
2025年5月は、新入社員の職場定着支援をはじめ、年度更新や賞与計算といった定例業務が重なる重要な月である。加えて、法改正による新たな義務や社会環境の変化も、実務対応を複雑にしている。人事労務担当者に求められるのは、幅広い知識と、対応の優先順位づけである。
4月を振り返る――“五月病”と制度見直しの必要性
新入社員ケアと「五月病」への備え
4月に配属された新入社員のなかには、環境の変化による不調を訴える者も少なくない。とくに「五月病」と呼ばれる精神的な症状は、退職や休職のリスクを高めるため、早期対応が求められる。人事部門は、セルフケア・ラインケアの重要性を社内に周知し、各職場での見守り体制を整えるべきである。
試用期間の運用は「仕組みと実行」の両輪で
制度として設けられていても、実際には形骸化している例が多いのが試用期間の実情だ。業務状況を評価する仕組みを明文化し、現場の上司からのフィードバックを制度的に取り入れることが、本採用後のトラブル防止にもつながる。
急激な賃金上昇が招く「中堅離職」の波
ベースアップが続くなか、若手社員の待遇改善は進む一方で、中堅層との賃金格差が縮小し、不満が蓄積されつつある。ジョブ型制度への移行も含め、自社にふさわしい人事制度の再構築が急がれる。政府がまとめた「ジョブ型人事指針」はその参考資料となる。
条例で進む「カスハラ対策」の制度化
東京都・北海道・群馬県では、4月1日に「カスタマーハラスメント防止条例」が施行された。企業には、苦情窓口や対応マニュアルの整備が求められる方向で、今後の法改正への備えも視野に入れる必要がある。厚生労働省の対策マニュアルは実務支援に有効だ。
5月に取り組むべき4つの実務項目
労働保険の年度更新手続き
今年の申告期間は6月3日(月)から7月10日(木)までと定められている。前年の賃金集計作業を早めに終えておくことが、正確な申告と納付を可能にする。
夏季賞与の支給準備
人事評価や面談の実施、賞与額の算定など、支給準備は段階的な進行が必要となる。クラウド型の人事システムの導入も、業務効率化に貢献する。
障害者雇用納付金の申請対応
障害者の法定雇用率を下回る企業は、5月15日までに申告義務がある。常用労働者が100人を超える企業では、対応が遅れないよう注意したい。雇用支援制度との連携も含め、採用戦略の見直しが求められる。
改正安衛則による熱中症対策の義務化
2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、企業は体制整備、手順書の策定、社員教育が義務化される。2024年の死傷者は1,195人にのぼり、対策強化の必要性は明白だ。
まとめ:実務と制度をつなぐ「人事の要」
人事・労務部門の役割は、「社員の状態を見守る目」と「制度の管理者」としての責任を両立させることにある。新年度の定着支援と制度対応の双方に力を入れ、5月の業務を乗り越えていきたい。
大事なポイントを簡潔にまとめると:
ポイント | 内容 |
---|---|
五月病対策 | セルフケア・ラインケアの周知と早期対応が重要 |
試用期間の運用 | 評価制度の実行とフィードバック体制を整備 |
賃金制度の見直し | 中堅層の不満対策にジョブ型制度も選択肢に |
カスハラ対策 | 相談窓口・マニュアル整備など条例・法改正に備える |
年度更新 | 賃金集計は5月中に、6月〜7月の申告に備える |
夏季賞与 | 人事評価・面談を含めた準備を効率的に進行 |
障害者雇用納付金 | 5月15日までに申告、採用活動も早期検討を |
熱中症対策 | 改正安衛則の施行に備え、社内体制を事前に整備 |