
登録者365万人(2025年11月16日現在)の経済系YouTubeチャンネル「PIVOT」が、SNSで批判の渦中に立たされている。
発端は、同チャンネルがPR動画を制作したニデックやオルツといった企業で不祥事が相次ぎ、結果として動画を“しれっと削除”した対応だ。視聴者の信頼を得てきたメディアであるがゆえに、「説明責任を果たしていないのではないか」という声がSNSで広がっている。
ニデック不適切会計で注目再燃 “動画削除対応”に視線が集中
直近で最も注目されているのは、精密機器大手ニデックでの不適切会計問題だ。第三者委員会が調査中であり、最終的な規模はなお不透明だが、監査法人による異例の「意見不表明」が出されるなど、不正会計問題に揺れている。
PIVOTは過去にニデックの永守会長など経営陣を出演させたPR動画を制作しており、問題発覚後、該当動画は静かに非公開となった。説明文や配信内の注釈で理由を記すこともなく、ただ動画が消えている。この対応が火に油を注いだ格好だ。
SNSでは次のような声が相次いでいる。
「何も言わずに動画だけ消すのは不誠実では?」
「ニデック問題を受けて“また削除か”と思った」
「PIVOTが悪いわけではないが、説明しないのは良くない」
批判の矛先は不正を行った企業そのものではなく、対応を曖昧にしたメディア側へ向けられている。
「オルツ粉飾」の記憶 同じ構図の再現が視聴者の不信感に火をつけた
PIVOTの“動画削除問題”が注目される背景には、同じように動画削除をしれっと行った前例があるためである。そう、粉飾騒動に揺れたオルツ社のことだ。売上の9割以上が架空計上だったとされ、経営陣が逮捕される事態に発展している。
当時も、PR動画は静かに非公開となった。ただ、取り上げる企業の考査をメディアがきちんと行えていないことで批判があがるのは、現実問題、本件の場合は可哀そうなところはある。ニデックやオルツの場合、上場企業であり、監査法人ですら見抜けなかった案件である。PIVOTが事前に何かを察知できたとは考えにくい。
メディア側に“目利き力”を過度に求められても、はなからそんな力は備わっていないのがメディアという媒体であり、不祥事を起こす会社のタイアップ記事を取り上げるなという批判自体には、賛同しかねるものがある。
とはいえ、問題なのは、しれっと動画を削除することであり、削除は致し方なくとも、読者視点に立てば、何かしらの説明責任は問われるということはメディアの誠実な姿勢として求められてしかるべきだ。2つの不祥事で同じ対応を繰り返したことで、「動画が消える→説明なし→炎上」という構図が改めて強調された形になっていることは残念である。
箕輪厚介氏も、こうした連鎖に言及している。
「PIVOTの核は“なんかイケてる”というブランド。その価値が毀損されると一気に沈む」
ブランドビジネスとして成功してきただけに、失点に対する影響は大きい。
「メディアの目利き力」よりも問われているのは“姿勢”
そう、今回の一連の事案で、視聴者が最も違和感を抱いているのは、PIVOTの“沈黙”だ。メディアのPR動画は、企業のコミュニケーション活動の一環として成立するものだ。再三になるが、上場審査や監査を通過した企業とタイアップすること自体に問題はない。むしろ、財務の不正を見抜けなかったのは監査法人側の問題であり、PIVOTの責任ではない。
それでも視聴者が納得しないのは、削除という行為が“逃避”に見えるからだ。
「不正を見抜けなかったのは仕方ない。だが、その後の説明は必要だ」
「せめて経緯や今後の指針を発信してほしい」
動画削除の行為ではなく、「説明をしなかったこと」が批判の中心にある。
誠実な説明こそ、ブランドを守る最短ルート
メディアへの信頼は、透明性と誠実さによって担保される。今回のケースは、PIVOTが“誠実性をどう示すのか”が試されていると言える。
炎上は避け難い状況だが、むしろここから「どのように説明し、どのように改革するのか」を示すことで、ブランドを再び強固にする契機にもなり得る。
PIVOTが「逃げずに語るメディア」として姿勢を示すかどうか。その態度こそが、次の時代の視聴者の信頼を左右するはずだ。



