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第2回 金利とインフレの存在しない新・資本主義社会 資本循環力の真実 日本経済成長力の未来展望(全3回)

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日本銀行
PhotoACより
PhotoTadaoOnaka200303

大中忠夫(おおなか・ただお)
株式会社グローバル・マネジメント・ネットワークス代表取締役 (2004~)
CoachSource LLP Executive Coach (2004~)
三菱商事株式会社 (1975-91)、GE メディカルシステムズ (1991-94)、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタントLLPディレクター (1994-2001)、ヒューイットアソシエイツLLP日本法人代表取締役 (2001-03)、名古屋商科大学大学院教授 (2009-21)
最新著書:「日本株式会社 新生記」全13巻 (2024.05)、「日本株式会社 人的資本総覧」(2025.02)「日本株式会社 未来設計図」(2025.07)

日本社会の「失われた30年」は、実は人類史上で全く新しい資本主義力、金利にもインフレにも依存しない、資本循環力による経済成長力、を実現した新たな人類史の始まりではないか?この事実を統計データで検証します。

1.「失われた30年」の真実:全く新たな資本主義社会の出現

 日本では世界に先駆けて、1995年に日銀標準金利ゼロが出現し、その後2026年5月現在まで、ほぼゼロ近傍金利の時代が続いています。この30年間は、物価と賃金の大きな上昇や変動もなく、さらには一般に景気指標とされている株価の大幅上昇もなかったことから、「失われた30年」とも呼ばれています。

 しかし、この30年で、金利がほぼゼロであった事実以外には、何が失われたのかは具体的には示されてはいません。敢えて推定すれば、いわゆる戦後ベビーブーマー時代が体験した人間史でも画期的な高度経済成長の1960-80年代の過剰ともいえる社会的熱狂などが全く消滅したことが感情的原因であったといえるかもしれません。

 もっとも、金融業界とこれが構成する金融経済と、いわゆる経済学研究者にとっては、それぞれの利益の源泉、あるいは理論体系の重要要素の一つである「金利」が消滅していることで、「失われた!」と吹聴されることもやむを得なかったかとも思えます。

 しかしながら、視点をいわばコペルニクス的に転換してみれば、この30年間には、近現代経済史で初めて、「金利」のみでなく「インフレ」までもが存在しない社会が出現しています。とはいえ、どういうわけか、一般にも経済研究者でも、この金融史始まって以来の事実の画期性に言及することはありませんでした。その結果、当事者である日本社会では、それが出現していない他の諸国ではもちろんのことですが、その事実が平然と見過ごされています。

 ちなみに、1971年の米国政府のドル・金兌換停止宣言以来、米国中央銀行であるFRB(連邦準備銀行)は、インフレ率2%を前提として毎年ドル増加発行しています。したがって、インフレゼロなどという金融環境は、ドルの継続的発行の根拠が消滅してしまう、米国経済基盤の存立にも影響する重大事態でもあります。

 とはいえ、幸いなことに、中立的な立場に近いと思われる、IMF(国際通貨基金)は、国別インフレ率変遷調査で、この点を客観的に指摘しています。IMF公表のインフレ年率データの算術平均値は図2-1の通りです。(「日本株式会社 未来設計図」)

図2-1.G7の算術平均(Arithmetic Mean)インフレーション率(1995-2024)(注)

資本循環力の真実 大中忠夫

注:IMFデータは年率累積型であるとの前提で、幾何平均(Geometric Mean)で計算され、その結果では日本社会のインフレ率が、他のG7諸国と桁違いであることは見逃されていますが、幾何平均手法はデータが全て「正」であることが前提で、日本社会のよう、に他諸国とは異なり、マイナス・インフレ数値が多く含まれる場合には、算術平均(Arithmetic Mean)でその現実がより正確に示されます

 そして日銀と米国中央銀行FRBによる標準金利変遷データでは、図2-2に示すように、日本社会は1995年以後30年間、金利ほぼゼロ社会なのです。

図2-2.日米標準金利変遷(1975-2024)

資本循環力の真実 大中忠夫

 図2-1と図2-2が示すように、1995-2026の日本社会は、金利も存在せず、一般には金利操作によって制御されるとされているインフレも存在しない社会なのです。これは、19世紀にマルクスが提起した「資本主義」の枠組みを全く外れた、異端社会、ですが、視点を根本的に入れ替えれば、彼も想像しえなかった、新たな進化した資本主義社会ともいえるでしょう。従来の経済学で、資本主義経済をコントロールする3要素レバーとされる、「金利」、「通貨供給量」、「インフレ期待」のうちの、2つが存在せず、これらに依存しない、社会であるからです。この事実は、次の図2-4,5,6の統計値にも示されています。

2.金利とインフレに依存しない経済成長を実現している唯一社会

 図2-3に続く2-4、2-5、2-6には、1995-2026の30年間の日本経済は、金利とインフレの影響がほぼ無い状態で成長し続けている事実が示されています。

 これは19世紀にマルクスによる資本主義社会定義を完全に逸脱、あるいは、超越した社会です。全く新たな資本主義体制社会といってもよいでしょう。背後に金利という経年増殖機能が貼り付けられていない、いわば、「純粋な資本」が、「創出―蓄積―投資」の循環により成長し続けています

