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ポケモンカード高騰の裏にある中国人のマネーロンダリング需要…不動産同様買い占められる日本

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ポケカ高騰は資金洗浄したい中華マネー需要で支えられていた?

ポケモンカード高騰は中華のマネロンで支えられていた

たった1枚の紙切れに、3000万円の値がつく。連日のように報じられるポケモンカードの異常な高騰ぶりを目にし、「日本のコンテンツが世界的なアートとして認められた」と、誇らしい気持ちになる日本人もいるかもしれない。

だが、その認識は甘いと言わざるを得ない。取材班が見た現実は、そんな牧歌的なものではなかった。都心のタワーマンションや北海道の水源地が外国資本に買い漁られているのと全く同じ構図が、子供たちの遊び場であったはずのカードショップでも起きていたのだ。

彼らにとって、ピカチュウやリーリエは愛すべきキャラクターではない。日本の不動産と同じく、通貨安の日本で安く仕込み、本国へ資産を逃がすための「金融商品」。さらに言えば、当局の監視をくぐり抜けるための「マネーロンダリング(資金洗浄)の道具」として機能していたのである。

 

「ふざけんなよ…」ファンの目の前で“即決”される高嶺の花

「ああ、嘘だろ……。半年貯金して、やっと今日買いに来たのに」

週末の東京・秋葉原。カードショップのショーケース前で、会社員の男性(20代)が悔しさに顔を歪ませ、地団駄を踏んでいた。彼の視線の先には、ショーケースを開けさせ、店員と談笑することもなく淡々とカードを指差すアジア系カップルの姿があった。

男性が狙っていたのは、数十万円のレアカード。コツコツと小遣いを貯め、ようやく手が届くと意気込んで来店した矢先の出来事だった。カップルは価格を確認する素振りすら見せず、そのカードを含む棚の列を指差し、「これも、これも」と流暢な英語で次々と注文。合計額は軽く100万円を超えたが、分厚い財布からプラチナカードを取り出し、スーパーでガムを買うような気軽さで決済を済ませてしまった。

 

「僕らが必死に働いて貯めたお金が、彼らにとっては端金(はしたがね)なんでしょうね。愛着なんてあるように見えない。ただただ、悔しいです」(前出の男性)

店長は、去っていくカップルの背中を見ながら、諦めを含んだ笑みを浮かべて語った。

「最近はこんな光景ばかりです。かつてのアジアからの観光客は、純粋なポケモンファンでした。でも今は違う。来るのは投資家か、資産家。ハイブランドの服に身を包んだアジア系のアジア富裕層と思われる方々です。彼らからは『ポケモンが好き』という熱量は全く感じられません。カードの絵柄やテキストなんて見ていない。彼らが見ているのは『価格』と『PSA(鑑定)ランク』だけ。スマホの画面を見せながら『このランクの、この価格帯のものはあるか』と淡々と尋ね、数百万円するカードを、まるでスーパーで日用品を買うように購入していきます。日本人が躊躇する値段でも、彼らは即決です」

 

ネットに渦巻く嫉妬と義憤「マネロンの道具にするな」

こうした「買い負け」の現実は、ネット上でも大きな波紋を呼んでいる。SNSでは、札束の画像と共にレアカードの購入を報告する海外アカウントに対し、日本人ユーザーからの妬みや怒りが入り混じったコメントが殺到している。

 《どうせ裏金だろ。綺麗な金でこんな紙切れ買えるかよ》《日本の宝をマネロンの道具にするな。店も売る相手を選べよ》《円安のせいで日本はバーゲンセール会場か。悔しいけど、これが今の日本の国力なんだな》《偽札じゃないか調べろよ。税務署仕事しろ》

「純粋にカードが欲しい」という思いが届かない現状への嘆きと、圧倒的な資金力を見せつける外国人富裕層へのルサンチマン(恨み)。カードショップは今、子供たちの社交場ではなく、経済格差を見せつけられる残酷な現場と化している。

 

なぜ「現金」ではなく「カード」なのか

なぜ、彼らはこれほどまでにポケモンカードを欲するのか。ある中国人経営者の知人が、その「裏のロジック」を明かしてくれた。そこには、中国国内の厳しい事情と、日本のカード市場が持つ「抜け穴」が見事に合致した冷徹な計算があった。

「中国から現金を日本や海外へ持ち出すのは、今は絶望的に難しいんだ」

中国には年間5万ドル(約750万円)という厳格な外貨持ち出し制限がある。富裕層がどんなに資産を持っていても、それを海外へ動かす術は限られている。そこで白羽の矢が立ったのが、ポケモンカードだ。

 

手口はこうだ。まず、銀聯カードなどのデビット・クレジット機能を使い、日本国内でカードを大量購入する。この時点ではあくまで「ショッピング」だ。そして、ここからがこのスキームの真骨頂である。

「1億円を現金で運ぼうとすれば重さは約10キロ。隠すのは不可能だ。だが、1枚数百万円のカードなら、数十枚で済む。ポケットに入れて、子供のお土産のような顔をして出国すれば、税関で止められることはまずない」

金塊やロレックスは税関の血眼の捜索対象だが、ポケモンカードは法的には依然として「玩具(おもちゃ)」だ。この監視の空白の間隙を利用し、彼らは資産を物理的に軽くし、国境をまたぐ。そして第三国で売却し、現地のきれいな現金(ドルや円)を手にする。つまり、ポケモンカードは「紙幣よりも軽くて高額な、持ち運び可能な金塊」として機能しているのだ。

 

数百円が数千万円に…異常な高騰の実態

この「送金需要」が、相場を常軌を逸したレベルへと押し上げている。実際にどれほど高騰しているのか。

1枚3000万円超「リーリエ」の衝撃

2019年のイベントで配布された「エクストラバトルの日」仕様のリーリエ。当時は中古市場で数万円程度だったが、投機マネーの流入により暴騰。最高評価(PSA10)のものは一時3000万円を超え、都内の新築マンションが買えるほどの価値がついた。

定価1500円が数百万円に 2016年発売の「マリオピカチュウ」ボックス。定価は1500円だったが、封入されていたカードは現在、数百万円で取引されている。数年で1000倍以上のリターンだ。

この異常な上昇率が「送金時の目減り(手数料)」を補って余りある利益をもたらすため、富裕層たちは多少の高値掴みをしてでも買いに走る。

 

日本人が「買い負ける」悲しき現実

「消費税や買取手数料で損をするのでは?」という疑問も、彼らには通じない。円安が進む日本で商品を買い、ドルや元ベースで資産を評価できる海外へ持ち出すことは、それだけで為替差益を生む。仮に手数料で1〜2割目減りしたとしても、中国国内で資産を凍結されるリスクや、地下銀行の高い手数料に比べれば「安い経費」なのだ。

日本の子供たちが小遣いを握りしめても買えないカードを、海外の富裕層が「資産防衛」のために札束で叩いて買っていく。不動産市場で日本人が買い負け、土地を追われる構図と全く同じことが、机の上の小さなカードの世界でも起きている。

 

「ただのおもちゃ」は、いまや国境を超えるための「無記名の小切手」へと変貌した。熱狂する市場の裏側には、グローバル経済の歪みと、それに翻弄される日本のコンテンツの姿が透けて見える。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。株式会社東洋経済新報社ビジネスプロモーション局兼務。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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