SNS炎上で浮上したAI疑惑、制作会社が緊急声明

カップ麺「マルちゃん 赤いきつねうどん」のショートアニメCMが、SNS上で激しい論争を巻き起こしている。話題の中心となったのは、女性キャラクターが頬を赤らめながら麺をすすり「おいしい」とつぶやくシーン。
この描写に対して、一部ユーザーから「性的な表現が含まれている」との指摘が上がり、さらに「生成AIを使用しているのではないか」との憶測も拡散された。
この状況を受け、広告制作を担当した株式会社チョコレイト(東京都渋谷区)は、2月21日に公式SNSで声明を発表。疑惑を真っ向から否定した。同社は「全ての制作過程において、生成AIは一切使用されておらず、プロのアニメーターとクリエイターによる手作業で制作された」と強調。さらに、表現内容も「クライアントである東洋水産と緻密な協議を重ねた上で、制作チームと共に創り上げたもの」と説明した。
誹謗中傷への警鐘とクリエイター保護の呼びかけ
声明では、SNS上での誹謗中傷にも強く言及。関係者への個人攻撃が続いている現状に対し、同社は「虚偽の情報の拡散や、関係者への誹謗中傷は名誉を著しく傷つけるものであり、決して看過できない」と厳しい姿勢を示した。
「クリエイティブに関するご意見は公式メールでお寄せいただきたい」と呼びかけ、特定の個人に対する中傷行為を自粛するよう訴えている。
SNS上で分かれる意見、根拠なきAI疑惑の拡散
この問題を巡り、SNSでは賛否が激しく分かれている。「映像を最後まで見たが、性的な表現は感じられなかった」とする声がある一方で、「不快に感じた」との意見も少なくない。しかし、特に注目を集めたのは「生成AI使用疑惑」であり、これに対して多くのユーザーが「根拠のない憶測に過ぎない」と指摘。むしろ、「アニメーターの技術力を称賛すべきだ」との意見も散見された。
株式会社チョコレイトとは?クリエイティブファームの全貌
広告業界からエンタメ業界へと進化を遂げた先鋭企業
今回の騒動で注目を集めた株式会社チョコレイトは、急成長している広告制作会社。2017年に渡辺裕介氏によって創業された同社は、広告業界大手博報堂でのキャリアを持つ渡辺氏の知見と経験を基に設立されたようだ。渡辺氏は、博報堂在籍時にテレビや雑誌などの多様なメディアを活用した広告プロデュースを担当し、その実績をもとに独立を果たしたということだろう。
さらに、チーフコンテンツオフィサーには、同じく博報堂出身で数々の国際的な広告賞を受賞してきた栗林和明氏が就任。彼の参加により、チョコレイトは業界内でも注目を集める存在となり、急速に成長を遂げた。
同社は「世界一たのしみな会社になる」というビジョンを掲げ、広告受託事業と自社IPプロデュース事業を両輪に展開。特に、オリジナルキャラクターの「ブルーハムハム」や「ラッコズ」はSNSで人気を博し、大手企業とのコラボレーションを次々と実現している。
チョコレイトの強みは若手クリエイターの挑戦を後押しする文化
同社の成長を支えるのは、若手クリエイターに早期から責任あるポジションを任せる独自の企業文化だ。YouTubeやTikTokといった新しいメディアプラットフォームでも積極的にクリエイティブを展開し、デジタル時代に適応した制作スタイルを確立している。
さらに、2026年公開予定の劇場アニメ「KILLTUBE」の制作も進行中で、国内外のエンタメ市場を視野に入れたグローバル展開を狙っている。
渡辺裕介氏のビジョン「世界一たのしみな会社」を目指して
渡辺氏が掲げるビジョンは過去のインタビューなどを読むと明白。「ディズニーやピクサーに匹敵するエンタメ企業を日本から生み出す」という壮大な目標を持ち、感動や驚きを届ける作品作りに全力を注いでいるようだ。
同社はただの商業的成功を追い求めるのではなく、「ピュアなクリエイティブ」を追求し続けることを理念として掲げている。今回の炎上騒動を受けても、その理念は揺らぐことなく、真摯にクリエイターと向き合い続ける姿勢を貫いている。
表現の自由とクリエイティブの未来
「赤いきつね」のCM騒動は、クリエイティブの自由と誹謗中傷の問題を改めて浮き彫りにした。株式会社チョコレイトが訴えるように、無責任な憶測や中傷は、表現の自由を脅かす深刻な問題である。健全な議論とクリエイターへのリスペクトが、今後ますます求められる時代となるだろう。