トランプ氏、航空事故をDEI政策のせいに
トランプ米大統領は1月30日の記者会見で、首都ワシントン近郊で発生した旅客機と軍用ヘリコプターの空中衝突事故について言及し、事故の遠因としてバイデン政権が推進してきた「多様性、公平性、包括性(DEI)」政策にあるとの持論を展開したことが時事通信の報道で伝えられた。
しかし、事故原因の調査が本格化する前にDEIを批判の的とする手法には疑問の声も上がっている。
事故原因の解明よりも先行する政治的主張
トランプ氏は記者会見で、「FAA(連邦航空局)は重度の知的障害や精神疾患を抱える職員を積極的に採用している」と主張し、「最高の知性を有し、精神的に優れた人だけが航空管制官の資格を得るべきだ」と述べた。
一方で、事故とDEI政策の間にどのような因果関係があるのかについての具体的な証拠を示すことはなかった。
FAAのトップ不在こそが本当の問題か
しかし、FAAをめぐる問題として指摘されるべきは、多様性政策よりも同機関のトップが不在であることだ。トランプ氏が1月20日に大統領に就任すると、FAAのマイケル・ウィテカー長官は辞任した。ウィテカー氏は、トランプ氏の側近であり「共同大統領」とも評される実業家イーロン・マスクとの対立が続いていたことが背景にあるとみられている。
トランプ政権下でのFAA混乱とマスク氏の影響
マスク氏がCEOを務めるスペースXはFAAの規制対象であり、同社に課された罰金をめぐってウィテカー氏とマスク氏の関係は悪化。マスク氏はX上でウィテカー氏の辞任を公然と要求するなど、強い圧力をかけていた。
結果として、FAAは新政権発足直後に指導者不在となり、組織の統率が揺らぐ事態となった。
SNSでの反応:「FAAの混乱が問題」
FAAに限らず、重要な政府機関の人事がトランプ氏やマスク氏の政治的思惑に翻弄される事態が続けば、国民の生活や安全にも大きな影響を及ぼしかねない。安全性の確保を最優先とすべき航空行政が、一部の政治的な利害関係に左右されるような状況が続けば、今後の政策運営にも不安が広がるだろう。
SNS上では、トランプ氏の発言に対し、「事故の原因が明らかになっていない段階でDEIを批判するのは短絡的だ」とする声が多く見られる。
また、「FAAの組織運営の問題は多様性政策ではなく、トップ不在の混乱にあるのではないか」との指摘もある。
FAAのリーダーシップ再構築が急務
航空安全の確保には、政治的対立を超えた冷静で専門的な議論が不可欠だ。FAAの指導力が欠如した状況を放置すれば、今後さらなる航空トラブルを招く可能性も否定できない。事故原因の究明とともに、FAAのリーダーシップの再構築が急務となっている。