
身近な行動がゼロカーボンの第一歩に 全国で広がる地域主導の気候対策
4月中旬にもかかわらず、関東各地では30℃近い最高気温を記録するなど、季節外れの暑さに見舞われている。東京都心では19日、正午時点で29℃を超え、汗ばむ陽気となった。前日も気温は高く、春の穏やかな気候とはかけ離れた体感に、「夏日が早すぎる」「体がついていかない」といった声が相次いだ。
こうした極端な気象は、温暖化の進行と無関係ではない。気象庁の長期予報やIPCCの報告書でも、地球規模の気温上昇が日本の気候パターンを大きく変えつつあることが繰り返し指摘されている。
こうした気候変動への対策を地域から具体化しようとする動きが、今、全国に広がり始めている。埼玉県和光市のゼロカーボン宣言の実施を例に、温暖化対策についての理解を深める。
和光市、家電買い替えや宅配ボックス導入で最大3万円補助へ
和光市は、2050年までに実質的な二酸化炭素排出ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ宣言」を表明し、その実現に向けて具体的な支援策を講じる。対象となるのは冷蔵庫、エアコン、照明器具の省エネ製品への買い替えや、戸建て住宅における宅配ボックスの設置で、補助率は費用の8割、補助上限はそれぞれ1万〜3万円となっている。
市は2025年度の一般会計補正予算案に関連経費約1千万円を盛り込み、6月議会に提案。議決されれば8月からの制度運用を予定している。
再配達削減や森林整備との連携も
和光市の取り組みは、家電補助にとどまらない。市は、小川町、寄居町、東秩父村などと森林保全協定を結び、間伐や下草刈りといった整備作業を支援。これにより、吸収されたCO₂を市の排出量から差し引くカーボンクレジット方式を導入する。
また、東京ガスと連携し、企業や家庭向けに再エネ導入や省エネ型ライフスタイルを促進する啓発活動も展開している。
削減効果は限定的でも、持続可能な「第一歩」に
市が2021年度に排出したCO₂は約30万トン。省エネ家電1,000世帯分の削減効果は約390トンで、全体の0.13%程度にすぎない。だが、こうした小さな取り組みの積み重ねが、市民の意識を変え、より広い範囲での行動変容を呼び起こすことに意味がある。
宅配ボックスによる再配達削減効果(約60トン)や、森林整備による年間吸収量(最大50トン)を含めれば、その効果はさらに広がる。まさに「政策の種まき」であり、将来の施策拡充へとつながる試金石といえる。
各地で展開される温暖化対策 広がる連携と工夫
和光市のように、地域ごとの特性を活かした温暖化対策は全国に広がっている。国・自治体・企業・市民の各レベルで展開される代表的な施策を以下にまとめた。
温暖化対策の主な例(日本国内)
分類 | 施策名 | 内容の概要 |
---|---|---|
国の政策 | 地球温暖化対策推進法 | 自治体に温暖化対策実行計画の策定を義務化 |
国の政策 | 再生可能エネルギー導入(FIT・FIP制度) | 再エネ電力の固定価格買取制度、主力電源化へ |
国の政策 | カーボンプライシング(炭素税・排出量取引) | 化石燃料への課税や、東京都・埼玉県で排出量取引を導入 |
自治体の取り組み | ゼロカーボンシティ宣言 | 全国800以上の自治体が実質CO₂ゼロを目指し宣言 |
自治体の取り組み | 再エネ設備への自治体補助 | 太陽光パネル・蓄電池・EV導入に対する補助金交付 |
企業の取り組み | RE100・SBT参加 | 再エネ100%目標や科学的根拠に基づくCO₂削減目標を設定 |
企業の取り組み | カーボンニュートラル工場建設 | 再エネや自家発電でCO₂排出ゼロのスマートファクトリーを整備 |
交通・インフラ | EV・PHV導入促進 | クリーンエネルギー車両への補助金支給 |
交通・インフラ | 公共交通の電動化 | EVバスや燃料電池バスの導入、脱マイカー通勤の推進 |
市民生活 | 省エネ診断・エコポイント | エネルギー使用量の「見える化」、省エネ診断に応じた還元制度 |
市民生活 | エシカル消費・地産地消 | 地元産食材や旬の食材を選ぶことで、輸送由来のCO₂を削減 |
まとめ:気候変動に向き合う一歩を地域から
30℃に迫る4月の気温は、気候変動の現実を否応なく私たちに突きつけている。こうした変化に対し、地域からの小さな対策を積み重ねていくことが、やがて大きな変化を呼び起こす原動力となる。和光市の施策は、その「始まり」を象徴するものであり、全国各地に広がる環境行動の一つのモデルケースといえる。