企業内での従業員の健康管理とエンゲージメント向上は、現代の人事課題の最重要項目の一つである。
そのニーズに応えるべく登場したのが、HMd株式会社が提供する法人向けサービス「Health Loop for Office」だ。
本記事では、サービスの概要から、創業者たちの思い、具体的な導入事例までをHMd株式会社の共同創業者 CHO 八藤浩志氏と同社 代表取締役会長 CEO 楠瀬丈生氏、セールスマーケティング部 エンゲージメントマネージャー 箕浦夢氏に話を伺った。
現代企業の抱える課題
企業経営において「従業員の健康」と「エンゲージメント向上」は、切り離せない重要なテーマだ。
離職率の低下や従業員満足度の向上、さらには生産性の改善を目指す中で、心身の健康をサポートする取り組みが求められている。
しかし、現実にはいくつもの課題がある。多くの企業は従業員アンケートを実施しているが、「建前」の回答が含まれるケースも多く、従業員のリアルな心情やストレス状態を正確に把握することが難しい。
また、人事部門のリソースが不足しているため、得られたデータを十分に活用できず、課題解決まで至らないという声もある。
さらに、メンタルヘルス不調による休職者の増加も深刻な問題だ。有効なケアやサポートが施されないまま、従業員が限界を迎えてしまうことも珍しくない。
こうした課題を放置すれば、企業全体の生産性が低下するだけでなく、離職率が高まり、組織の持続可能性にも影響を及ぼす。
こうした課題に対し、HMd株式会社が提供する法人向けサービス「Health Loop for Office」が注目を集めている。
このサービスは、従業員一人ひとりに寄り添い、心身の健康をサポートすることで、企業内のエンゲージメントを高めることができるとのことだ。
「Health Loop for Office」とは?
「Health Loop for Office」とは、企業の従業員が抱える心身の課題に対応するために設計された法人向けサービス。
専任のヘルスケアパートナー(以下、HCP)が企業に赴き、従業員一人ひとりに対して施術や健康アドバイスを提供する。
施術内容は、ネイルケアやマッサージ、さらにはストレスチェックと多岐にわたり、従業員の隙間時間を活用して実施できるのが特徴。
簡易計測や施術を通じて得られたデータやフィードバックは個人のみならず、企業全体の健康課題を可視化し、経営層へBMEレポート(心身の状態とエンゲージメントを可視化したレポート)として提供される。
このサービスの特筆すべき点は、単なる施術にとどまらず、企業内のエンゲージメント向上をも目的としていることだ。
従業員間のコミュニケーションを促進し、職場環境の改善に寄与する仕組みとなっている。
サービス開発に至る背景
「Health Loop for Office」が生まれた背景には、創業者の2人が抱える共通の課題意識があった。
ベレックス株式会社の代表取締役でHMd株式会社 共同創業者 CHOの八藤浩志氏は、長年にわたりネイルサービスを中心に美容業界での経験を積みながら、顧客との長期的な信頼関係を重視してきた。
そこから生まれたのが、「美」を通じて得られるコミュニケーションの重要性だ。そして40代で大病を患った経験から、「美」と「健康」を融合させたサービスの必要性を痛感したという。
そして、HMd株式会社共同創業者で代表取締役CEOである楠瀬丈生氏は、金融業から転身し、ヘルスケア分野への挑戦を決意した。
高齢化社会という避けられない未来を見据え、健康意識を高めるためにはどうすればよいかを模索する中で、健康と働き方を結びつけるサービスの可能性を感じたという。
異なるバックグラウンドを持つ2人の課題意識が融合し、従業員の健康と企業価値を同時に向上させるサービスとして「Health Loop for Office」が誕生した。
健康とエンゲージメントをつなぐケアメニューとサービス設計
『Health Loop for Office』の特徴は、単なる健康ケアではなく、総合的なウェルビーイングの観点から従業員のエンゲージメントまでを視野に入れている点だ。
