
人手不足の現実とモスの戦略
外食業界は深刻な人手不足に直面している。調理・接客の有効求人倍率は2倍を超え、2025年には飲食業倒産が過去最多を記録した。モスは2019年からベトナム国立ダナン短期大学と連携した独自プログラム「ベトナムカゾク」を実施。特定技能制度を活用し、来日後に正社員として店舗勤務から副店長・店長へ昇格を目指す。
特定技能には1号と2号の2種類がある。1号は「一定の知識・経験を持つ即戦力向け」で、通算在留期間は最長5年(更新あり)。日本語・技能試験が必要で、家族帯同は原則不可。
2号は「熟練した技能を持つリーダー向け」で、在留期間の上限がなく、家族帯同も可能(要件を満たせば)。モスではまず1号で受け入れ、経験を積んで2号取得を目指す。2024年12月時点で合計50名が参加し、2025年には特定技能2号合格者も10名に達した。
早ければ1年以内に初のベトナム人店長が誕生する見込みで、この取り組みは国内店舗の安定運営に加え、ベトナム進出時の幹部候補育成を目的としている。当初計画の350人に対し、コロナ禍の影響で大幅に未達となったが、戦略は変わらず推進されている。
ネット上の批判と不買の広がり
2026年2月19日のYahoo!ニュース配信をきっかけに、Xで「国産野菜・安心・日本的を売りにしてきたのに幹部がベトナム人ではイメージ崩壊」「外国人犯罪の懸念が強い中で店長クラスまで任せるのは不安」との批判が急増した。
警察庁の2024年データでは、来日外国人刑法犯検挙件数が前年比増加し、ベトナム人が全体の約44.5%を占める。侵入窃盗の約8割、万引きの約半数をベトナム人が占めるとの指摘もあり、失踪や不法滞在からの犯罪リスクを強調する投稿が拡散。
不買宣言のほか、「中国産食材との関連も絡めてさようならモス」「移民推進すぎる」との声が連鎖し、一部YouTube動画も「大炎上」と煽る形で話題を広げた。へずまりゅう氏らの影響で不買運動が加速した事例も見られる。
擁護側の視点と現実対応
一方で「真面目に働き能力を認められた結果の昇格を差別するのは不当」「人手不足で日本人集まらない現実を無視している」との擁護も多い。
モスは給与・福利厚生を日本人正社員と同水準とし、特定技能制度のルールで同等以上を義務付けている。ベトナム人は日本語習得や衛生管理に積極的で、他社より離職率が低い可能性が高い。外食大手は春闘で平均5%以上の賃上げを実施しているが、土日出勤や不規則シフトを嫌う若年層が多く、条件面で負けている。人手不足産業では外国人労働者が不可欠であり、多様性として評価する声も存在する。
賃金抑制と日本人の雇用機会への影響
高い賃金を出せば日本人も集まるはずとの指摘は的を射る。
モスも2026年4月から平均5%の賃上げと新卒初任給約25万円への増額を決定したが、外食業界全体で外国人受け入れが安価な労働力確保に偏ると、低スキル分野の賃金上昇が抑えられ、日本人の機会が減少する懸念がある。
企業が営利優先で移民を加速させているとの見方も根強く、ベトナム人従業員が一部店舗で2割を超える状況は「日本人優先」のイメージを揺るがす。政策全体での責任ある受け入れが求められる。
将来の社会負担と責任ある仕組みの必要性
特定技能は基本5年で、2号取得で継続可能だが、失職時は帰国が原則。
生活保護は対象外で、企業に支援義務がある。しかし失踪・犯罪時の管理が不十分だと不法滞在や負担増につながる。2040年までに労働力不足が1100万人規模になると予測され、外国人頼みだけでは限界がある。企業への連帯責任強化、日本語教育の拡充、賃金・待遇改善、DX推進が不可欠だ。
将来的な負担を最小限に抑え、日本社会全体で共生を目指すべきである。



