度重なる災害や新型コロナウイルスによるパンデミック。この10年日本を次々と襲った試練は、社会や経済活動に大きな影響をもたらし、企業活動や働き方にも新たな課題が次々と生まれています。その中において、社会的課題に精力的に取り組む企業も誕生し、革新的で成長力が期待されるビジネスに注目が集まっています。
有望なベンチャーやスタートアップであっても、顧客開発などに投入できる経営資源が不足しているのも事実。そうした課題を解決するために立ち上がったのが株式会社シードパートナーの永沼秀一さんで、高い専門性や問題解決能力を持つアドバイザーを派遣する「総合経営支援事業」を展開しています。
今回は実際に株式会社シードパートナーから営業顧問の派遣を受けている尾前損害調査オフィス株式会社代表取締役の尾前美幸さんと統括マネージャーの土井隆さんにコンサルティングを依頼した経緯や感想、永沼さんの人物像や今後の連携への期待などを伺いました。
火災保険の契約者の立場で、正当かつ最大限の保険金の受け取りを支援するサービスを提供
―はじめに、尾前損害調査オフィス株式会社の事業について教えてください。
土井 当社は、火災保険の契約者側に立って家屋の損害調査を実施し、報告書の作成や申請の支援、保険会社の鑑定に同行し、お客様が正当かつ最大限に保険金の受け取りができるよう支援する事業を行っています。きっかけとなったのは、10年前の東日本大震災。当時私と代表の尾前は損害保険会社の社員として、家屋の損害を補償する火災保険の申請に対応していましたが、身近な人たちに聞いてみると、保険の申請をしていないケースがほとんどでした。首都圏に住んでいる人たちなので、大きな被害ではないとはいえ、保険金が出る事例でも申請していない。契約の内容を知らないんですね。そこで、プライベートで教えてあげて彼ら自身が申請すると軒並み保険の対象となり、とても感謝されました。
尾前 保険金を受け取るには自己申告が必要で、損害保険会社の方から働きかけがあるわけではありません。ですが、大半の人は保険の仕組みをわかっていないので、申告することさえ思いつかないんです。そこで、保険会社の側ではなく、お客様の側に立って査定をすることで本来保険金の受け取りができた方を救えるのではないか、と考えたことからサービスを立ち上げ、2018年に事業を開始、2020年3年に株式会社を設立しました。
保険料は年々高くなっていますし、支払いを受けないのは本当にもったいない。生命保険はケガや病気、死亡時など受け取りの対象がわかりやすいのに対し、火災保険は対象になるケースなどがわかりにくく、保険料を25年間払っただけという事例は過去にたくさんあると思います。実際、保険契約者の3%弱くらいしか申請していないというデータもあります。申請できることを知っている人は保険金をもらえ、知らない人はもらえない。情報リテラシー、保険リテラシーによって得する人と損する人がいる現状を変えていきたい。火災保険のプロである私たちが知恵をお貸しすることで、公平な保険金の受け取りに資することができます。
土井 申請した場合も一部分にとどまることが多いんです。2019年10月に千葉県が台風で大きな被害を受けた時も屋根の損壊で保険金を申請するケースはありましたが、屋根にダメージをもたらすほど強風を受けているということは、他の部分にも影響が出ているもの。ですが、一般の人にはわからないので申請できない。私たちが査定することで様々な損壊が見つかり、何倍もの保険金が出た事例はたくさんあります。
ビジネスの発展を目標に営業顧問を依頼。企業のトップなど顧客開発に新たな道筋が
―お客様はどのような方が多いのでしょうか。
尾前 法人のお客様と個人のお客様がいらっしゃいます。設立当時にお世話になった方からクライアントをご紹介いただいたり、お客様からお客様へとつながるなど、ほとんどが口コミですね。同業他社との大きな違いは、当社は全員が火災保険に精通したプロであること。損害保険会社で火災保険の業務に携わった私と土井、工業大学出身で建築の知識のある社員からなるプロシェッシェルが常にお客様の目線に立ち、人とのつながりを大切にしながら事業を展開しています。
