大阪・関西万博で“絶対禁色”着用の演出に非難集中 皇室の伝統に「無知と無配慮」の声も

4月26日、大阪・関西万博のステージで行われた「日本の宮廷装束文化」ショーが、SNS上で激しい批判にさらされている。問題となっているのは、一般人のモデルが天皇陛下のみが着用を許される「絶対禁色(ぜったいきんじき)」を身にまとって登場した演出だ。
このショーは、京都きもの学院京都本校が主催し、共催に衣紋道 雅ゆきさんが名を連ねた。十二単などの伝統衣装が披露される文化的な催しとして企画されたが、その中に「黄櫨染(こうろぜん)」を一般人が着用するシーンが含まれていたことで、批判の声が殺到した。
SNS炎上:天皇陛下だけがお召しになれるものを……
《やっていいことと悪いことをわきまえてください》《天皇陛下だけがお召しになれるものを、なぜ民間人が着て見せ物に?》といった声が、X(旧Twitter)などで拡散され、ショーの様子を投稿した主催者のアカウントには、文化軽視と無知を指摘するリプライが相次いでいる。
皇室ジャーナリストによれば、「黄櫨染は古代から続く“絶対禁色”であり、天皇陛下のみが着用を許された色。これを一般人が身につけるのは、伝統と敬意を大きく損なう行為」だという。
しかも、同万博の名誉総裁には秋篠宮さまが就任されており、皇室と縁の深い国家的事業の場で、こうした無配慮な演出があったことに対し、「文化への無知と敬意の欠如」との批判が高まっている。
「絶対禁色(ぜったいきんじき)」とは何か?

「絶対禁色」とは、日本古代の律令制に由来する身分制度に基づく色の使用制限の中でも、最上位の禁忌とされる色である。色彩によって身分を明示する制度は、8世紀の律令体制下で確立され、官位に応じて着用できる色が厳密に区分されていた。
中でも特に尊ばれていたのが、「黄櫨染(こうろぜん)」と「黄丹(おうに)」の2色である。

- 黄櫨染(こうろぜん):山櫨の樹皮と蘇芳から染められる、深みのある金茶色。天皇の即位礼などで着用される袍の色で、天皇以外の着用は一切認められていない。
- 黄丹(おうに):朝日を象徴する赤橙色で、皇太子の袍のみに使用が許されている色。
この2色は「禁色(きんじき)」の中でも、いかなる官職に就いても着用が不可能な“絶対禁色”とされる。令和の現代においても、これらの色は皇室儀礼の場において厳格に守られており、文化的・象徴的価値を持ち続けている。
本来、「禁色」の制度は律令制の下で服制により制定されたもので、「濃紫」が最上位、「黒」が最下位の色として定められていた。色の濃さや染料の希少性も、その地位の高さを表す指標であり、色彩が身分を示す社会秩序の一環だった。
現代においても「絶対禁色」は儀礼・文化の文脈で厳格に尊重されており、その意味を理解せず安易に用いることは、伝統と皇室への敬意を欠くものとみなされかねない。今回の騒動は、その象徴的な事例となった。
「色のタブー」をめぐる現代日本の分断
一方で、今回の騒動をめぐっては、一方的な批判だけではなく、異なる角度からの意見も目立った。SNS上には、以下のような投稿も見られる。
《色の問題にここまで過剰反応するのは、文化の押し付けでは?》
《むしろ、こうして伝統の色が紹介されることで、日本文化の魅力が広く知られるきっかけになったのでは》
《誰が着たかより、どのように見せたかに注目すべき。細かすぎる批判が、かえって閉塞感を生んでいるのでは?》
こうした意見は、現代日本における「文化の継承」と「表現の自由」のバランスという根深いテーマを浮き彫りにしている。「伝統を守る」べきか、「伝統を開く」べきか。その対立は、SNS時代においてさらに先鋭化している。
ただ、《絶対禁色なんて知らなかった》《使っちゃいけない色があるなんて。勉強になった。》といった声も多く、今回の炎上もまた、日本文化の“見えづらかったルール”を広く可視化する契機となったという点では有益だったとも言えるだろう。