「『Health Loop for Office』では、従業員の皆さんが短時間でリフレッシュできるよう、さまざまなケアメニューを用意しています」と話すのは、HMd株式会社のエンゲージメントマネージャー・箕浦氏。
ケアメニューの内容は、ネイルケアやリフレクソロジーといったボディケア、ストレッチ、フェムケアなど多岐にわたる。
どの施術も、オフィス内で気軽に受けられるよう設計されており、忙しいオフィスワーカーにとって利用しやすい点が特徴だ。
「例えばネイルケアは、手元を清潔に見せるだけでなく、リラックス効果もあるため男性社員にも人気です。一方で、リフレクソロジーは眼精疲労や肩や腰が凝っている方に最適で、短時間の施術でも体が軽くなったと感じていただけます」と箕浦氏は説明する。
さらに、ストレスチェックに関しては、簡易バイタル計測やHCPとの対話を通じて従業員の健康状態を把握し、身体的ストレスや精神的ストレスの傾向を数値化したレポートを作成する仕組みだ。
「チェックを受けた方から、『こんなにストレスが溜まっているなんて気づかなかった』という声をよくいただきます。それが健康意識を高めるきっかけになっているんです」と箕浦氏は語る。
サービスの根幹 HCPと従業員の生の声を聞けるエンゲージメントレポート
これらのケアを支えるのが、サービスの核であるヘルスケアパートナーだ。
「HCPは、単なる施術者ではなく、健康に関する知識とコーチングスキルを併せ持った人材です。施術中の何気ない会話から従業員の悩みや課題を引き出し、それに応じた適切なアドバイスを提供します。ただ気持ちいいだけの施術ではなく、気づきと行動のきっかけを作る存在なんです。」と箕浦氏。
HCPが特に重視しているのが、施術中の対話を通じて従業員の「生の声」を引き出すことだ。
「例えば、ある従業員の方が『最近、仕事が忙しくて睡眠の質が落ちているんです』と話してくれたことがありました。そうした声はアンケートだけではなかなか出てきませんが、施術というリラックスした環境では悩みを引き出しやすいです。」と箕浦氏は語る。
こうして得られた情報は、HCPによって詳細に分析され、従業員の健康状態や課題をまとめたレポートとして企業にフィードバックされる。
ストレスチェックの結果や施術中のヒアリング内容を基に作成されるこのレポートは、従業員個々の健康意識向上だけでなく、職場全体の環境改善に寄与する貴重なデータとなる。
「『Health Loop for Office』は従業員がリフレッシュし、健康意識を高めるだけでなく、企業全体の生産性やエンゲージメント向上を視野に入れたサービスです。HCPによる施術や対話から得たデータは、例えば特定の部署のストレス状況の改善や、新しい福利厚生施策を検討する材料として活用されています。」と箕浦氏は語る。
また、BMEレポートは、経営層や人事部にも好評を得ているという。
「HCPからの報告をもとに、従業員のストレス傾向が可視化され、実際に職場環境の改善につながったという例もあります。特に、これまで表面化してこなかった問題が明らかになるケースも多いですね。」箕浦氏は、企業全体のエンゲージメント向上につながる可能性を強調する。
HCPの存在は、その場限りの施術にとどまらない。施術の後に『次の日、仕事のパフォーマンスが上がった気がする』や、『もっと健康を意識しようと思った』という声をいただくことが多いという。
HCPは、従業員の心と体に寄り添いながら、行動変容を促す重要な役割を担っているようだ。
「これらのプロセスを通じて、企業全体の健康意識が高まり、働く環境そのものがより良いものへと進化し、長期的に企業価値の向上につながることが期待できます。」(箕浦氏)
サービス導入で健康経営の促進と企業価値の向上
『Health Loop for Office』が提供するのは、施術やストレスチェックだけではない。
HCPによるヒアリングやデータを基に作成されるBMEレポートが、企業全体の健康課題を見える化し、経営に役立てられている。
