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金融庁サステナブルファイナンス有識者会議 第四次報告書から紐解く潮流

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金融庁

~サステナブルファイナンスの潮流:官民連携でインパクト投資を促進、多様化する課題に対応~

金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議は、2024年7月9日、「サステナブルファイナンスに関する有識者会議第4次報告書」を公表しました。

報告書では、過去1年間のサステナブルファイナンスに関する市場関係者の取り組みと課題を整理し、今後の重点的な取り組みについて提言を行っています。特に注目すべきは、インパクト投資の促進と、気候変動以外にも広がる多様なサステナビリティ課題への対応です。

インパクト投資:社会・環境的効果を重視する投資手法

インパクト投資は、経済・社会基盤の強化を図る投資手法として重要性が高まっています。金融庁は2024年3月、インパクト投資の「基本的指針」を策定し、一定の収益確保を図りつつ社会・環境的効果の実現を目指すものであると定義しました。

報告書では、インパクト投資の促進にあたって、インパクトを金銭価値化するインパクト加重会計の事例や研究の蓄積が重要だと指摘しています。

加えて、民間主体では整理しづらいインパクト指標やデータの整備、地域を含む官民協働の取り組みの推進など、官民が補完し合い進めていくことが有効だと提言しています。

具体的には、官民連携で取り組むべき論点を整理し、インパクト評価やそれを価値向上につなげる企業戦略のあり方について、上場市場、地域企業など、特性に応じて対象を区分けしながら議論を進めていくことが重要となります。

多様化するサステナビリティ課題への対応

サステナブルファイナンスは、気候変動以外にも、生物多様性や人的資本など、多様な課題を考慮する必要があります。報告書では、これらの課題は相互に関連しており、横断的な視点で検討・議論していくことが重要だと指摘しています。

企業・投資家や金融機関等は、自らのマテリアリティを認識し、リスク管理の実践や相互の対話を通して、それぞれの課題に適切に対応していくことが求められます。

幅広いステークホルダーへの浸透

サステナブルファイナンスの取り組みを成功させるためには、幅広いステークホルダーへの浸透が不可欠です。報告書では、投資家等への幅広い理解の促進と浸透、サステナビリティ人材の育成・充実、地域におけるGXの取り組みなど、様々な主体における取り組みの重要性を強調しています。

まとめ

サステナブルファイナンスは、持続可能な社会の実現に向けて、金融が果たすべき役割を明確化し、具体的な行動を促すものです。金融庁は、今回の報告書を踏まえ、引き続き関係省庁や市場関係者と連携し、サステナブルファイナンスの推進に取り組んでいく方針です。特に、インパクト投資については、官民がそれぞれの強みを活かしながら連携し、その促進を図っていくことが期待されます。

金融庁「サステナブルファイナンス第4次報告書」は、サステナビリティを重視する企業にとって、今後の成長戦略を描く上で重要な示唆を与えています。特に、インパクト投資の促進と多様化するサステナビリティ課題への対応は、企業にとって大きなビジネスチャンスとリスク管理の必要性を示唆しています。

各企業が「サステナブルファイナンス第4次報告書」から得るべきインサイトと対応策

さて、以下より本報告書についてより詳細を見ていきましょう。本報告書は、2023年7月から2024年6月までのサステナブルファイナンスに関する市場関係者の取り組みと課題をまとめたものです。

主なポイント

サステナブルファイナンスは、ESG投資の意義が問われる中で、経済・社会の持続可能性を高めるための重要な金融メカニズムとして認識されています。グローバルな課題解決には、幅広い関係者への浸透、トランジション・ファイナンスやインパクト投資など重要課題への取り組み、多様化する課題への対応が必要です。

具体的には、以下の3点が重要となります。

1.投資家等への幅広い理解の促進と浸透

サステナブルファイナンスの基本的な意義や手法を分かりやすく発信し、理解促進を図る必要があります。特に、個人投資家への浸透が課題です。

2.GXとトランジション・ファイナンスの推進

信頼性のあるトランジション・ファイナンスの定義や評価、資金動員、金融機関による移行戦略など、具体的な議論・発信が必要です。一方、150兆円超の資金が必要とされるGX実現に向け、民間資金の動員が課題です。また、地域金融機関による地域GX推進、データ基盤整備、カーボンクレジット市場の健全性確保も重要です。

3.多様化するサステナビリティ課題への対応とインパクト投資の推進

脱炭素・GXに限らず、生物多様性、人権、多様性など、幅広いサステナビリティ課題への対応が必要です。インパクト投資は、多様な課題への取り組みを通じ事業成長を実現する企業を支援する金融イノベーションとして、大きな役割が期待されます。また、データ整備、市場形成、官民連携など、実践的な議論が必要です。

具体的な取り組みと課題について

企業開示の充実について

サステナビリティ情報の開示は、投資家との建設的な対話の前提として重要と強調されています。そのため、国際基準を踏まえた国内基準の適用、ファイナンスド・エミッション開示等、検討が進められています。

情報・データ基盤の整備

企業等のサステナビリティ情報を集約・提供するデータ基盤整備が重要です。特に、排出量データについては、中小企業やサプライチェーンを含めた整備が課題です。また、信頼性のあるデータ整備には、データの作成・利用者の対話・協働が不可欠です。

ESG評価・データ提供機関

適切な機能発揮が重要であり、金融庁が策定した「行動規範」への賛同が進んでいます。また、実効的な態勢整備や企業との対話充実など、更なる具体策の検討が必要です。

日本取引所グループでは、ESG評価機関・データプロバイダの紹介をしています。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esgknowledgehub/esg-rating/

