
街角で見かけるあの「生搾りオレンジジュース自販機」から、驚きのニュースが飛び込んできた。中身を搾り取られた後の“無用の長物”だったオレンジの皮が、なんと子供たちの手元で輝く「クレヨン」に生まれ変わるというのだ。
「搾りかす」を奪い合う異色連合の正体
いまや街のあちこちで見かけるようになった、あの鮮やかな筐体。その裏側で、1台につき年間膨大な量のオレンジの皮が排出されている事実に気づく者は少ない。これまでは産業廃棄物として処理される運命にあったこの“厄介者”に、熱烈なラブコールを送ったのが、農業再生を掲げる「栄農人(エナジー)」と、野菜クレヨンの先駆者「mizuiro」だ。
3社がタッグを組んで誕生した『畑で採れたクレヨン』。特筆すべきは、単なる「エコ商品」の枠に収まらない徹底した品質へのこだわりだ。ベースには米ぬかから採れるライスワックスを使用し、IJOOZから供給されたオレンジの皮を微粉末化して配合。万が一、好奇心旺盛な子供が口に入れても安全な素材だけで作り上げられている。
1650台の自販機は「資源の回収拠点」だった
他社が「いかに効率よく捨てるか」に腐心する中、IJOOZの戦略は真逆を行く。全国1650台を超える自販機網を、単なる販売チャネルではなく、良質な未利用資源の「回収インフラ」へと鮮やかに再定義してみせたのだ。
このプロジェクトの背景には、IJOOZ代表・堀木遼氏が抱く「一次産業への畏敬」がある。同社は世界中の農園と直接契約を結び、規格外のオレンジに高付加価値をつけて買い取ることで農家の収益化を支えてきた。
堀木氏は「事業の生命線であるオレンジを余すことなく活用したい」と語る。その執念が、ゴミという概念を「素材」へと昇華させた。
「パパ、これ自販機の皮?」子供の問いが変える未来
実はこの取り組み、経営者としての計算以上に、堀木氏自身の「父親としての視点」が強く反映されている。保育園や小学校に通う自身の子どもたちが、学校の探究学習でSDGsを学ぶ姿を目の当たりにし、「身近な体験」の重要性を痛感したという。
「自分の飲んだジュースの皮が、大好きなクレヨンに変わる」。この圧倒的なリアリティこそが、教科書では教えられない最高の教育コンテンツとなる。自社の資源が「皮」に限定されるという弱みをあえて認め、専門技術を持つパートナーと手を組むことで、単独では到達できなかった「高付加価値な循環」を作り上げた。
一企業の利益を越え、未利用資源に「物語」を乗せて社会に還流させる。IJOOZが示したのは、停滞する日本企業が学ぶべき、泥臭くもスマートな生存戦略といえるだろう。



