
光と音、影と静寂を操り、巧みに演出して空間を彩る。
照明を中心とした演出を通じて私たちの日常に華やかさを加えているのが、株式会社ラセンス(以下、ラセンス)だ。これまで、全国の公共機関や商業施設のライトアップやイルミネーション、舞台照明などを幅広く手がけてきた。
創立から20年目を迎えた同社は、これまで培われた知見と確かな技術力を活かして、他社がしないような演出を生み出し続けている。代表取締役の兼子慎平氏の照明との出会いや、手がけてきた仕事、これからへの思いについて伺った。
見て、聞いて、体験して楽しむ。ラセンスが生み出す光の演出
空間を演出し、私たちの日々の暮らしに彩りを与えてくれる照明。アーチ型でトンネルのように連なったロマンチックな明かり、広場で絨毯のように一面に広がる幻想的な光、街を照らすライトアップ、パレードのきらびやかな光…。暗闇を照らす色とりどりの光は、そこに新たな美しさを創り出し、たくさんの人々に感動やワクワクする気持ちを与えてくれる。身近なところで、私たちの心を楽しませてくれている存在だ。
そんな照明を巧みに演出して空間を彩るのがラセンスの仕事だ。ライトアップとイルミネーションを中心に、屋内・屋外問わず全国各地で演出を手がけており、これまでに新宿中央公園、金沢駅の鼓門などの公共施設の演出も担当している。
ラセンスが活躍の幅を広げている理由の一つが、照明で楽しませるアイデアを形にする知見と技術力だ。音楽・映像・噴水・ミスト・シャボン玉・煙・風・時間・天気予報・IOT・センサーなどさまざまな技術と組み合わせる、今までになかった新たな演出を生み出している。
カメラから情報を解析して光を制御したり、天気予報に合わせてその日の明かりの色を変えたり。そうした「見て楽しむ」という楽しみ方はもちろんのこと、「参加して楽しむ」演出も可能だ。
例えば、来場者がスマートフォンで選んだカラーがライトアップに反映されたり、ハートの明かりで相性占いができたり、人の動きに反応して光や音が出たり…。特に子どもたちに人気だったのが、おもちゃの銃を撃つとお化けが現れるゲームのような仕掛けだ。市販のおもちゃの銃を赤外線センサーで反応するように改造し、夏らしい仕掛けを創り出した。

こうしたアイデア力と、それを実際に形にできる技術力こそ、ラセンスの強みなのだ。「他の会社はやらないようなことをしている」と、兼子社長は話す。
この他に、音を聞きながら楽しむことができるような演出も。長野県の国営アルプスあづみの公園のイルミネーションは、広い公園内が沢山の光で彩られるのと同時に、音でその表情を変える演出が来場者に人気だ。
「それまでは飾って終わりだったイルミネーションに光の動きや音楽を取り入れて、お客様により楽しんでもらえるような演出や仕掛けを考えました。音楽のリズムやナレーションに合わせて細かく表現を切り替え、まるで番組を見ているかのような感覚で楽しんでいただけます」(兼子社長)

こうして、さまざまな施策を加えて新たな付加価値と個性を生み出しているラセンス。同社の施策は、明るく照らしたり、場を華やかにしたりするだけでなく、それによってにぎやかさを演出したり人を集めたりといった課題解決も兼ねている。それができるのも、創立から20年、さまざまな案件での経験と技術力が礎にあるからこそだ。
照明に魅了されて。ラセンスの原点
兼子氏と照明との出会いは、大学生の頃にさかのぼる。当時、入った演劇サークルでたまたま照明係になったことが始まりだったという。照明を通じて講演を手がける中で、照明の役割の大きさや、効果のダイナミックさに魅力を感じたと兼子氏は話す。
「照明一つで場面を変えられたり、人の気持ちを表現できたり…。ダイナミックな効果だと感じました。関わっていく中でどんどん光に魅力を感じるようになり、照明の世界の奥深さにはまっていきました」(兼子社長)
そうして大学生のうちは演劇や照明の世界にどっぷり浸かり、サークルだけでなく学外のプロからも登場人物の照らし方や場面ごとの演出方法などを教わっていた。
その後、大学を卒業すると大手広告代理店に入社。法人営業として企業のPR活動に従事していた。しかし、心の中には「もう一度照明に携わりたい」という思いが強くあったのだという。
「講演が終わった時のお客様の拍手や、スタンディングオベーションしてくださる人の姿。そんなお客様の高い熱量を覚えていて、もう一度やりたいという思いが心に残り続けていました」(兼子社長)
そうして兼子氏は退職を決意。当時、照明の仕事はあまり一般的ではなかったため、個人事業主として照明の世界に再び飛び込んだ。

