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企業経営者を標的にした新手の振り込め詐欺、巧妙な手口とは?自分名義のカードで詐欺被害発生告げられ

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振り込め詐欺の犯罪者
振り込め詐欺の犯罪者のイメージ(DALL-Eで作成)

近年、SNSを通じて企業経営者を狙う巧妙な詐欺が拡散している。特にFacebookなどのプラットフォームでは、実際に被害に遭ったとされる人物が詳細な体験談を投稿し、注意喚起を促す内容が急増している。これらの手口は、経営者心理を巧みに突き、会社の資産や個人情報を奪うものだ。ここでは、代表的な2つの手口について詳しく解説する。

 

ケース①:警察・検察を装った「口座凍結振り込め詐欺」

この詐欺の手口は、警察官や検察官を名乗る人物から突然電話がかかってくることから始まる。ターゲットとなる経営者には、以下のようなストーリーが展開される。

ある経営者が電話を受けると、女性警察官を名乗る人物が冷静な口調で告げる。

「詐欺グループのリーダーを逮捕したところ、押収品の中にあなた名義のクレジットカードが含まれていました。状況を確認するために、渋谷警察署までお越しいただくか、電話での事情聴取に応じてください。」

突然の警察からの連絡に驚きつつも、経営者は「何かの間違いではないか」と思いながら、言われるがままに電話で事情を説明することにした。しかし、ここからが詐欺の本番となる。

電話口の女性警察官から事情聴取が始まるが、次第に警部を名乗る男性が登場し、さらに検察官を名乗る別の人物が加わる。彼らは次々と問い詰め、あたかも経営者自身が事件に関与しているかのような雰囲気を作り上げていく。

「あなた名義のカードで詐欺被害が発生しており、被害者が告発しています。そのため、逮捕状がすでに発行されています。」

さらに、LINEやSMSで送られてくるのは、裁判所が発行したかのように見える「逮捕状」の写真や、警察署のロゴが入った書類。これにより、経営者は心理的に追い込まれ、ますます冷静な判断ができなくなっていく。

ここで詐欺グループは次の一手を打つ。

「もしも逮捕されれば、あなたの会社の銀行口座は18ヶ月間凍結されます。そうなると、従業員への給与支払いができず、取引先との信用も失われるでしょう。」

経営者にとって、会社の資金が凍結されることは死活問題である。たとえ自身が身柄を拘束されたとしても、会社だけは守らなければならないという強い責任感が働く。

そこに、詐欺グループは「救済策」を提示する。

 

「我々はあなたを共犯者だとは考えていません。むしろ被害者と認識しています。そのため、警察の特別調査口座に一時的に資金を移せば、あなたの会社の支払いは継続できるよう手配できます。」

ここまで追い詰められた経営者は、「この提案に乗るしかない」と思い始める。だが、ふと冷静になり、「念のため検察に確認したい」と伝えると、態度が一変する。

「この電話を切った後、あなたが他の共犯者に連絡する恐れがあるため、警察の管理する口座は使わせられません。その場合、あなたは逮捕される可能性が高くなります。」

ここでようやく違和感を覚えた経営者が警察に確認したところ、これは最近急増している詐欺であることが判明した。もし「特別調査口座」に資金を移していれば、そのまま詐欺グループに全額盗み取られてしまうところだった。

この手口は、警察の権威を利用し、経営者の「会社を守りたい」という心理を巧みに操る高度な詐欺である。特に、電話の途中で人物が次々と変わり、本物の捜査のような雰囲気を演出することで、疑う余地を与えない仕掛けになっている。

 

ケース②:海外投資を持ちかける「助成金支援詐欺」

別の事例では、海外投資や政府の助成金制度を巧妙に悪用した詐欺が横行している。特に、企業経営者向けの「政府認定プロジェクト」や「海外展開支援」の名目で、魅力的な投資話が持ちかけられるケースが目立つ。

ある経営者は、Facebookの広告で「政府認定の企業支援プログラム」という投稿を見つけた。そこには、「政府助成金を活用し、海外での新規ビジネス展開を支援。成功率90%以上」との説明が記されていた。興味を持った経営者がフォームに登録すると、すぐに担当者から電話が入った。

「当プログラムは政府の支援を受けた正規のものです。助成金を受け取るためには、まず保証金として50万円を振り込む必要があります」

さらに、「助成金の申請には銀行の審査があるため、指定の口座で資金管理を行う必要がある。審査が通れば、1,000万円の助成金が受け取れる」という甘い言葉で誘導された。

一見、説得力のある話に思えたが、経営者が念のため政府の助成金関連の窓口に確認すると、そのような制度は存在しないことが判明。さらに、SNSで同様の被害を訴える投稿を見つけ、詐欺だったことに気づいた。

この手口は、特に中小企業経営者や個人事業主を狙い、助成金や補助金を餌にして巧みに資金をだまし取るものだ。実際には「保証金」などの名目で先払いを求め、振り込んだ後には連絡が取れなくなる。

 

詐欺被害を防ぐために

これらの詐欺に共通するのは、経営者の「会社を守りたい」「資金を確保したい」という心理を利用する点だ。以下のポイントに注意することで、被害を防ぐことができる。

  • 突然の警察や検察からの電話はまず疑う
    → 本物の警察は、突然の電話で事情聴取を行うことはほとんどない。不審な電話を受けたら、最寄りの警察署に確認すること。
  • 公式な助成金情報は政府の公式サイトでチェック
    → SNS広告やDMで案内された助成金や投資話には注意し、必ず公的機関のウェブサイトで確認する。
  • 「口座の凍結」「即時振込」「秘密厳守」を強調されたら要警戒
    → 詐欺師は、時間をかけずに判断させ、他人に相談させないよう仕向ける。不審な話は必ず家族や信頼できる人と共有する。

企業経営者は多忙であり、詐欺の手口を詳しく調べる時間がない場合も多い。しかし、一度冷静になり、第三者に相談することで、被害を防ぐことができる。SNSで流布する「警告投稿」を見た際も、単なる注意喚起として流すのではなく、身近な経営者仲間とも共有し、警戒を強めていくことが重要だ。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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