最近、新規事業開発畑ではサイエンス・フィクション的な発想をもとに、まだ実現していないビジョンの試作品(プロトタイプ)を作ることを意味する「SFプロトタイピング」という手法が浸透しているという。
いま、この言葉にちなんで、さながら「SDGsプロトタイピング」とでも呼べそうな試みが、巷間に広がりを見せつつある。
その試みの名は、環境省の国民運動に登録している国際アイディアコンテスト「2030年の〇〇(インフィニティ)」。
運営しているのは、CIrcular In-finityの佐藤慎一さん。
2007年のノーベル平和賞を契機に、環境問題を生涯の課題と決心した元環境省の官僚だ。
本コンテストは「2030年の社会をクリエイティブで表現する」をテーマに32作品が集まり、要件を満たした22作品を展示している。
今日は、きたる3月12日に授賞式が迫るなか、審査員の皆さんと一緒に「物語と社会の関係性」というテーマで語り合ってもらった。
コンテストの詳細は以下よりご確認いただくことができます。
https://www.kokuchpro.com/event/2030oo/
イベントの申し込みは下記から行うことができます。
https://2030-oo.peatix.com/view
なぜ物語を作るのか?
佐藤
私は大学入学したばかりの頃、理系出身の作家である東野圭吾さんに憧れて、小説の授業を取ったりもしていたのですが、2つの書籍との出会いがきっかけで、Kindle出版をしました。
『ソフィーの世界』というミステリー小説と『ザゴール』という工場の存続をかけて戦う工場長の話です。
ご存じない方は是非調べてほしいですが、難しければ「ハリーポッター」と「半沢直樹」をイメージしてみてください。
『ソフィーの世界』は哲学の入門書として、『ザゴール』はロジカルシンキングと経営の入門書として世界中でベストセラーになっています。
これと同じことを環境分野でもできないかと思い、『衡平の選択』を書いて、国立環境研究所の江守先生に帯にコメントを頂きました。
すぎやま
漫画家でNPO法人FILMe(あーすりんく)代表理事のすぎやまです。「ゆめぴっく宇宙桜グランプリ」を開催して5年目になります。
わたしが漫画家になったきっかけについてですが、中学生になり、生きづらさを感じることが多くなり、それを救ってくれたのがマンガ、アニメの世界だったことによります。
自分のような生きづらさを感じるこどもを救いたいという思いから14才の時、漫画家になろうと決意しました。
2018年に渋谷桜丘に植樹されたワカキノサクラ(宇宙桜)発見者の牧野富太郎を題材にしたNHKの朝ドラ「らんまん」がもうすぐ始まりますが、物語の力で宇宙桜のことがもっと広がるといいなと思います。
3月の「World Art in Dubai in2023」でも、初めて日本のマンガを出展することを通じて、中東の方にも広くマンガの素晴らしさをお伝えしたいと思います。ドバイと日本をつないだ「まんがのまほう magical of MANGA workshop in Dubai」も行います。
光田
:Studio Co2で映画プロデューサーをしている光田です。
僕も中学の時、不登校が続いて、学校には半分くらいしか行けなかったんですが、持て余した時間でアニメとか映画とかずっと見てて……。勉強もしたくないし、やりたいこともなかったんで、アニメや映画をずっと見てたんです。
それで、高校で進路を考える際に、消費者から生産者になろうかなと思いました。
幾野
Studio Co2の監督の幾野です。光田とは同じ立命館大学の映像学部の出身で先輩後輩の関係です。
それであの、朝の読書の時間ってあるじゃないですか。中学1年生のときになんとなく手に取った本の中に、映画監督になる話がありまして。
そのときはふ~んぐらいにしか思ってなかったんですけど、美術の時間に文化祭に向けてみんなで映画を作るから考えてみてくださいと言われて、めっちゃいいなって思ったんです。
でも、結局撮れなくて、時間がたってもずっと心に引っ掛かってるんです。それで、受験先の大学に立命館の映像学部も入れてみたら、受かったのがそこだったんですよね。
瞬那
小説家の瞬那です。実はいま、いわゆる第2の人生でして、それまではセイコーエプソンで技術者をしていました。特許の申請はたくさん書いて、たくさん取りました。
それで、60歳定年の後、年金受給までの5年間、何をしようか、と考えて、昔から好きだった推理小説を書いて暮らせればいいな、と思って小説家を目指しました。
佐藤
お三方は、中学の時に良い出会いがあったってことですよね。
僕は夢がない子供で、環境問題に取り組もうと思ったのは22のときでした、アルゴアさんの「私はこの年にしてやりたいことをみつけた」という言葉をお守りにして15年経ちましたが、瞬那さんのアグレッシブな姿を見ると、やっぱり間違ってなかったんだなと思います。
あなたのなりたい姿、社会のあるべき姿
佐藤
この命題を考えてもらいたいということが、「2030年の〇〇(インフィニティ)」を開催している理由でもありますが、みなさんはいかがでしょうか?
