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なぜNHK地方局のアナウンサーは垢抜けないのか。画面の向こうに見える“見え方の格差”

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東京と地方のアナウンサー
DALLーEで作成

全国ニュースが終わり、地方局のローカルニュースに切り替わるその一瞬。画面に映し出されたアナウンサーの“雰囲気”に、思わず視線を止めた経験はないだろうか。東京・渋谷のスタジオから発信されるアナウンサーたちは、どこか研ぎ澄まされた印象を放つのに対し、地方局の画面には、どこか野暮ったさや“惜しさ”がにじむ。その違和感は、なぜ生まれるのか。制度と文化の構造から、その理由を静かに紐解いてみたい。

 

 

東京と地方、画面に映る“空気”の違い

NHKのアナウンサーは、一般的な民放とは異なり、契約制ではなく正職員として採用され、全国転勤を前提としたキャリアを歩む。初任地は地方局が多く、数年ごとに異動を繰り返し、経験を積んだ者が東京本局に異動していく。そうした仕組みは周知のとおりだ。

それゆえ、本来であれば「東京の洗練されたアナウンサー」が地方局に登場することもあるはずである。だが、現実には画面を通してその“違い”がはっきりと可視化されている。東京のスタジオでは、衣装、ヘアメイク、表情、話し方、全体の空気感にいたるまでが調和し、「画面の完成度」を構成する。視聴者はそれを「信頼」として受け取る。

一方、地方局の放送に切り替わると、何かが変わる。服装の色味はくすみ、ジャケットのシルエットにはやや無頓着さがにじみ、髪型もどこか手作業の“がんばり”が見える。表情も画面のテンションに対して微妙にずれているように映ることがある。

「誰が悪いわけでもない」。だが、この“差”は確かに存在する。

 

東京にはあるものが、地方にはない

この違いは、本人の能力やセンスの差によってのみ生まれているわけではない。むしろ重要なのは「環境の差」である。

東京のNHKには、スタイリストやヘアメイク、カメラアングルを調整する専門のスタッフが常駐している。出演者の衣装は番組のトーンに合わせて選ばれ、肌の色味や髪型まで含めて「画面の一部」としてコーディネートされる。背景美術、照明、音響のバランスも繊細に整えられており、アナウンサーはその空間に「なじむ」ことで、より洗練された印象を纏う。

一方、地方局ではその多くがセルフスタイリングである。衣装は私服、ヘアメイクも自前、メイク室さえ存在しない局も少なくない。背景の装飾もシンプルで、照明設備は最小限に抑えられている。

この構造的な非対称性が、“見た目”というもっとも分かりやすい形で画面に反映されてしまうのだ。

 

“親しみやすさ”が求められる現場

また、地方局のアナウンサーには、ローカルならではの“空気を読む力”が求められる。たとえば、強い主張を感じさせる色や、トレンド感のある服装は、地域によっては「浮いている」「派手すぎる」と見なされることもある。結果として、ベージュ系のカーディガンや、控えめな色合いのワンピースなど、どこか“無難な装い”が選ばれるのだ。

これは一種の「自己検閲」でもあり、「親しみやすさ」への配慮でもある。派手すぎず、威圧感を与えず、地元に寄り添う印象を持たれること。そうした“求められる像”が、ファッションや話し方にまで影響している。

結果として、東京のアナウンサーとは異なるベクトルの“最適化”が行われていると言える。

 

アナウンサーが体現する「組織の顔」

アナウンサーの見た目や話し方は、そのまま「組織の顔」として視聴者に届く。だからこそ、地方局の印象がそのままNHK全体のイメージにつながるということもまた、忘れてはならない。

地方で働くアナウンサーの努力や実力が、見た目という表層の印象だけで過小評価されるのだとすれば、それは制度の設計にも課題があると言えるだろう。画面の“差”は、単なる印象の問題ではない。公共放送としての公平性や全国ネットワークとしての一体感にも、静かに問いを投げかけている。

 

画面の違和感を見過ごさないまなざし

地方局のアナウンサーが“垢抜けない”のではない。むしろ、そう見える仕組みが静かに組み込まれている。視聴者が感じるその違和感は、単なる偶然ではない。制度、文化、予算、期待値……、それらが複雑に絡み合い、画面という“出口”に現れているにすぎない。

公共放送としての役割を全うするならば、東京と地方の間に横たわるこの「見え方の格差」こそ、向き合うべきテーマのひとつである。

 

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ライター:

広島県在住。福岡教育大学卒。広告代理店在職中に、経営者や移住者など様々なバックグラウンドを持つ方々への取材を経験し、「人」の魅力が地域の魅力につながることを実感する。現在「伝える舎」の屋号で独立、「人の生きる姿」を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。​​https://tsutaerusha.com

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