当初は学生時代のつながりで舞台の照明の仕事をしていた中、ふとしたきっかけで大型テーマパークの電飾工事に関わることに。それからイルミネーションやライトアップの仕事も増えていき、舞台照明だけでなく商業施設、商店街、観光名所での照明などさまざまな案件に関わるようになっていった。
「私はそれまでの経験から舞台のシステムと、イルミネーションやライトアップの知見がありました。当時、両方のシステムに詳しい人が多くなかったこともあり、いろいろなお仕事をさせていただけるようになったんです」(兼子氏)
そうして舞台照明というきっかけから、イルミネーションやライトアップへとつながっていき、今のラセンスが作り上げられてきたのだ。
少しの驚きを加えて。喜びがつながる嬉しさ
これまでに転機となった出来事を教えてください。
大規模テーマパークでお仕事をさせていただいたことですね。ふとしたきっかけだったのですが、これが現在のイルミネーションやライトアップの仕事につながっているんです。何よりも、「お客様を喜ばせる」という演劇とは違った熱を感じた経験ができたことが大きかったと思います。それがなければ、今こうしてイルミネーションやライトアップの仕事をしていなかったかもしれませんね。また、テーマパークは表現がリッチで大胆ですから、ノウハウの面でも大きく成長した経験でした。
普段仕事をする上で大切にしていることは何ですか?
依頼してくださった方や、見ていただく方々に喜んでもらうことを何よりも大切にしています。そのためには、100%ではなく、少しの驚きを加えた115%のものを出すことが重要だと考えていまして。お客様の目的に合わせて私たちなりに“味付け”したご提案をすることで、「これもやってくれたのか」「こんなこともできるんだ」と、期待値を少し上回るような仕事をするよう心がけています。
仕事をする上での醍醐味を教えてください。
長野県の国営アルプスあづみの公園は10年以上ご一緒させていただいていて、もっと良くするためにはどうしたらいいか一緒に考えながら、長くお付き合いさせていただいています。
こうして長く続けていると、リピーターの来場者が増えてくるんです。その中で、最初に来た時は恋人だった2人が結婚して子どもを連れてくるようになったり、あづみの公園でプロポーズに成功したという方もいたりするんですよ。また、普段は離れたところに住んでいる家族が集まって一緒に来て「来年もまた来ようね」と楽しそうに話している様子を見ることもあります。
お客様が喜ぶそんな姿を間近で見られるのが醍醐味ですし、なによりも嬉しいです。

一人でも多くの人の喜ぶ顔を見たい。着実な積み重ねで成長を
全国各地でお仕事を手がけられていますが、その背景にはどのような思いがあるのでしょうか。
拠点は東京ですが、地方でも広く手がけていきたいという思いがあります。というのも、地方は反応がよりダイレクトに返ってくることが多いと感じていまして。おそらく、イベントが多い都会と比べて、地方は数も機会も限られるので、一度のイベントの存在感が濃いのではないかと思います。だからこそ、来場者から嬉しさや楽しさが強く伝わってきて、喜ぶ顔が増えている実感を得ていますし、大きなやりがいを感じているんです。
これまでほぼ全国でお仕事をさせていただいていますが、まだご一緒させていただいたことのない都道府県もあるので、一人でも多くの方の喜ぶ顔を見るために、さらに広げていきたいですね。
今後取り組みたいことや目標を教えてください。
いただいたお仕事を一つ一つしっかりこなすことも大切にしたいと思っています。
弊社は、企画からデザイン、設計、取り付けなど、限りなく実施に近いところまでを業務範囲としています。そのため、デザインやシステム、図面、パーツといった部分的な依頼にもお応えしてきました。
そうして私たちにできること一つ一つにきちんと向き合って真剣に取り組んできたことで、それが積み重なって次につながるという循環があったんです。そういうものをこれからも大切にしながら、取り組み続けていきたいと思います。
◎プロフィール
兼子 慎平
株式会社ラセンス 代表取締役
◎会社概要
会社名:株式会社ラセンス
住所:〒162-0801 東京都新宿区山吹町363 野村ビル1F
URL:https://lasens.com/company.html
創立:2005年7月