
冬の冷たい空気が残る早朝の上野。まだ陽も昇りきらない時間帯から、上野動物園の正門前には静かな列が伸びていた。
目当ては、来月下旬に中国へ返還される双子のジャイアントパンダ、シャオシャオとレイレイだ。返還発表後、初めて迎えた週末。「もう一度、この目で見ておきたい」
そんな思いを胸に、多くの人が夜明け前から足を運んだ。
夜明け前の上野にできた「静かな列」
冬の冷たい空気がまだ色濃く残る午前7時前。東京都台東区の上野動物園の正門前には、すでに長い列が伸びていた。厚手のコートに身を包み、手袋をはめた人々の視線の先にあるのは、来月下旬に中国へ返還される双子のジャイアントパンダ、シャオシャオとレイレイだ。
返還が発表されてから初めての週末。少しでも長く、その姿を目に焼き付けようと、多くの人が夜明け前から園に足を運んだ。
開園前倒しでも追いつかず 観覧は午前中で締め切り
この日は来園者の集中を受け、動物園は開園時間を15分前倒しした。それでも午前9時15分の開園時点で、並んだ人数はおよそ3600人に達した。
園内では係員の誘導のもと、観覧は短時間に制限され、午前10時半すぎには受付が締め切られた。記者が列を取材すると、「来週から予約制になるので、今日しかないと思った」「最後になるかもしれないから、寒さは気にならなかった」といった声が相次いだ。
パンダ返還の経緯 “期限”が迫る4歳の双子
シャオシャオとレイレイは2021年に誕生した双子で、中国との協定に基づき、一定期間が過ぎると返還されることがあらかじめ決まっていた。
東京都は今月15日、2頭を来月26日から31日の間に中国へ返還すると発表。これにより、1972年の初来日以来、「日中友好の象徴」とされてきたパンダが、日本国内から姿を消すことになる。
都と上野動物園は中国側に新たな貸与を求めているが、現時点で具体的な回答はなく、今後の見通しは不透明だ。
観覧ルールは段階的に厳格化 “自由観覧”は今週末まで
来園者の増加を受け、観覧方法は大きく変わる。
事前申し込みなしで観覧できるのは21日までで、23日からは事前予約制に移行。さらに1月14日以降は、事前申し込みによる抽選制となる。共同通信も、返還発表後初の週末となった20日、開園から1時間余りで観覧受付が打ち切られたと報じており、今後はさらに“狭き門”となりそうだ。
別れを惜しむ街 「上野の象徴」は続く
返還を前に、園内外では記念グッズが次々と登場し、土産物店では関連商品が品薄になるなど、街全体が“別れの時”を意識し始めている。
「たとえ返還されても、パンダは上野の象徴」。そんな思いを語る人も多く、双子の最終観覧日とされる2026年1月25日まで、上野にはしばらく熱気が続きそうだ。