幅広い投資家への投資機会の拡充

機関投資家・個人投資家等への投資機会拡充は、サステナビリティ投資市場の活性化に繋がります。また、投資の基本的な意義や効果を具体的に実感できる機会・情報提供が重要です。

サステナビリティ人材の育成・充実

専門人材不足が指摘されており、「スキルマップ」公表や大学・業界団体による研修等が進められています。また、若手人材育成と高度専門人材育成の両面で、課題となるニーズ・人材に応じたきめ細かい対応が必要です。

グリーンファイナンスの推進

グリーンボンドガイドライン等の改訂、グリーンファイナンス市場の発展に向けた議論が進められています。

トランジション・ファイナンスの推進

基本指針策定やフォローアップガイダンス策定、ファイナンスド・エミッションに関する議論が進められています。また、GX推進戦略や分野別投資戦略に基づく具体的な案件組成、金融機関による移行計画策定などが進捗しています。これから、国際的な議論を主導し、具体的な案件組成に繋げていくことが重要です。

インパクト投資の推進

基本は記事の冒頭で既述しましたが、「基本的指針」策定、インパクトコンソーシアム発足など、官民連携による議論が進められていること、及び多様な関係者間で議論・対話を進めるにあたり、投資先の特性を明確化し、議論を積み上げていくことが重要と書かれています。また、指標やデータ整備、官民協働の推進など、官民が補完し合いながら進めていくことが有効とのことです。

インパクト投資は、社会・環境問題の解決に貢献しながら、収益も追求する投資手法として注目されています。投資家は、財務情報だけでなく、インパクト指標やデータに基づいて投資判断を行うようになっていて、政府は、インパクト投資を促進するため、官民連携によるデータ整備や市場形成を進めていることが書かれています。

企業各社が理解すべきポイント

自社の事業が、社会性を伴うと考える企業は、どのような社会・環境的インパクトを生み出しているかを分析し、定量的な指標で可視化することを考えてみてもいい段階です。インパクトの設計については、GLIN IMPACT CAPITALやトークンエクスプレスなどが進めています。

また、インパクト投資家との対話を通じて資金調達の可能性を探ることも選択肢として考えられる段階にきているようです。インパクト加重会計など、新たな会計手法の導入を検討してみてください。

多様化するサステナビリティ課題

気候変動に加え、生物多様性、人的資本など、ESG各領域にわたる様々な課題が存在します。課題を細分化せずに捉え、横断的な視座で検討・議論していくことが重要と紹介されています。企業・投資家・金融機関等は、自らのマテリアリティを認識し、リスク管理や対話等を進めていくことが重要だと示唆されています。

リスク管理と企業価値向上

気候変動だけでなく、生物多様性、人権、ダイバーシティなど、企業は様々なサステナビリティ課題に直面しています。これらの課題は相互に関連しており、包括的な視点で対応することが重要で、サステナビリティ情報開示の要求は、今後ますます高まっていくと書かれています。

企業各社が理解すべきポイント

既に取り組んでいる企業には当たり前のことでしょうが、企業各社はマテリアリティ分析を行い、自社にとって重要なサステナビリティ課題を特定しましょう。各課題に対するリスク管理体制を構築し、適切な対応策を講じていくことが求められます。また、TCFDやISSBなどの国際的な開示基準を参考に、サステナビリティ情報開示の充実を図っていくべきです。

脱炭素に係る取り組み

金融機関は、リスク管理・顧客支援、トランジションへの対応、国際展開など、様々な論点に取り組む必要があります。金融機関は、顧客企業の事業に係るリスクと機会を特定し、リスク削減と機会促進を図ることが重要と紹介されています。また、シナリオ分析、ファイナンスド・エミッション、移行計画など、金融機関の事業戦略・リスク管理等への統合が課題です。金融機関による企業・当局との対話、移行支援等を通じて、経済社会の成長・持続可能性向上に貢献していくことも重要と書かれています。

地域におけるGXの取り組み

中小企業のGXは重要な課題であり、金融機関による支援策の浸透や排出計測手法の普及が進められています。中小企業が脱炭素対応の有効性や経済性を理解できるよう、地域それぞれの事情に応じた情報発信が必要と紹介されています。

カーボン・クレジット市場

GXリーグの排出量取引制度の本格稼働に向けた議論、取引態様の多様化が見られます。今後の取引拡大等を見据え、取引の透明性・健全性等を確保する取引インフラや市場慣行のあり方について、調査・議論を進めておくことが重要と紹介されています。

官民連携:積極的な対話と情報共有

政府は、サステナブルファイナンスを推進するため、様々な施策を講じています。企業は、政府や金融機関など、様々なステークホルダーと積極的に対話し、情報共有を図ることが重要と書かれています。

企業各社が理解すべきポイント

業界団体や金融機関が主催するセミナーや勉強会に積極的に参加しましょう。政府の政策やガイドラインを理解し、自社の事業にどのように適用できるかを一社一社が検討する時間を作ってみてください。
また、金融機関との対話を通じて、サステナビリティに関する融資や投資の機会を探りましょう。

今後の展望

サステナブルファイナンスは、持続可能な社会の実現に向けた重要な手段として、今後ますます重要性を増していくと考えられます。政府、金融機関、企業、投資家など、様々な関係者が連携し、積極的に取り組んでいくことが期待されます。企業にとっては単なる義務ではなく、新たな成長機会と企業価値向上につながる戦略的な取組です。

今回の報告書を理解し積極的に対応することで、持続可能な社会の実現に貢献しながら、企業の持続的な成長を実現できるでしょう。

金融庁サステナブルファイナンス第4次報告書についてはこちらから読むことができます。
https://www.fsa.go.jp/singi/sustainable_finance/siryou/20240709/01.pdf

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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