
株式会社エス・ピーパック(東京都千代田区)は6月18日、たこ焼きを主力とする大阪・道頓堀の名店「たこ家道頓堀くくる」向けに、卵の殻を再利用した環境配慮型紙「CaMISHELL(カミシェル)」を使用した紙皿の提供を開始したと発表した。この取り組みは、2025年4月に開幕した大阪・関西万博で出店中のくくる4店舗での導入を皮切りに、順次全国の店舗に展開される。
万博会場内での使用を通じて、サステナブルな紙器導入の象徴となるこのプロジェクトは、卵殻を活用した資源循環の一環として注目されている。たこ焼きに液卵を多用する業態特性を持つ「くくる」にとって、原料調達からリサイクル製品利用までが一体となった“循環型フードビジネス”を体現する動きともいえる。
卵の殻が未来を変える? 「CaMISHELL」で脱炭素とパルプ削減へ
導入される「CaMISHELL」は、三菱製紙やTouchcardなど4社が共同出願した商標で、産業廃棄物として処理される卵の殻を再利用してパルプに混抄した特殊な紙素材。これにより通常の紙製品に比べて焼却時のCO2排出を大幅に抑制できるほか、強度や薄さの調整が可能なため、包装紙や段ボール、緩衝材など用途も多様だ。
エス・ピーパックでは、社内の名刺にも同素材の使用を2023年から開始しており、今回の紙皿導入はその実用展開を加速する象徴的な一歩となる。加えて、昨年からは「グリーンナノ」技術によるCO2削減袋の提供も行っており、環境配慮型商品のバリエーションを着実に広げている。
万博の理念に呼応した「くくる」の挑戦
今回の取り組みの舞台となる大阪・関西万博では、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、脱炭素や資源循環に関する先進的な技術や仕組みの展示が行われている。たこ料理専門店「くくる」は、この理念に賛同するかたちで環境対応型の紙器を導入。業態にとって不可欠な液卵の副産物である卵殻を活用した器を使用することで、来場者に循環型社会の可能性を体感させる構成となっている。
くくるを展開する白ハト食品工業株式会社(大阪府守口市)は、大阪・道頓堀に本店を構え、「たこ焼マイスター」によるふわとろ食感の大たこ入りたこ焼で知られる老舗。今回の紙器導入を通じ、食文化の継承だけでなく、次世代への環境負荷低減への責任も同時に果たす姿勢を明確にした。
エス・ピーパック、30周年に挑むサステナビリティ戦略
エス・ピーパックは、包装資材を中心とするパッケージ商社として1995年に創業。小売業向けのショッパーや店舗資材の開発に加え、100%再生素材「RETEXPET®」などの環境対応型素材の開発・展開にも注力してきた。
30周年を迎える今年、業界に先駆けて紙器領域における循環型素材の導入を進めたことは、同社のサステナビリティ推進の象徴ともいえる。今後もアパレルや食品業界を中心に、再生可能資材を活用したパッケージ商品の提案を強化する方針を示している。