ヘアカット専門店「QBハウス」を運営するキュービーネットホールディングスは、2025年2月1日から国内全店でカット料金を現在の1350円から1400円に改定すると発表した。物価高騰や人件費上昇に加え、デジタル化推進のための投資を理由に挙げている。一方で、月1回の利用で100円割引となる「ツキイチ・キャンペーン」を全年齢対象に拡大し、顧客還元も強化する。
低価格・短時間カットで成長を遂げたQBハウス
QBハウスは1996年に日本初のヘアカット専門店として誕生した。余分なサービスを省き、約10分間の短時間でカットを提供する独自のビジネスモデルで急成長。低価格帯のヘアカット需要を開拓し、2024年春には累計来店客数3億人を突破している。2024年6月末時点では、国内563店、海外128店の計691店舗を展開している。
値上げの背景:物価高騰・人材投資・DX推進
今回の値上げは、昨今の物価高騰が大きな要因だ。企業は原材料費や光熱費の高騰に直面しており、QBハウスも例外ではない。加えて、国家資格保有者である理美容師の確保と育成のための継続的な人材投資、顧客満足度向上のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)投資も値上げの理由として挙げている。
月1回100円割引「ツキイチ・キャンペーン」を全年齢対象に
値上げと同時に、これまで65歳以上限定だった「ツキイチ・キャンペーン」を全年齢対象に拡大する。これは、値上げによる顧客離れを防ぎ、更なる利用促進を図る狙いがあるとみられる。
SNSでは賛否両論の声
SNS上では、値上げに対して様々な反応が出ている。中には「1400円になると他の低価格店との競争が厳しくなるのでは」と懸念する声もあれば、「物価高騰を考えれば仕方ない」と理解を示す声もある。
「人」を中心としたサステナビリティ経営
QBハウスは、有価証券報告書において、経営の軸足を『人』、そして社会との『共創』を重視するサステナビリティ基本方針を掲げている。創業者が「不の解消」から生まれたヘアカットに特化したサービスは、もともと人や社会、環境にやさしいサービスであることを謳っている。
実際に、同社の事業成長の源泉は、ステークホルダーのなかでも働く社員(スタイリスト)に選ばれる会社であると位置づけているようだ。このように社員のエンゲージメントに力をいれている会社であれば、従業員サーベイなどの定点観測の開示も気になるところであり、今後の開示を期待したい。
また、人材育成の拠点として、ロジスカットスクールを全国7拠点で展開していることも伺える。
ほかにも有報のサステナビリティ欄では、ヘアカットに特化することで水やエネルギーの消費を抑え、従業員の手荒れ防止にも配慮するなど、環境と労働環境の両面で配慮した事業運営を行っていることが強調されている。
今後の展望:競争激化と持続可能性
低価格帯のヘアカット市場は競争が激化しており、QBハウスは更なる効率化とサービス向上を両立させる必要がある。今回の値上げとキャンペーン拡大は、そのための戦略の一環と言えるだろう。同時に、持続可能な経営を実現するために、環境保全や社会貢献にも積極的に取り組んでいく姿勢を見せている。