「ある企業では、ストレス値が高い部署を特定し、作業負担を見直した結果、社員の満足度と業務効率が向上した事例もあります。」と楠瀬氏。
「『Health Loop for Office』は、健康経営ひいてはウェルビーイング経営を推進し、企業価値を長期的に高めるための有効なサービスです。従業員の健康を支え、職場環境を改善する。5年後10年後の企業の成長に欠かせない要素を提供していると自負しています。」と八藤氏はその価値を強く語る。
加えて、データを基にした職場改善は、従業員の働き方改革につながるだけでなく、従業員同士のコミュニケーションの活性や未来の従業員への採用効果も期待できるとのこと。
「従業員の健康維持やストレス軽減だけでなく、職場の雰囲気が明るくなったり、チームのコミュニケーションが円滑になったりする効果も見られます。さらに、経営層からは『健康経営に資する具体的施策を実施していることが採用力やブランド価値の向上にもつながっている』という声もいただいています。」と導入企業の実例をもとにして箕浦氏にサービスの価値を語っていただいた。
『Health Loop for Office』が描く未来:健康が生む持続可能な社会
箕浦氏は「このサービスを通じて、従業員の皆さんが単に健康を維持するだけでなく、『自分の会社は本当に自分たちの健康を考えてくれている』と感じられるような社会を作りたいです。企業が従業員を大切にする姿勢を示せば、働く人々のエンゲージメントが高まり、職場の雰囲気も活気づきます。それが企業文化全体を豊かにするきっかけになると思います。」とより良い企業になるためには従業員への寄り添う姿勢が大事であると話す。
現代の働き方は多様化し、ストレスや健康課題は個人ごとに異なる。
そのため、一人ひとりの健康意識を高め、行動変容を促すことが、個人の幸福だけでなく、企業、ひいては社会全体の持続可能性を支える基盤となる。
続けて、楠瀬氏は「私たちが目指しているのは、従業員が健康に働ける環境を当たり前にすることです。そのためには、企業だけではなく社会全体による健康意識の醸成促進をする必要があります。『Health Loop for Office』は、その実現に向けた第一歩です。このサービスは、従業員の健康を支えるだけでなく、ウェルビーイング経営を企業文化に組み込むことで、社会全体にポジティブな連鎖を生みたい。」と力強く実現可能な未来を話す。
ベレックス株式会社の代表取締役・八藤浩志氏も、同じ未来を見据えている。
「私自身、病気を経験したことで健康の重要性を痛感しました。『Health Loop for Office』は、病気になる前の段階で健康を維持し、従業員が明るく前向きに働ける環境を作ることを目的としています。それが企業の成長につながり、最終的には日本全体の働き方改革や少子高齢化への対応にも貢献するはずです。」(八藤氏)
企業が従業員を大切にする姿勢を示すことで、働く人々のエンゲージメントが高まり、企業文化そのものが豊かになるという未来の実現はそう遠くないかもしれない。
◎プロフィール
八藤浩志
ベレックス株式会社 代表取締役、HMd株式会社 代表取締役社長 CHO
リクルートコスモス出身。旧インテリジェンス創業メンバー、ベレックスホールディング代表取締役(現任)、ベレックス株式会社代表取締役社長(現任)、HMd創業メンバー。
楠瀬丈生
HMd株式会社 代表取締役会長 CEO
野村證券、メリルリンチ(現:バンク・オブ・アメリカ)出身。
メリルリンチ取締役副会長退任後、ヘルスケア業界に転身、HMd創業メンバー。
箕浦夢
HMd株式会社 セールスマーケティング部 エンゲージメントマネージャー
大学卒業後、大手人材会社へ入社。
従業員が健康第一で働ける職場づくりがしたいという思いで転職活動をし、HMd(株)に入社。
◎企業概要
社名:HMd株式会社
設立:2019年3月
資本金:20百万円
本社:東京都渋谷区神泉町21-3渋谷YTビル02 7階
オフィス:東京都港区南青山2-27-18 パサージュ青山2階