
三井住友カード株式会社(東京都江東区)は6月20日、手塚プロダクション(東京都新宿区)と共同で展開する社会貢献型クレジットカード「アトムカード」による、2024年度の寄付金実績を公表した。発表によると、当年度の寄付金額は約193万円。寄付先には「全国児童養護施設協議会」が選ばれ、施設に暮らす子どもたちの自立支援や生活環境の改善に充てられるという。
これにより、カード発行開始から21年となる累計寄付額は約6,638万円に達した。カードの年間利用額に対し0.3%が自動的に寄付される仕組みで、寄付は毎年4月、アトムの“誕生月”にあわせて行われている。
“子どもたちの未来をつくる”アトムカードの理念
「アトムカード」は、2003年に手塚治虫作品の人気キャラクター「鉄腕アトム」を冠して誕生した。カードの理念は、原作者・手塚治虫氏が生涯をかけて描いた“子どもたちの夢と未来”という思想を体現したもので、発行時から一貫して寄付型クレジットカードというユニークな形式をとっている。
寄付先の選定は、三井住友カードと手塚プロダクションの代表者で構成される「アトムカード委員会」により行われ、「子どもたちの夢をかなえる活動」や「子どもたちを救う活動」に合致する団体が毎年選ばれる。これまでに支援先となったのは、阪神・淡路大震災遺児支援団体、三宅村教育委員会、あしなが育英会など。災害支援から児童福祉まで、多岐にわたる取り組みが行われてきた。
カード利用で誰でも社会貢献 3,300名の“小さな寄付”が生んだ大きな成果
「アトムカード」の年会費は本会員が1,100円(税込)、家族会員が330円(税込)と手頃な設定。2025年2月末時点の会員数は約3,300名に上り、そのひとりひとりの日常的なカード利用が、これほどの支援活動につながっている。
こうした「消費による寄付」は、特別な負担や意識を必要とせず、社会課題に向き合うきっかけを消費者に提供するという点で、極めて有意義な仕組みといえる。買い物や支払いといった日常行動がそのまま社会貢献になる設計は、いわば“無理のない善意”の形ともいえる。
三井住友カードでは、「今後もこのような取り組みを通じ、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に寄与していく」としており、カード利用の意義はますます拡大していくと見られる。
海外でも拡がる“寄付付きカード”の潮流
寄付型クレジットカードは、海外でも先進的な事例が存在する。たとえば、アメリカの非営利団体「Charity Charge」は、自らが発行するMastercardブランドのカードを通じて、ユーザーが選んだNPOや学校などに寄付できる仕組みを展開している。利用額の1%がユーザー指定の団体へ寄付され、寄付先は常時1.5万団体以上から選ぶことが可能だ。
またイギリスでは「Affinity Card(アフィニティカード)」と呼ばれる、大学や動物保護団体と提携したカードが普及しており、利用者の購入に応じて団体に還元が行われる。いずれも「使えば使うほど、社会に還元される」という設計思想であり、近年ではサステナブルな消費行動を促すツールとして再評価されている。
共感と参加の輪を広げて
今回の「アトムカード」の寄付発表は、社会貢献を日常に取り込む手段としてのクレジットカードの新たな可能性を再確認させるものとなった。募金やボランティアに比べて、無意識的にでも継続できる「寄付付き消費」は、多忙な現代人にとって、最も参加しやすい社会貢献のかたちのひとつである。
こうした“身近な寄付”の文化が広がることで、社会課題に対する関心が一層高まり、持続可能な社会に向けた市民の自発的な行動が生まれることが期待される。