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ライトアップのグループ会社間リスキリング研修、助成金錬金術は合法スキームだがチラつく政商の影

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ライトアップの適時開示
ライトアップの報告書の適時開示より

政府が旗を振る「リスキリング(学び直し)」政策。そこに群がる企業と、国の助成金を巡るグレーなビジネスの実態が明るみに出た。

 

発端は、3月25日に『週刊文春』が証拠ビデオ付きで報じたスクープだ。東証グロース上場のIT企業「株式会社ライトアップ(6580)」が、厚生労働省の「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」を使った“不正受給”を指南しているのではないか、という疑惑である。

報道によれば、同社の営業担当者は中小企業向けのビデオ会議で「AI研修事業の立ち上げ支援」と称して提案を行っていたという。詳しくは文春電子版本誌を読んでいただきたいが、「自由なお金が数千万単位で増える」「最も効率的に資金を調達できる」といった、およそ人材育成の場には似つかわしくない生々しい営業トークが展開されていた。

 

本来、この制度は研修費用の最大75%を国が補填するものだが、ライトアップ側は手元に自由な資金が残るスキームを提案していたとされる。これに対し厚労省は、一般論として「訓練経費を実質負担していなければ不正受給に該当する」と回答。この報道を受け、ライトアップの株価は後場からストップ安(-25.33%)に張り付き、PTS(私設取引システム)でも暴落するなど市場にパニックを引き起こした。

一歩間違えれば巨額の不正受給事件に発展しかねないこの騒動。だが、事態はそう単純ではない。小誌は、あるルートからライトアップとは別会社の営業資料を入手した。そこから紐解くと、このスキームが単なる違法行為とは言い切れない、国の制度の“抜け穴”を突いた巧妙なものであることが見えてくる。

 

入手した営業資料が語る「お金が増える」仕組み

営業資料によると、このビジネスの骨格は自社グループ内での研修販売にある。営業対象となるのは、オーナーが複数の法人を所持しており、且つ正社員数が100名を超える規模の法人が営業先となる仕組みだ。オーナーが所持している一つの法人を研修会社に仕立て上げるのである。

やることは簡単だ。外部の研修会社にお金を払うのではなく、自らのグループ内に「研修提供会社(親会社など)」を仕立て上げる。そして、その会社から別の子会社へ研修を提供する形をとる。子会社は研修費用の最大75%(中小企業の場合)、大企業の場合は60%を国から助成金として受け取る。

そのうえでライトアップのようなコンテンツ提供する研修支援会社がフィーとして数十パーセントの折半するという仕組みだ。

グループ会社間リスキリング助成金のスキーム
グループ会社間リスキリング助成金のスキーム図。筆者作成

グループ内で資金を右から左に移動させているだけにもかかわらず、外部(国)から多額の助成金が振り込まれるため、資料内のシミュレーションでも「グループ連結収支で考えればプラスとなっている」と堂々と謳われているのだ。これは、架空の第三者を挟んでキックバックさせるような違法行為(過去に問題視されたエッグフォワードの手法など)とは異なり、資本の移動をグループ間で完結させている点が特徴だ。

 

実際にこのスキームを活用した企業に話を聞くと、社員一人当たり20数万円の補助金が入るため、自社社員500名に受講させると、一回あたり1億2千万程度の金額が手元に入るのだという。そのうちからフィーをコンテンツ提供会社に支払ったとしても、十分におつりが出るといった寸法だ。さらにこのスキームは理論上年間複数回回すことができるため、企業にはかなりの営業外収益が立つ仕組みだったようだ。

ライトアップが報道された際に、こうした営業をこの2年間で受けたと覚えのある人は多いことだろう。

日米「80倍の格差」と、制度緩和に暗躍した“政商”の影

 

なぜ、身内同士の取引で国からお金がもらえるような甘い汁が許されているのか。その背景には、日本が抱えるリスキリング後進国としての焦りがある。

資料によると、GDPに占める社会人の人材育成費は、アメリカが約40兆円に上るのに対し、日本はわずか約5000億円にとどまっている。これは学習院大学の宮川努教授の推計によるもので、厚生労働省の「平成30年(2018年)版労働経済の分析」に掲載されたデータだ。人口比を考慮しても、人材育成への投資規模には80倍もの絶望的な開きがあるのだ。

この遅れを猛スピードで取り戻すため、当時の国はなりふり構わぬ施策に出た。令和4年(2022年)9月1日、人材開発支援助成金を利用しやすくするためとして、大幅な制度の見直し(緩和)が行われたのである。

 

最も決定的なのは、対象となる訓練施設の要件緩和だ。従来は「申請事業主と関係性が認められる者が設置する施設は対象外」だったが、なんとこの要件を廃止したのである。これにより、「グループ事業主が設置する施設で不特定の者を対象とせずに訓練を実施する施設」での訓練が合法的に助成金の対象となった。

厚労省、リスキリング助成金の案内
厚労省、リスキリング助成金の当時の案内より。「訓練施設の要件変更」のところに、「グループ事業主が設置する施設で不特定の者を対象とせずに訓練を実施する施設」としっかり記載されている。(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001031633.pdf

実は当時から、この不自然とも言えるルールの緩和には、政府の有識者会議等にも顔を出す、さる政商や学者が深く関わっていたという黒い噂が永田町や霞が関で囁かれていた。「自らが顧問を務める教育系の企業が、助成金ビジネスで稼ぎやすくなるように制度を歪めたのではないか」と。

この緩和が、結果としてグループ間取引による錬金術に“国のお墨付き”を与えることになったのは、今回のライトアップの問題を見るに、紛れもない事実である。

 

ライトアップの反論は?

