかし入社からわずか3ヶ月、4月に入社して、7月に倒産。治具を作る会社を求めて出会ったのが、現在の足利技研だった。

入社後の数年間は、鉄板の加工や塗装、溶接など、現場でやれることなら何でもこなした。やがて産業ロボットが導入されると、制御設計を担当する。

「最初に作った機械は今でも覚えています。シーケンサという装置のプログラムを全部一から作って、本当に難しくて、普通の4、5倍くらい時間がかかりました」

それでも会社は、その時間を許容したという。10年余り、ロボットのプログラミングと並行して経験を積み、その後は見積もり業務も任された。そんな矢先の2008年、実質的な創業者で会社の信用を一身に背負っていた人物が56歳で急逝する。大野氏が40歳の時だった。

「いつかその日が来るかもしれない」。心の準備をしながら歩み、2019年9月に株式譲渡の話がまとまる。2020年、大野氏は正式に代表取締役に就任した。

足利技研 設備
 

「みんなが社長をさせてくれている」。離職率ゼロを生んだ聞く文化

「私、社長になっていますけど、別に社長とは思っていないんですよね、自分自身は」

大野氏は自身の立場をそう表現する。組織として誰かが立たないといけないから立っているだけ。社員一人ひとりのレベルが高く、「別にいなくてもうちの会社は回るはずです」とも言う。引っ張るのではなく、必要だから立つ。彼の経営観は、その独特の距離感から始まっている。

その大野氏が、代表に就任してから最も大切にしているのが「聞く姿勢」だ。背景には、自身が社員として働いていた頃の苦い記憶がある。

「一時期、人が辞めたり離れていったりした時がありました。話が通っていない、しっかり聞いてくれない、という愚痴を聞くことも多くて。そうするとだんだん離れていってしまうんです」

その経験から、大野氏は「いつでも聞く」という姿勢を絶やさないようにしている。事務所と工場を行き来し、「今どうなの」と日常的に声をかける。「相談したいことがある」と社員から切り出された時は、後ではなく、その場で時間を空ける。社員が切羽詰まって相談に来る時は、すでに深刻な状況になっていることを、自分自身が部下時代に経験しているからだ。

その姿勢の効果は数字に表れている。大野氏が2020年に代表に就任してから、ネガティブな理由での離職はゼロ。

組織文化を支えるのは、聞く姿勢だけではない。「新しい商品が出てきたら使ってみたい」と社員が言えば、会社はそれを許容する。

「我々が一から新しいものを作れるわけじゃないので、新しい商品をいかに活用できるかが大事です。だからチャレンジしたいということがあれば、できる限りやらせてあげる環境を作りたいと思っています」

チャレンジを受け止める空気が、80年積み重ねた技術の蓄積を、次の現場へとつなげている。

足利技研 外観
 

AI時代に、80年の知見を次代へ

同社を取り巻く環境は、いま大きく変わろうとしている。生成AIや、人が言葉で命令するとロボットが動きを作ってくれる「フィジカルAI」の登場だ。大野氏はその波を、自分たちの仕事の延長線上に重ねて見ている。
「人が言葉で命令して、それを勝手に理解して動きを作ってくれる。それって、我々がやっていることなんですよね」と。
顧客が言語化しきれない要望を聞き取り、専用のシステムに仕立て上げる。それが足利技研の生業である。フィジカルAIはその領域に深く入り込んでくる可能性がある。「親和性が高い、もしくは競合」。大野氏はその二面性を冷静に見据えている。

それを脅威として遠ざけるのではなく、武器として取り込もうとしているのが大野氏の姿勢だ。すでにAIを組み込んだ画像検査は、人の目に近い判断を可能にする一つの武器として現場に取り込まれている。同時に、80年で培ってきた経験を生かし、新たな業態への展開も視野に入れているという。

「フィジカルAIが普及しても、全員が使いこなせるわけではないと思うんです。使い方を教える、最初の一歩を作ってあげる。経験値を活かしたコンサルタント的な仕事も、これから増えていくのではないかと思っています」

同氏は人材の継承にも目を向けている。高等専門学校や工業高校での出張授業、工場見学の受け入れは、業界に興味を持つ若者を呼び込むための取り組みだ。最先端の機械や、実際に世に出る製品を作る機械を見てもらうことで、業界の魅力と現場の手触りを伝えていきたいという。

大切にしているのは、規模の拡大ではない。「大きくしすぎず、コツコツと、手の届く範囲で」を、継承時からのテーマに掲げる。足利技研が扱う産業ロボットの仕事は、現場ごとの細かい作業と繊細な気遣いが欠かせない。拡大に振り切れば、5代にわたって守ってきた信頼と技術が損なわれかねないからだ。

「代表する立場として伝えたいのは、当社はチャレンジをしていく会社だということ。そこ抜きに足利技研はありません」

ロボットによる省人化がさらに進む先には、「人間にしかできない仕事を作るためにロボットを作る」という新たな問いが生まれてくると大野氏は見ている。

引っ張らない経営者が率いる、創業80年の老舗。聞く文化と組み合わせの技術を礎に、足利技研は次の80年に向けた歩みを、社員一人ひとりとともに進めている。

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、エンタメ関係が多め。

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