ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

韓国、戒厳令は6時間で解除 ユン大統領弾劾の危機で反日政権誕生の危機

コラム&ニュース コラム ニュース
リンクをコピー

大統領、戒厳令を宣布――混迷する韓国政治

韓国大統領府 HP
大韓民国大統領室 HPより

2024年12月3日の夜、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が戒厳令を宣布するという事態が発生した。尹大統領は緊急談話で「自由憲政秩序を守るための措置」と説明し、国内の政治的安定を取り戻すための一手であると主張した。しかし、この動きは国会での迅速な反発を招き、一時的に韓国全土を揺るがす事態となった。

戒厳令の発動理由として、尹大統領は行政府の麻痺状態を挙げた。最大野党「共に民主党」主導で政府官僚に対する弾劾訴追案が相次ぎ、政権運営が行き詰まったことが背景だ。さらに、北朝鮮からの潜在的脅威を理由に挙げ、国家の自由と民主主義を守るための措置だと訴えた。

しかし、この戒厳令が実質的に大統領権力の維持に利用されているとの批判も強まっている。

戒厳令の具体的内容と影響

戒厳令下では、韓国社会における基本的な自由が厳しく制限されることとなった。戒厳司令官の指示のもと、集会やデモを含む政治活動が全面的に禁止されたほか、SNSやメディアを含むすべての言論活動が統制を受けることになった。また、警察は逮捕状なしで違反者を拘束できる権限を与えられるなど、市民生活への影響も懸念される。

経済においても、この戒厳令による混乱が企業活動や投資環境に悪影響を及ぼす可能性がある。国際社会の韓国への信頼が揺らげば、外国投資の減少やウォンの価値低下が連鎖的に起こるリスクもある。戒厳令発令直後、韓国の証券市場にも動揺が広がり、株価指数が急落する場面も見られた。

背景にある、支持率低迷と政治的対立が導いた危機

今回の戒厳令発令の背景には、尹政権が直面していた深刻な苦境がある。2022年に発足した尹政権は、支持率が20%前後と低迷。2024年4月の総選挙では与党が大敗を喫し、国会は野党勢力が過半数を占める状態となった。その結果、政権運営が著しく困難となり、与野党間の対立は激化していた。

支持率低迷の背景には、尹大統領の妻であるキム女史の過度な政治干渉や収賄疑惑、学歴詐称疑惑、論文剽窃などが影響しているとも言われている。12月4日には国会で大統領を辞めさせる国会決議が取られる予定となっていたようで、それが今回の戒厳令の発令に繋がったと指摘されている。

過去の韓国でも戒厳令が発令された例はあるが、民主化以降では極めて異例の事態だ。特に、軍事政権時代の光州事件を記憶する韓国社会において、戒厳令の発動は戒厳体制への不信感を強く呼び起こしている。

迅速な国会の対応、民主主義の力を示す

戒厳令発令からわずか数時間で、韓国国会は事態収拾に向けて迅速に動いた。国会議員たちは封鎖が試みられる中でも国会に集結し、多数決によって戒厳令の撤回を決議した。これにより、形式上は大統領が戒厳令を解除する必要があるものの、実質的には戒厳令は無効な状態とみなされている。

また、この過程で軍部が大統領の命令に対して消極的だったことも、混乱拡大を防ぐ一因となった。戒厳軍による立法府封鎖が完全には成功せず、憲法を無視する内乱罪への懸念が軍部内に広がっていた。これにより、今回の戒厳令は過去の軍事クーデターとは異なり、迅速に収束に向かう兆しを見せている。

ただ、SNSでは、国会が可決したのは戒厳令の「解除要求」であって、戒厳令の解除権限を持つのは大統領だけであり、 憲法には「可決したら解除すること」という文言だけあって、“いつ解除する”という規定はない。 正念場はここから、という意見もあった。

ところが、4日朝、事態は急変し、収束に向かった。大統領は再び会見して、閣議を通じて非常戒厳を解除すると発表したのだ。韓国メディアの報道によると、閣議が開かれて非常戒厳が解除されたことが報じられている。

また、最大野党「共に民主党」などを含めた野党6党が大統領の弾劾を求める議案を国会に提出したことを伝えているので、しばらく韓国の政局は予断を許さない状況が続くだろう。

経済への影響と反日政権誕生の危惧

韓国のこの政治危機は、短期的には経済活動に確実な影響を及ぼすとみられる。特に、戒厳令が発令されたことが国際社会に与える印象は大きい。経済的には、外国投資家の心理的な不安を招き、韓国市場からの資本流出を引き起こす可能性がある。さらに、観光やビジネスで韓国に行くこと自体を政局が不安定化しているうちは避けるべきである。戒厳令による内政不安が長引けば、韓国製品や企業への信頼低下を通じて輸出経済にも影響が及ぶだろう。

また、戒厳令の発令とその撤回をめぐる一連の動きは、韓国の法治体制そのものへの疑念を招きかねない。これが、韓国経済の中長期的な成長にとって新たなハードルとなる可能性も指摘されている。

さらに、比較的親日政権であった尹政権は今後弾劾裁判などで罷免される可能性が高い。そうすると、反日政権が韓国で誕生する可能性がある。この場合、日韓関係はまた暗礁に乗り上げることが予測される。日本にとっても注視しなければならない事態といえる。

試される韓国の民主主義と安定性

今回の戒厳令発令とその撤回に至る一連の出来事は、韓国の民主主義の成熟度が試される重要な瞬間となった。迅速な国会の対応と国民の反応によって、最悪の事態は回避されたものの、尹政権に対する不信感や政治的混乱が完全に解消されたわけではない。

韓国はアジアを代表する経済大国として、政治の安定が経済の持続的な成長にとって不可欠である。今後の注目点としては、尹大統領の動向、次期大統領選挙に向けた動き、そして国際社会が韓国の民主主義体制に対してどのような視線を向けるかが挙げられる。

韓国の政治的混乱が一刻も早く解消し、経済の安定と成長が回復することを願うばかりだ。

Tags

ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

関連記事

タグ