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ツクルバ村上浩輝 消えたKENZO動画とVENZAITEN CAPITAL 中野拓磨訃報の真偽 コンサル報酬疑惑の行方

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ツクルバ村上さん
ツクルバ村上さん(コーポレートサイトより)

9月12日。ツクルバ(東証グロース2978)は「一部インターネット上の発信情報に関する調査結果」を適時開示した。表向きは冷静なリリースだが、背景をたどるとじわじわと闇の輪郭が浮かび上がってくる。

中古リノベ住宅プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を軸に、急成長を遂げてきたベンチャー企業。その名が、ユーチューバーの動画とSNSの噂の渦に巻き込まれている。

 

ツクルバとはどんな会社か

ツクルバは2011年創業。中古マンションにリノベーションを施し、「一点物」としての価値を訴求する「カウカモ」を成長エンジンにしてきた。物件紹介のメディアから仲介、設計、リノベ、住み替え支援に至るまで、従来分断されてきた不動産サービスを一気通貫でつなげた点に特徴がある。

2019年に上場、足元では会員数50万人を突破し、黒字転換も果たした。業界の新星として光を浴びていた矢先、予期せぬ「疑惑報道」が舞い込んだ。

 

発端は6月のKENZO動画 そして不可解な削除

きっかけは暴露系ユーチューバーのKENZOの動画だった。2025年6月に公開されたその内容は、とある地方中小企業オーナーとVENZAITEN CAPITALの中野拓磨氏との企業間取引トラブルを軸にしたもの。VENZAITENCAPITALは、京都を中心に「最年少最大手収益不動産デベロップメント」を自称していた企業である。代表の中野はその爽やかな風貌と共に軽快な語り口でYoutuberとしても一定の人気を得ていた。

KENZOが投稿した動画は、中小企業オーナーがこのVENZAITEN CAPITALをM&Aで購入し、子会社化したはいいが、売上の一部を過少に申告され、詐欺的行為をはたらかれたと訴える類のものだった。KENZOとともに中野たちのM&A詐欺疑惑を追求する動画だったが、動画のなかでツクルバ元代表・村上浩輝氏の名前もスキームの加担者として開示されたのだ。

仲介手数料ゼロを掲げるツクルバの裏で、創業者村上の資産管理会社にコンサル料が流れていたのではないか。そんな“裏金スキーム”を示唆する語り口はセンセーショナルだった。だが動画は当時一部で話題となったものの、さして炎上することなくほどなく削除される。

なぜか。おそらくKENZOとの間で示談が成立したのか、あるいはさらなる火種を回避するためか。視聴者の想像は膨らみ、疑念は逆に深まっていった。

 

7月に浮上した“訃報情報” SNSが暴走する

じつは、KENZOが動画を削除した理由は、示談とも言われるが、当事者であるVENZAITEN CAPITALの中野にまつわるある噂も関連していると推測される。

事態がさらに揺れ動いたのは7月のことだった。SNSで「中野拓磨が亡くなった」との怪情報が拡散したのだ。兄貴分を名乗るジェムケリーグループホールディングス代表の中野猛さんが投稿し、「心ない言葉に追い詰められた」との趣旨をにじませた。実際、中野さんは8月の投稿でも弟の中野拓磨を可愛がっていた様子が伺える。

 

しかし、不幸な出来事と受け止められる一方で、彼は“疑惑の渦中の人物”であったことも事実。過去にも数件のM&A詐欺を働いてきたのではないかと噂される人物であり、通例で考えても、人は事実無根であれば戦う道を選ぶことが多い。少なくとも自己弁護を試みて戦ったうえで、舞台から去ることはあっても、最初から白旗をあげるというのはあまり例を見ない。そういった行動から見ても、中野自身一定の疚しさを抱えていたのではないか。そんな憶測も、軽くささやかれている。

とにかく、真偽は未確認のまま、噂だけが拡散し、事件性を帯びた空気感を強めていった。

 

9/12適時開示が示したもの 「不正関与なし」

こうした憶測が飛び交う中、ツクルバが9月12日に村上の関与についての適時開示をする。出した結論は「元代表や役職員の不正関与はなし」というものだった。社内調査委員会(社外取締役と外部弁護士で構成)が3か月近く調べた結果、動画で示唆された契約偽造や詐欺的行為への関与は確認されず、会社が収益を失った事実もないと明記された。

ただし村上氏の資産管理会社が売主から「案件組成」業務としてコンサル報酬を受領していた事実は認められた。金融機関との交渉や販売準備などで、競業や特別背任には当たらないと結論づけられたが、宅建業法上の疑義や未報告といった統治課題は指摘された。

 

村上氏の辞任とガバナンス強化、SNSの反応は?

村上氏は代表取締役を辞任し、報酬50%返上やSO放棄などで責任を示した。ツクルバは社外取締役を過半数とし、議長も社外とする体制強化を発表。リスクの大きい契約は社外中心の委員会に付すなど、再発防止策を急いでいる。

一連の疑惑に対して、SNS上では鋭い声が噴出している。

 

「問題がないと言うなら、なぜ辞任する必要があるのか」「違法ではなくとも道義的に問題があるなら説明が要る」「登記簿に他の役員名があるのはどういうことか、ガバナンスとは何か」「この取引が資産管理会社名義で受託された要因として、村上が同資産管理会社の経営を全面的に親族に委ねており、十分な監督が行われていなかった実態が確認されました。 って記載あるんだけど法人登記簿に執行役員の小池氏の名前があるのはなぜ?」

中には、「仮に仲介ゼロの裏で2000万円のコンサル料を受け取っていたとしたら、それを証明してほしい。受け取っていないなら潔白を示すべき」といった直接的な指摘もある。

こうした問いに報告書は答えきれてはいない。会社としては「不正関与なし」の結論を示したものの、疑念を払拭するには至っていないのが現実だ。SNSの声が鋭く突き刺さるのは、まさにそこに説明責任の空白があるからだろう。

 

問われる“企業のふるまい”

調査は「違法ではない」と線引きを示した。だが、仲介ゼロの裏で創業社長の資産管理会社が報酬を受けていた“見え方”は、投資家や顧客にとって重い。SNSでは「説明責任は十分か」との声も根強い。訃報やM&A詐欺の噂など真偽不明の断片が飛び交う中で、上場企業に求められるのは法令順守を超えた「ふるまいの適正」だ。

動画時代、噂は一夜で拡散し、真実と虚像を飲み込む。9月12日の適時開示は、ひとつの答えを示したに過ぎない。ツクルバが今後どこまで透明性を担保し、レピュテーションを回復できるか。

試されるのは、企業統治の実装力そのものである。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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