
インドネシアの人気YouTuber、Nessie Judge氏(登録者数約1,160万人)が、韓国のボーイズグループNCT DREAMをゲストに迎えた動画で、日本の「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の被害者・古田順子さん(享年17歳)の写真を“背景装飾”として使用していたことが明らかになった。
1989年に日本社会を震撼させた未成年誘拐・殺害事件の被害者を、娯楽コンテンツの演出に転用した行為は、国内外で「人間の尊厳を踏みにじる行為」として猛批判を浴びている。謝罪は表明されたものの、釈明の内容がさらなる炎上を招き、国際的な波紋を広げている。
被害者の尊厳を“装飾”に――世界が凍りついた映像
インドネシアの人気YouTuber、Nessie Judge氏(登録者数約1,160万人)が、韓国の人気グループNCT DREAMをゲストに迎えた動画の撮影セットで、日本の「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の被害者・古田順子さん(1971年1月18日生まれ、1989年1月4日死亡、享年17歳)の写真を額装して背景に使用していたことが発覚した。
問題の動画は11月2日に公開され、都市伝説や犯罪を扱う同氏のシリーズ「NERROR」の一環として配信されたもの。壁面には、目に黒線が入った古田さんの写真が飾られており、SNS上で「これはあの事件の被害者だ」と指摘が相次いだ。発覚後、動画は削除されたが、拡散は止まらず、世界各国から批判が噴出している。
1989年の凄惨な事件
1988年11月25日、東京都足立区で高校生の古田順子さん(当時17歳)が帰宅途中に拉致された。犯人は宮野博史(当時18歳)、小倉譲(当時17歳)、湊真司(当時16歳)、渡辺康(当時17歳)の4人。
彼らは古田さんを湊の自宅に監禁し、約40日間にわたり暴行と拷問を繰り返した。
被害者は全身に200カ所以上の損傷を負い、最期はドラム缶に詰められてコンクリートで固められ、東京都江東区の空き地に遺棄された。事件は日本中を震撼させ、「戦後最悪の少年犯罪」として記録されている。
その被害者の写真を、娯楽コンテンツの“装飾”として使用した事実は、倫理の欠落を超えて人間性そのものへの冒涜である。
Nessie Judge氏の弁明と“誤解”という言葉の欺瞞
批判を受け、Nessie Judge氏はX(旧Twitter)で謝罪を投稿。「誤解を招いたことをお詫びします」「誰かを傷つけたり侮辱するつもりはありませんでした」と釈明した。
だが、問題は「誤解」ではない。被害者の写真を自ら選び、演出の一部として額に飾った行為そのものが、人命の尊厳を軽視した決定的な過ちである。
さらに彼女は、「ハロウィーン装飾ではなく、チャンネルのオマージュとして設置した」「視聴者のリクエストが多かったため、事件を特集するために使用した」と説明。だがその理屈は、命を奪われた少女を“雰囲気作り”の素材とした事実を正当化するものではない。
謝罪直後、同氏はInstagramで「心配しないで、動画はまた復活する」と投稿。削除よりも再生数と注目を優先するかのような姿勢に、怒りはさらに拡大した。
SNSで噴出する怒りと“加害者保護”への逆転批判
SNSでは「これは謝って済む問題ではない」「国際的な人権問題だ」との声が広がった。
「なぜ被害者の写真を“演出”に使えるのか」「死後もなお侮辱されている」「NCTを巻き込んで不快だ」など、各国から非難が相次いだ。
中でも、日本国内のネットユーザーが注目したのは“加害者が守られ、被害者が晒される”という構造だ。
犯人たちは少年法により実名報道を避けられ、刑期を終えて社会復帰している。一方で、古田さんは顔も名前も晒され、今なおネット上で“事件の象徴”として扱われ続ける。
「刑期を終えた加害者は守られ、犠牲になった少女だけが晒され続ける」
そんな不条理を想起させる今回の出来事は、海外発信者による「二次加害」の典型例だとして、多くのユーザーが強い憤りを示している。
被害者の尊厳を取り戻すために――問われる配信者の倫理
この問題の本質は、単なる“不適切な演出”ではない。
被害者の人生と苦痛を“エンタメ”として消費する構造が、SNS時代のど真ん中で起きていることだ。
「悪意がなかった」では済まされない。想像力の欠如と倫理意識の欠落が結びつけば、どんな言葉も無力になる。
YouTubeやInstagramといった巨大プラットフォームは、再発防止のために明確なガイドラインを設ける必要がある。制作チームにも、映像表現の裏に潜む“誰かの傷”を想像する責任が求められる。
被害者の写真を“背景”として使うことがいかに残酷か――その痛みを理解しない限り、同じ過ちは繰り返される。
世界が怒ったのは、日本の事件を冒涜されたからではない。
「命と尊厳を消費する文化」を見過ごしてはいけないと感じたからだ。
Nessie Judge氏の行為は、被害者の尊厳を奪い、エンタメの名のもとに暴力を正当化する行為だった。
その事実を直視することこそ、真の“再発防止”の第一歩である。



