
声優・梶裕貴(40)に関する“誤情報”が再びネット上で波紋を広げている。所属事務所ヴィムスは10月6日、公式SNSを通じて「事実無根」とする声明を発表。あわせて「誹謗中傷報告専用フォーム」を開設し、悪質な投稿の通報を呼びかけた。
声明では「不貞行為などの公序良俗に反する行為を一切行っていない」「趣味嗜好などに関する揶揄も全くの事実無根」と明言。SNS時代の噂拡散に、事務所が法的措置を辞さない強硬姿勢を示した。
広がる“虚偽情報”と声明の狙い
ヴィムスは公式Xで「インターネット上や一部SNS等において、事実と異なる内容や誤解を招く悪質な情報が流布されている」と報告。そのうえで「これらの情報はいずれも事実無根」と明言した。
さらに「本人は本来、このような話題に触れることを望んでおりませんが、親族にまで悪影響が及んでいる」と記し、被害が本人の枠を超えている現状を強調した。
声明は単なる抗議にとどまらず、具体的な行動計画を提示している。「すでに弁護士による厳正な調査により、違法と評価し得る投稿を複数確認」「発信者情報開示請求および法的措置を講じる所存」と、事務所としての法的対応の準備段階にあることを明かした。
さらに、ユーザーに向け「虚偽情報を拡散投稿している心当たりのある方は直ちに削除を」と呼びかけ、SNS利用者に自省と責任を促している。
国民的声優・梶裕貴とは誰か
梶裕貴は1985年東京都出身。2000年代後半から声優として頭角を現し、代表作にはアニメ『進撃の巨人』のエレン・イェーガー役、『七つの大罪』のメリオダス役、『僕のヒーローアカデミア』の轟焦凍役などがある。
そのほか『ギルティクラウン』『デュラララ!!』『鬼滅の刃』など、幅広い人気作に出演。若手から中堅世代を代表する存在として、複数の声優アワードも受賞している。
その端正な声質と演技力、そしてアーティスト活動やナレーションでも知られ、アニメファンにとっては「声で作品を支える実力派」の象徴的存在だ。
一方、プライベートでは2019年に声優の竹達彩奈と結婚を発表。声優界きっての“人気カップル”として注目を浴びたが、その直後から一部ネット上で根拠のない噂が拡散され、今回の声明発表へとつながった経緯がある。
「事実無根」とされた情報とは何か
声明文は具体的な投稿や噂を明示していない。しかし過去の報道やネット上の経緯を振り返ると、今回の対象とみられる“類型”は浮かび上がる。
最も拡散力が大きかったのは、結婚前後に浮上した「不倫・二股疑惑」だ。梶は竹達との結婚発表後、一部SNSで「別の女性声優と関係していた」「交際時期が重なっていた」などの書き込みが急増。中には内田真礼や花澤香菜の名前を挙げた憶測記事もあり、ゴシップサイトが“関係匂わせ”を掲載した。
しかし、これらは信頼できる証拠を伴っていない。オリコンニュースは当時、「道徳上不誠実な関係、趣味嗜好の強要等、噂されているような事実は一切ございません」とするヴィムスの声明を報じており、事務所はこの時点で明確に噂を否定している。
次に挙げられるのが、趣味・嗜好や性格に関する揶揄や誤情報である。
匿名掲示板では「恋人に趣味やファッションを強要していた」などとする書き込みが散見されたが、これについてもヴィムスは「趣味嗜好の強要等の事実は一切ない」と公式に否定。今回の声明は、こうした“嗜好揶揄”を改めて打ち消す意図があるとみられる。
噂の発生源と拡散構造
取材を進めると、これらの噂の多くは匿名掲示板やゴシップ系サイトが発火点となり、まとめブログやSNSで二次拡散した形跡がある。
投稿の大半は匿名で、裏づけとなる証拠写真や一次ソースが存在しない。中には過去の共演シーンやインタビューを切り貼りして“匂わせ”構成にしたものもあり、半ば創作的な内容が目立つ。
こうした噂は瞬間的に拡散する一方、訂正や削除がほとんど行われないまま情報が独り歩きし、「半永久的に検索で残る」構造を持つ。
事務所が通報フォームを設けた背景には、この情報の残留性と拡散速度への危機感がある。
法的措置の現実味と今後の展開
声明によると、すでに複数の投稿について「違法と評価し得る」と弁護士が判断している。
名誉毀損罪や侮辱罪、民法上の不法行為(民法709条)などが想定されるほか、SNSプラットフォームへの発信者情報開示請求も進める構えだ。
近年では、俳優や声優が匿名投稿者を特定して訴訟を起こす事例も増えており、ヴィムスの方針は十分現実味を帯びている。
“炎上社会”におけるリテラシーの責任
声明の締めくくりには「事実確認のない情報に惑わされず、冷静なご判断を」と記されていた。
ネット時代の誤情報は、発信者だけでなく“拡散者”にも責任が及ぶ。虚偽情報のリポストや引用が、結果として名誉毀損に加担するケースも少なくない。
梶のケースは、人気声優という公的立場をもつ人物に対し、憶測と揶揄がいかに容易に拡散し得るかを象徴している。
ヴィムスの声明は、個人攻撃の連鎖を止める“防波堤”としてのメッセージでもある。通報フォームの設置は、声優業界としても異例の強い対応だ。
誤情報の時代において、一次情報を確かめる姿勢が、いま改めて問われている。