米国のドナルド・トランプ大統領は2月5日、女性スポーツ競技からトランスジェンダー選手を排除する大統領令に署名した。これにより、連邦政府の資金を受けるすべての学校や大学において、心と体の性が異なる選手の女性競技への参加が禁じられることとなった。さらに、外国のトランスジェンダー選手に対して入国ビザの発給を制限し、2028年に開催されるロサンゼルス・オリンピックでも同様の規制を適用すると表明した。
この決定に対し、女性アスリートらは支持を示し、「トランプ大統領ありがとう」と歓声を上げた。一方で、LGBTQ+の権利団体や人権擁護派からは、「科学的根拠に基づかない政治的判断」との批判が相次いでいる。
公平性をめぐる議論
トランスジェンダー選手の競技参加を巡っては、長年にわたり議論が続いている。従来、教育改正法のもとで性差別が禁じられており、トランスジェンダー選手も自認する性に基づいて競技に参加することが認められてきた。
しかし、近年は「身体的な優位性があるトランス女性選手が女子競技で不公平な結果を生んでいる」との指摘が強まり、今回の大統領令に至った。
プロランナーの川内優輝氏は、近年のスポーツ界における動きとして、ニューヨークシティマラソンなどで「ノンバイナリー」カテゴリーを新設し、男女と同額の賞金を支払うケースが増えていることをSNSで指摘。ただ、男子の優勝タイムとの差や公平性の観点から、この新たなカテゴリーについても議論の余地があるとする。
また、LGBTQ+の権利擁護団体は「トランス女性選手が常に優位とは限らない」と主張。競技によっては性差の影響が少ないものもあり、一律の排除ではなく、スポーツごとの適切な基準作りが求められると指摘している。
多様性と公平性のバランスをどう取るか
SNS上では、トランスジェンダー選手の参加に対し、「女性アスリートの権利が守られるのは当然」と歓迎する声がある一方、「少数派の権利を尊重するあまり、多数派の不利益が生じては本末転倒」との意見も根強い。
「体が男性で女性競技に参加する場合のみ問題になる。逆パターンはほぼ存在しない。圧倒的に有利な条件で女性競技に参加することは、女性アスリートにとって受け入れがたい」という意見や、「そもそも少数派への配慮のために、多数派が不利になってよいはずがない。別のカテゴリーを設けるべきだ」とする声も多い。
一方で、「スポーツは楽しむ場としての側面もあり、すべての競技がエリートレベルでの公平性だけを基準にするべきではない」との意見もある。
今後の展望
トランプ大統領の大統領令は、今後のスポーツ界に大きな影響を与えることは間違いない。特に、オリンピックや国際競技連盟がどのような対応を取るのかが注目される。
また、トランスジェンダー選手の参加問題は、単に規制を強めるだけでは解決しない。公平性と多様性のバランスをどのように取るべきか、各競技ごとの特性を踏まえた科学的な議論が求められる。