
猛暑の夏、新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。厚生労働省の最新集計では新規患者数が8週連続で増加し、各地で再び医療機関の受診者が増えている。特に注目されるのが、オミクロン株から派生した変異型「ニンバス」だ。強烈なのどの痛みを特徴とするこの株の流行を背景に、専門家は「社会の警戒心の薄れ」が感染拡大を後押ししていると警鐘を鳴らしている。この記事では、今年の感染状況やウイルスの特徴、ワクチン、予防や治療法を整理する。
感染状況の推移
厚生労働省によると、2025年8月10日までの1週間に全国約3000の医療機関から報告された新型コロナ新規患者数は2万3126人に達し、前週より1761人増加した。1医療機関あたりの平均患者数は6.13人で、8週連続の増加となっている。
お盆の人の移動に加え、酷暑によるエアコン利用で室内の換気が滞り、感染拡大に拍車をかけているとみられる。
新たな変異株「ニンバス」
現在流行しているのは、オミクロン株から派生した変異型「NB.1.8.1」、通称「ニンバス」である。特徴的な症状は「カミソリをのみ込んだような強烈なのどの痛み」とされ、従来株とは異なる体感的な苦しさが報告されている。
専門家によれば、警戒心の低下により発熱や咽頭痛を訴えても受診や検査を避ける人が増え、知らぬ間に周囲へ感染を広げているケースも少なくない。
ワクチンと治療薬の現状
新型コロナワクチンは引き続き重症化予防に有効とされる。現在はオミクロン株系統に対応した改良ワクチンが自治体や医療機関で接種可能で、高齢者や基礎疾患を有する人を中心に接種が推奨されている。
治療に関しては、軽症者には対症療法が中心となるが、重症化リスクが高い患者には抗ウイルス薬や中和抗体薬の投与が行われている。ただし、変異株によって薬剤の効果に差が出る可能性があるため、厚労省は継続的な監視を進めている。
感染予防の基本
厚労省は、引き続き以下の基本的な感染症対策を呼びかけている。
- 室内の定期的な換気
- こまめな手洗いとアルコール消毒
- 混雑時のマスク着用
- 発熱やのどの痛みなど異変を感じた際の早期受診と検査
社会全体として集団免疫が一定程度形成されているとされるが、依然として高齢者や基礎疾患を持つ人を中心に、流行期には月4000人規模の死亡が報告されている。若年層においても後遺症による生活や就労への影響は現実の問題であり、油断は禁物である。
専門家の警鐘
昭和医科大学医学部名誉教授の二木芳人氏(臨床感染症学)は「すでにコロナはかつてのような社会全体を揺るがす脅威ではない。しかし決して軽視できない感染症であり、今なお生命と生活を奪う力を持っている」と警鐘を鳴らす。