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吉本興業「令和ロマン」高比良くるま契約終了で浮かぶ“懐の深さ”喪失危機

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オンラインカジノ問題とコンプラ重視が奪う芸人の“逃げ場” 契約終了の一報と“史上初”の退所即復帰

令和ロマン
令和ロマン 吉本興業HPより

吉本興業は4月28日、オンラインカジノ賭博への関与で活動自粛中だったお笑いコンビ「令和ロマン」の高比良くるまとマネジメント契約を同日付で終了したと発表した。高比良は相方・松井ケムリ同席の公式 YouTube 配信で活動再開を表明し「退所と復帰が同時に決まるのは史上初」と自嘲交じりに語った。

会社側は「コンビは続行可」との条件を提示したが、2月の謝罪動画を無断で配信したことで「信頼関係が壊れた」と判断したという。朝日新聞をはじめ複数紙が同日夜に速報した。

 

コンプライアンス体制強化の帰結

吉本は2019年の闇営業騒動を境に反社会的勢力排除と内部統制を徹底してきた。岡本昭彦社長は当時「年二回だったコンプライアンス研修を増やす」と会見で明言し、ホットライン強化や外部弁護士との連携を進めている。

裏を返せば「面倒見のよい吉本」像は急速に薄れつつある。芸人の私生活までもチェックし、動画公開の可否まで統制する現在の体制は、従来の“緩い紐帯”とは対極にある。

かつて“堅気にもヤクザにもなれぬ”者のセーフティネットだった

戦前から吉本の舞台にはアウトロー気質の芸人が集まった。社会に居場所を失った者が芸を盾に食い扶持を得る「最後の砦」とも呼ばれた歴史は、岡八郎や横山やすしらの破天荒な逸話に象徴される。

ところが闇営業問題以降、所属芸人の違法行為には即時の契約解消や活動停止で対処するケースが相次ぐ。ウケ狙いの破天荒さが会社のリスクに直結する時代、吉本を吉本たらしめてきた“懐の深さ”は制度的に削り取られている。

 

トップスターと新鋭に生じる“温度差”

一方、ダウンタウンのような大黒柱クラスは、独断専行が噂になっても契約解除に至った例はない。興行収入と視聴率を担保するスターほど「広告リスクより経済メリットが勝る」と判断されやすい現実がある。

吉本が掲げる“コンプラ平等主義”は、興行資本主義の前で揺らぐ。今回、若手である令和ロマンに適用された「無断配信=信頼失墜」というロジックが、看板芸人にも等しく適用されるかは依然不透明だ。

 

SNSに広がる疑問とエール

SNS では山田邦子が「新しい才能を手放すのは惜しいが、歩合を取られず動きやすくもなる」と指摘し、同志社女子大の影山貴彦教授は「同様のケースで処分されなかった先例がある」と首尾一貫性の欠如を批判した。

ファンの間では「吉本はもはやセーフティネットではなく、上場企業並みの管理会社だ」との声も上がる。

 

“吉本らしさ”はどこへ向かうのか

芸人の自由闊達さと企業統治の両立は、テレビ離れと配信シフトが進む25年の芸能界で避けて通れない課題である。オンラインカジノ問題を契機に示された厳格路線は、ブランドを守る盾となる一方で、才能が羽ばたく余白を奪いかねない。今回の契約終了劇は、吉本興業が抱える二律背反――「懐の深さ」と「法令遵守」――が極限まで緊張する時代に突入したことを告げている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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