
静岡県伊東市議会から前代未聞の2度の不信任決議を受けて失職した田久保眞紀前市長(55)が19日、市長選(12月14日投開票)への再出馬を正式に表明した。学歴問題の経緯すら明確にならず、複数の刑事告発への説明も不十分なまま。
それでも「強みはメンタル」と自ら言い切り、再び市政のトップの座を狙う姿勢に、市民からは「反省より自己顕示」「市政を私物化している」と批判が噴き上がっている。伊東市が抱える構造問題も絡み、今回の出馬は地域政治の脆弱性を浮かび上がらせるものとなった。
“謝罪”直後の出馬宣言に市民の違和感は強い
会見冒頭、田久保氏は学歴問題を含めた一連の混乱について「市民に多大なるご迷惑をおかけした」と謝罪した。しかし、その数十秒後には「伊東の未来について、もう一度お任せいただけるのであれば挑戦したい」と続け、選挙への意欲を明確にした。謝罪の言葉が本心なのか、単に出馬表明の“儀式”だったのか。市民の受け止めは厳しい。
伊東市は観光業が基幹産業で、市政の停滞は地域経済に直結する。2度の不信任による政治空白は、市内の商工関係者からも「もう混乱は御免だ」との声が上がっていた。そうした中、説明が尽きないままの再出馬は「市全体の疲弊を理解していない」との批判を誘った。
質疑応答で露呈した準備不足と政治家としての資質
会見では、田久保氏の政治家としての基礎的力量に疑問を抱かせる場面が続いた。
「特に注力したい政策を3つ簡潔に」と問われた際、最初に「インフラ老朽化」と答えたものの、残る2つが出てこず、
「あと2つくらい、今考えろということですね…」
と答えたシーンは、視聴者からも失笑を買った。
さらに「市議選の票から市長選の見通しをどう見るか」と問われた場面では、
「実はまったくわかりません」
と述べ、候補者として最低限求められる情勢分析すら示せなかった。
伊東市は高齢化率が30%を超え、道路・公共施設の更新、観光振興、財政再建など喫緊の課題が山積している。市政運営には高度な判断力と政策立案能力が欠かせないが、会見からはその片鱗すら感じられなかった。
“強みはメンタル”発言が炎上 反省なき自己肯定
会見で最大の注目を集めたのは、記者から「田久保さんにしかない強みは?」と問われた瞬間だった。
「やはり、このメンタルの強さですね」
田久保氏は微笑みながら即答した。しかしこの発言は、根拠なき自己肯定と受け取られ、YouTube視聴者からは
《自分で言うな》《図太さを誇ってどうする》《メンタルじゃなくて反省心が足りないだけ》
など、鋭い批判が瞬時に書き込まれた。
地元紙の政治部記者も、「学歴問題の渦中でも自撮りを連日投稿し続け、不信任後も毅然と出馬する。この“強心臓”はある意味で本物だが、政治家としてそれを美徳と捉えている点こそ問題だ」と指摘する。
政治家に求められるのは、強靱なメンタルよりも、市民に寄り添う誠実さである。その基本すら見誤っている姿が、今回の炎上を招いたと言える。
世論の厳しい反応 SNS・ヤフコメはほぼ総批判
ネットニュース配信後、SNSや掲示板、ヤフーコメント欄では批判が噴出した。
《他人の迷惑を気にしないだけ》《自己保身のためのメンタル》《反省のなさを誇るな》
《メンタルの強さより誠実さが必要》《もう市政を混乱させないでほしい》
といった意見が多数を占めた。
伊東市民からは「議会と対立し続ける市長では前に進まない」「問題解決より自己演出を優先している」との声も出ている。観光客に頼る地域性ゆえ、市政運営の混乱が街のイメージを損なうとの危機感も強い。
承認欲求と制度の課題が噴出 地方政治の脆弱性も露呈
今回の再出馬には、「悪名を逆手にメディア露出を狙っているのでは」との指摘もある。学歴問題や不信任の詳細が整理されないまま出馬すれば、話題性だけが先行し、本人の承認欲求を満たす場として選挙が利用されかねない。
さらに制度的な問題も浮き彫りになった。
2度の不信任を受けても、即座に再出馬できる現行制度について、
《一定期間は出馬できない仕組みが必要》《不信任を軽く扱いすぎ》
といった意見が噴出している。
地方政治の信頼は、一人の行動で大きく揺らぐ。それだけに、制度面での歯止めや、メディア側の慎重な扱いが求められる。伊東市の政治が再び混乱へ戻らぬためには、有権者の冷静な判断が欠かせない。



