
自動車や精密部品などのメーカーを顧客とし、製造現場への人材派遣や請負を展開するnmsホールディングス(東証スタンダード上場)。同社は単なる派遣会社にとどまらず、国内外に自社工場を持ち、電子機器の製造受託や電源部品の開発までを総合的に手がける独自のビジネスモデルで急成長を遂げてきた企業である。
かつて100億円程度だった売上高を直近では800億円規模まで押し上げ、グループで約1万人の従業員を抱える業界の大手だ。
業績悪化を恐れた「7.1億円」の損失隠蔽
そんな同社から、またしてもスキャンダルが飛び出した。3月16日、同社が公表した特別調査委員会の調査報告書により、連結子会社であるパワーサプライテクノロジー(PST)での巨額の損失未計上が発覚したのだ。
PSTが2015年から2018年にかけて製造・販売した照明用電源において、「点灯しない」「点滅する」といった不具合が発生。長引く交渉の末、その交換対応費用など約7億1600万円をPSTが負担することになった。会計ルール上、本来なら遅くとも2024年3月期の決算で引当金として計上すべきだったにもかかわらず、長期間にわたり決算書から除外され、事実上の“隠蔽状態”になっていたのである。
なぜ、これほど巨額の損失が表に出なかったのか。
報告書はその直接的な原因として、当時の経理財務部門を管掌していた役員が、計上に向けた判断を意図的に先送りしていたと断じている。この役員は、損失計上による業績予想の大幅な下方修正や、品質問題が公になることで資金調達や事業への信頼に傷がつくことを強く恐れていたという。
さらには、一部の役員に権限が集中し、親会社の取締役会にも情報が十分に伝わらないという、組織のガバナンス不全がこの隠蔽作業を容易にしていた。
トップの絶対的権力が招いた「心理的安全性の欠如」
事態をさらに根深くしているのは、同社を支配していた歪んだ企業風土だ。今回の報告書では、当時の代表取締役社長のトップダウン型の組織風土の下で、異論を唱えれば自らの地位を失う恐れがあるという「心理的安全性の欠如」があったと指摘されている。
業績の維持に厳しく、株価を下げるようなバッドニュースを許容しないトップの絶対的な権力が、子会社役員や財務担当者を極度に萎縮させ、結果として巨額の損失計上から目を背けさせる遠因になった可能性が示唆されているのだ。
前社長との「泥沼の内紛」が落とす影
実は過去にも重大な問題が起きており、現在の経営陣は内紛にあった。2024年12月には、2002年から長年トップに君臨してきた小野文明前社長の経費不正使用を糾弾する調査報告書が出されている。会社側は小野氏に対し、不適切な経費使用やそれに伴う調査費用2億3300万円の損害賠償を請求し、辞任再勧告を行うという強硬手段に打って出た。
一方の小野氏もメディアの取材に対し、私的流用は天地神明に誓ってないと反発。現経営陣に反対する株主提案を提出するなど、会社と前社長が真っ向から対立する前代未聞の事態に発展していた。
モノづくりの現場を支え、グローバルに躍進してきたはずの企業が抱えていた闇。前社長との血みどろの権力闘争に続き、子会社での巨額損失隠しという新たな火種を抱え込んだ同社は、今後、過年度の有価証券報告書や決算短信の訂正という厳しい対応に追われることになる。
市場や取引先からの信頼をどう回復していくのか、ガバナンス不全から抜け出すための道筋はいまだ見えてこない。