こうした国のルール変更を盾に、ライトアップ側も黙ってはいない。文春の報道後、同社は弁護士で構成される内部調査委員会を立ち上げ、早々に速報版の報告書を適時開示した。

そこには、「要領に違反する事実は認められない」「違法な不正受給や助成金詐取とまでは評価できない」と、違法性を真っ向から否定する言葉が並んでいる。現在までに厚労省からの調査やヒアリングを受けた事実はなく、顧客から助成金や報酬の返還を求められている事実もないという。

 

報告書によれば、調査を行ったのは複数の法律事務所から選任された3名の弁護士。同社の執行役員や元社外取締役の弁護士、さらに関与した社会保険労務士へのヒアリングを経て、あらゆる疑惑を“合法”と結論づけている。

まず最大の焦点である「実質コストゼロ」という営業トークについて、報告書は「要領で禁止されている『教育訓練機関等から金銭の返金(キックバック)を受けた場合』には該当しない」と一蹴した。研修会社から子会社への金銭提供の事実はなく、あくまで「親子間でお金が回るからグループとしてのコストにならない」という趣旨にすぎないというのだ。

さらにライトアップ側は、労働局から総勘定元帳の確認を求められるケースがあることを把握しており、返金と捉えられる行為は露呈するリスクがあるため厳守すべき事項(禁止事項)として顧客に指導していたと主張している。価格設定についても「助成金の有無で料金体系を分けておらず、不合理な価格設定には当たらない」と反論した。

 

また、休眠会社を研修会社に仕立て上げる提案についても、「要領上、法人の設立時期や休眠状態であったかどうかの制限は何ら規定されていない」として問題なしと判断。無資格での助成金申請業務(社労士法違反)についても、「申請は顧客(研修販売先)が直接社労士と業務委託契約を結んで行っており、当社も研修会社も一切関与していない。受講料の中に申請代行の対価が含まれている事情もないし、社労士に対して斡旋の対価も支払っていない」と完全否定している。

ただし、文春で報じられた「1人だけが10時間見れば、残り99人は見ていなくてももらえる」という極端な営業トークについては、誤解を招く表現だったと一部非を認めている。それでも、「申請のタイミングさえ満たせばよいという労働局の説明を踏まえたもの」であり、違法・不当な勧誘ではないと強気の姿勢を崩していない。

 

営業を受けたHD経営者たちの声

確かに、モラルや倫理的な問題を度外視すれば、形式上このスキームは合法となるのだろう。だが、ここで真に恐ろしいのは何だろうか。それは、巨額の血税が注ぎ込まれる助成金制度に、一部の界隈が潤うような“合法的な抜け道”を巧妙に作り出した政商学者の存在か。あるいは、法人税や社会保険料など多額の負担ばかりを国に強いられる企業側が、「むしり取られる税金は、合法な抜け道を使ってでも少しでも取り返すしかない」と助成金に群がらざるを得ない、この国の歪んだ現実の方かもしれない。

実際、この合法的な錬金術の誘惑はすさまじく、ライトアップは当時からかなり派手に営業を展開していた。当時、営業を受けたオーナー経営者たちの間では、酒飲みの場での恰好のネタとして「こんなうまい話があるのか」「やらない理由がないな」としばしば口の端に上っていたことを筆者は確認している。

 

さらに言えば、このスキームに目をつけ、同様の営業をかけていたコンサルティング企業はライトアップだけではなく、界隈には数多く存在していた。ある企業の役員はこう語る。

「正直、うちにも同じようなスキームの提案は色々なところから来ていました。持ち出しゼロどころか、グループ間でやり取りするだけで数千万円が浮くわけですから、喉から手が出るほど美味しい話です。ただ、コンプライアンス部門から『いくら合法でも、実態として国からお金を抜くためのペーパー事業に見える。倫理的に難しい』とストップがかかり、見送りました」

 

確かに、制度の建前上、グループ内に仕立て上げられた研修会社が、自社内だけでなく将来的に本当に他社に向けても研修を販売し、実態のある事業として独立していくのであれば、法的な問題は一切ない。実際にそうして、研修を提供メニューに加えた企業もある。しかし、その多くが助成金をもらうためのハックとして消費されていたのが実態ではないか。

制度の趣旨と実態の乖離が問われる助成金ビジネス。ルールを作った国の見通しの甘さと、それを合法的にハックして利益をむさぼる企業たち。人への投資という美しいスローガンの裏で、我々の血税は今日も誰かの自由なお金に変換されている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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