すぎやま
難しい質問ですね。
いろんな意味でこどもやオトナに「夢を与えられる」存在でいたいとは思ってます。
「あるべき」て言葉があまり好きでないので答えにくいです。
多様な生きづらさをかかえたひとが、ちょっとでも生きやすく感じられるような世の中になっていくと良いなと思い、私もユニバーサルスクールの設立の準備をしています。
光田
後悔しないようにめっちゃかっこいい生き方ができればいいなって思います。
1つ印象深いエピソードがあって、高校生の時に困っている中学生を助けたことがあって、そしたらどこで聞いたのか、母親にそのことを褒められたんですよ。
やっぱ人は見ているんだなと思って、そういうめっちゃかっこいい自分でいたいですね。佐藤さんが言う「傍観者を演者に」と近い考え方かもしれないですね。
幾野
僕は社会というか業界のあるべき姿についてコメントしたいんですけど、映画業界ってみんなが知っているような超プロフェッショナルと、映画だけじゃ食べるのが難しいような人とに二極化しているですけど、中間層が厚くなっていくことが大事だと思うので、僕もその一助となれるように頑張っていきたいです。
瞬那
定年まで仕事してきたんで、これからはプラスアルファの人生なんで、好きなことを自由にやっていきたいです。バブル崩壊後の日本は元気がないと思います。もっと自由な元気ある社会になって欲しいですね。
読み手に対して想うこと
すぎやま
見てくださる方が、少しでも心を動かしたり、しあわせを感じてくれたなら本望です。
光田
特にないですね。倍速で見て頂いてもいいし、二次創作も気にならないです。クリエイティブコモオンズでもいいかなって(笑)
幾野
僕は、ある音楽アーティストのMVを作ったことがあるんです、そのファンから曲の良いところを表現してくれてありがとう、というメッセージを貰いましてすごくうれしかったです。
僕の創ったものに時間をかけてくれるってことがもう嬉しくてこれが愚痴やクレームの内容だとしてもうれしいですね。
瞬那
活字離れと言われて久しいですが、多くの人に本を読む楽しさを再認識して欲しいです。
私の2作目となる「家出少女は危険すぎる」では、小説の中の登場人物や店舗、施設をあなたの名前や好きな名前にできるネーミングライツ、帯ゾーンや小説本文に入れる挿絵、写真の公募をクラウドファンディングを通じて行っています。
私はエポックメイキングな発明をしましたが、今回も世界初ともいえる取り組みで多くの人に活字の楽しさに触れて頂ければと思います。
2030年の社会に向けてメッセージ
佐藤
この記事を2030年の僕ら、周りの人たち、世界の人たちが見た時のために、みなさんメッセージをお願い致します。
すぎやま
未来も「日本は、世界は、こんなに美しいんだよ」とこどもたちに胸を張って言える地球であってほしいと思います。「ゆめぴっく・宇宙桜グランプリ」でも、そんな作品をお待ちしております。
光田
幾野
瞬那
一人一人が夢を持ってチャレンジできる、持続可能な社会へ
すぎやまゆうこ |
NPO法人FILMe(あーすりんく)代表理事。女子美術大学日本画卒業。白泉社アテナ新人漫画賞受賞。別冊「花とゆめ」デビュー。コミックス6冊(杉山祐子)。代表作「Boy‘s☆Project」。映像作家として実写映画やアニメーション映画も手掛ける。巴里JAPANEXPO 2014、 2015、2017出展。夢はユニバーサルスクールの設立。若田宇宙飛行士の宇宙桜をテーマにした「ゆめぴっく宇宙桜グランプリ」は今年で5年目。SDGsを加えてパートナーシップの力で活動の幅をさらに広げている。 |
幾野拓光(イクノタクミ) |
新潟県出身。大学時代に多数の映画制作を経験しており、監督や撮影、照明などを担当。新卒でテレビ制作会社に就職し、その一年後にフリーの映像作家として映画・MV・CM・LIVE配信など活動は多岐にわたる。 2023年冬に映画公開予定。 |
光田葵(ミツダアオイ) |
岡山県出身。大学時代は京都の老舗企業や行政と連携し、アニメイベント・カフェ運営・e-sports大会などを実施。現在は映画やCMなどの映像プロデューサーとして活動する傍ら、日本の有名IPを使用したOEM販売なども行っている。 |
瞬那浩人(しゅんなひろと) |
1960年生まれ。関西大学大学院修士課程を修了後、セイコーエプソン株式会社に入社。従来のキャッシュレジスターからPOSレジへ転換させたエポックメイキング製品の企画、開発に従事。自身が発明者となる特許群を日米欧で出願し、多数の登録がされている。 定年退職後、本格ミステリー「下弦の月に消えた女」を出版し、小説家として活動中。 |
取材・執筆 佐藤慎一(さとうしんいち) |
1986年生まれ。 Circular In-finity創設者。環境学修士(東大)。2007年のノーベル平和賞を契機に、環境問題を生涯の課題と決心。その後、大学院で、国連の会議に3回出席。Climate Youth Japan1期生として化石賞の受賞や大臣への意見提出を行い、NHK などのニュースを賑わせる。日立製作所、環境省などを経て、活動 15 年目の現在はソーシャルビジネスや非営利団体などのエンパワーメントに挑戦。座右の銘は「傍観者を演者に」。 |