フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)が発表した2025年3月期の決算見通しで、フジテレビが33億円の営業赤字に転落することが明らかになった。広告収入の大幅減少が主な要因であり、取引先の制作会社にも深刻な影響を及ぼしている。
番組制作費の削減や発注キャンセルが相次げば、業界全体のコンテンツ制作に支障をきたす可能性があるが取引先への影響は?
フジテレビ、広告収入減で赤字転落
フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)が発表した2025年3月期の決算見通しによると、フジテレビを中心とするメディア・コンテンツ事業が33億円の営業赤字に転落することが明らかになった。前年は157億円の黒字であったため、大幅な業績悪化となる。
この赤字の要因となったのは、元タレント・中居正広氏をめぐる問題と、それに伴う広告収入の大幅減だ。フジテレビの対応に批判が集まり、広告主が相次いでCM出稿を取りやめた。フジHDによると、広告収入は当初計画より233億円減少する見通しで、売上高も前年比7%減の4015億円に落ち込む。
フジテレビ単体での最終赤字は、2008年の持株会社化以来初めての事態となる。これを受けて同社は社長直轄の「フジテレビ再生チーム」を設置し、ガバナンス改善や業績回復に向けた取り組みを進めるとしている。
取引先の制作会社に及ぶ深刻な影響
フジテレビの業績悪化は、同局に番組を供給する制作会社に大きな打撃を与えている。テレビ番組の制作会社で構成される全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)は、1月30日付でフジテレビに対し要望書を提出した。その内容によると、番組制作費の削減や発注キャンセルが続けば、制作会社の倒産が相次ぐ可能性があると警鐘を鳴らしている。
東京商工リサーチによると、フジHDの取引先は約1万社にのぼる。そのうち9割以上が未上場企業であり、資本金1億円未満の中小企業が7割以上を占める。フジHDの信用低下や業績悪化が長引けば、制作会社のみならず芸能事務所、ロケ用弁当の仕出し業者など幅広い業種に影響が及ぶ可能性がある。
制作の現場も困難な状況に
広告収入減の影響で、フジテレビの番組制作の現場も混乱している。代表的な例が、同局の人気番組「逃走中」だ。スポンサー離れの影響で制作費の確保が困難になり、さらにロケ地確保にも支障が出ている。
また、CM枠がACジャパンの広告に差し替えられた影響で、CM時間を短縮する代わりに本編映像を増やす編集作業が急増しており、制作スタッフの負担が増している。さらに、制作会社の経営が不安視される中、新規採用にも影響が出ており、テレビ業界全体の人材流出の懸念が高まっている。
今後の見通し テレビ業界の岐路
フジテレビの業績悪化は、一局だけの問題ではない。近年のテレビ業界は広告収入の減少に苦しんでおり、各局とも制作費の削減を余儀なくされている。フジテレビの問題が長引けば、業界全体で制作費の見直しが進み、番組制作の現場がさらに厳しくなる可能性がある。
また、制作会社の中には他局に制作費の増額を求める動きもあるが、現状ではうまく進んでいない。テレビ業界全体で、広告収入に依存しない新たな収益モデルの模索が求められる局面に入っている。
制作会社の待遇改善や適正な制作費の確保が進まなければ、番組制作に携わる人材の流出が続き、テレビ業界全体のコンテンツの質が低下する可能性もある。
まとめ
フジテレビの広告収入減による33億円の赤字は、同局だけでなく、制作会社を含む業界全体に深刻な影響を与えている。番組制作の現場では、制作費の削減やスポンサー離れが進み、特番の制作すら困難な状況だ。
テレビ業界は今、大きな岐路に立たされており、制作会社の存続や、業界全体の健全な発展のためには、広告依存型のビジネスモデルの見直しが急務だ。視聴者に支持されるコンテンツを維持するためにも、局と制作会社の関係の再構築が求められる。
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