 図2-4は、資本の「蓄積」、図2-5は、「投資」、図2-6は「産出」の、日本社会における1995-2024年30年間の成長を示しています。

 図2-3は、この30年間の日本の全企業(245-304万社:1995-2024)の、資本のΔ蓄積年率、Δ投資年率は、Δ創出年率、は、図2-4、5、6の近似回帰線係数から、それぞれ、24兆円/年、5.6兆円/年、3.4兆円/年であることを総括しています。

図2-3 日本企業社会の資本循環力:1995-2024

資本循環力の真実 大中忠夫

 次の、図2-4では、日銀標準金利がほぼゼロであった30年間に、日本企業社会の資本蓄積は、254兆円から949兆円に、ほぼ4倍になり、年率では24兆円/年の速度で増強されています。

 これは、第1回の図1-2の1960年から2024年までの資本蓄積成長年率、13.8兆円、の1.7倍の速度です。一般メディアなどで、失われた30年と称される時代にも日本社会における資本蓄積力はむしろさらに2倍近くの成長進化を遂げているのです。

これは、1997年以来の米国型経営要求、「会社は株主(資本家)財産」であり、経営者はその最大化に最優先で取り組むべし、との命題への取り組み姿勢を示した結果でもあったでしょう。しかしながら、米国企業ではこのような企業内資本の蓄積は決して賞賛されません。そのような余剰力があれば速やかに株主に直接還元することが求めらます。

 この点から、したがって、日本企業社会は過去30年近くの米国型経営の荒波にもかかわらず、これを乗り超えて、池田勇人が夢見た「社会的存在」としての会社、「経済成長の原動力」として会社としての存在価値を追求し続けていることが示されています。

図2-4.日本企業の(金融保険以外の)全企業の資本蓄積 (1995-2024)

資本循環力の真実 大中忠夫

図2-5.日本企業の(金融保険以外の)全企業の資本全投資(1995-2024)

資本循環力の真実 大中忠夫

 上記図2-5からは、年率5.6兆円の成長とはいえ、むしろ横ばい状態とも思われるかもしれませんが、視点を変えれば、外部からの三つの大きな変圧にもかかわらず、都度、懸命に再起する日本企業社会の健な気ともいえる姿も観察できるのではないでしょうか?

図2-6.日本企業の(金融保険以外の)全企業の資本 (GDP) 産出(1995-2024)

資本循環力の真実 大中忠夫

 図2-6が示すように、1995年からの30年間の資本産出の成長は企業の人件費抑制と当期純利益上昇によるものでした。これは何よりも1997年以後導入された外資株主による株主財産経営への転換要求によるものでしょう。

 しかしながら、企業人件費、すなわち、賃金についても、コロナショックによる一時的な落ち込みはあるものの、2023年に入って本格的な上昇起動が始まっています。過去2年間の春闘では組合要求の満額回答が続いています。

 この起源を遡れば、2012年の第二次安倍政権で掲げられたアベノミクス経済政策、特に政府から企業社会に対する賃金アップ要求にゆきつきます。しかし、これは、欧米資本主義社会、とりわけ「株主財産の誰にも侵害されぬ自由」を標榜する米国社会では絶対といってよいほどにあり得ないことでした。米国大統領と穏やかにゴルフをしながらも、決然と日本的経済社会運営を継承した安倍首相の掲げたアベノミクス経済政策は、日本社会が新たな資本主義社会へと進化する最終仕上げとなっています。

3.日本経済の未来展望:金利ゼロ資本主義を日本から世界に

 2026年現在、金利もインフレも存在せず、しかも着実に経済成長を実現している世界で唯一の資本主義社会が出現しています。これは、金利の経年増殖力に依存せず、インフレによる経済成長統計数字の膨張にも依存しないで、しかも、実質的な経済成長を実現しているという、現代人間社会ではじめて出現した新たな資本主義社会です。

 これを日本社会の未来にいかにつないでゆくか、そしてさらにはこれを世界に広げるか、これが21世紀の日本企業社会の、遡れば戦後直後の池田勇人蔵相・首相から託された大きな命題、社会の大義でもあるでしょう。

 ただしそのための必須条件が二つあります。一つは日本の高度成長経済の原動力として出現したこの資本循環力の本質と現実を直視し納得すること。そして二つ目は、この資本循環力を衰弱させる原因を、積極的に予兆段階から排除すべきこと、です。この二つ目の実践のために、次の第3回では、資本を無条件で敵視したマルクスレーニン主義と命名された国家統制経済はもちろんですが、自由主義と資本主義を国是とする米国社会ですら資本循環力が出現していない事実!とそれらの根本的、具体的な原因を考察します。

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ライター:

株式会社グローバル・マネジメント・ネットワークス代表取締役 (2004~) CoachSource LLP Executive Coach (2004~)三菱商事株式会社 (1975-91)、GE メディカルシステムズ (1991-94)、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタントLLPディレクター (1994-2001)、ヒューイットアソシエイツLLP日本法人代表取締役 (2001-03)、名古屋商科大学大学院教授 (2009-21) 最新著書:「日本株式会社 未来設計図」

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