―その中で株式会社シードパートナーとはどのような経緯で出会われ、顧問を依頼されることになったかを伺わせてください。
土井 去年はコロナでの自粛期間で、当社も事業活動が一時停滞しました。その中で新たなお客様の開拓を模索していこう、外からの情報を積極的に取り入れてビジネスの発展につなげていこう、との方針を立てました。それまでは主に社員が参加していた異業種交流会に私たちも足を運ぶ中で、シードパートナーの永沼社長とお会いし、当社のサービス自体にご興味をもっていただいたんです。永沼さんに様々な企業の社長が参加するビジネスの勉強会にご招待いただくなど関係性を築く中で、総合経営支援事業のことを知り、昨年11月に営業顧問の派遣をお願いすることになりました。
―営業顧問の派遣では、どのような支援を受けているでしょうか。
土井 ご紹介いただいた顧問の先生は、元都市銀行の取締役をしていた松本さんとおっしゃるのですが、すごくいい方で、現在かなり密に連携をさせていただいています。幅広いジャンルで人脈を構築されている方ですので、企業をご紹介いただく際も決裁権をお持ちのしっかりした方とのつながりをコーディネートしてくれます。現在は松本顧問のアポイント先や打ち合わせ先に同行させていただき、当社の顧客となりうる方にアポイントをとってもらっています。当社が単体でお会いしようにも、お会いできない企業の社長や会長などトップの方とアポイントをとってくださることに本当に感謝しています。やはり営業は、当社単独で手掛けようにも、決裁権をお持ちの方にお会いするまでには時間がかかります。そこを松本顧問のお力で、飛び越えて代表とお話ができ、時間も手間もものすごく節約できるのは本当にありがたいですね。
―御社にとって株式会社シードパートナーとはどんな存在なのでしょう。
尾前 顧客の立場で言えば、人とのコーディネートをしてくれる存在です。ただ、それだけではなくて、永沼さんご自身がとても面倒見がいい方なんです。ご自身の商売上そこはあまり関係ないのではないかな、というところまで面倒を見てくださっています。ある意味ボランティアですよね、というくらい。様々な領域で、永沼さんご自身がお持ちの人脈を次から次へと紹介してくださるとともに、日本と外国を結ぶビジネスで培った幅広い見識を伺うことができ、私たちにとってこれ以上ないほどありがたい方です。
―シードパートナーとの今後の連携のイメージや発展の形についてお聞かせください。
土井 シードパートナーさんのもうひとつの事業である外国人人材の斡旋は、現状、当社の事業と直接関係していないのですが、外国人との文化交流につながる海外での教育システムに期待感をもっています。今、海外から仕事で来日する人や留学生は多いのですが、マンションを貸すと部屋が汚くなる傾向があります。土足で室内に入るなど文化や暮らし方の違いによるのですが、マンションのオーナーさんから保険の請求で当社に相談がもちかけられることがあり、顧客対応のひとつとして今後も考えていかないといけないと思っています。
シードパートナーさんには、海外との文化の違いからくるトラブルの解決につながる教育事業をより深化していただけたら、と思っています。今、街中で外国の方を目にする機会は多いのですが、島国の日本人は保守的な気質があり、交流まではいっていない。日本のことを理解し、日本の文化になじんだ外国の人が来てくれれば、日本人もこわがらずに交流できると思います。そういうところまで踏み込んで外国人人材の教育に携わり、日本文化の懸け橋のような存在になっていただけるとうれしいですね。
尾前損害調査オフィス株式会社さんのお話を受けての、株式会社シードパートナー 永沼秀一さんの感想
永沼 純粋に、そこまで想っててくれたのか。ステークホルダーメディア上での、リップサービスもあるのかわからないですけど、ありがたいことだなーと。確かに、うちの顧問は松本さんをはじめ、極めて優秀だという自負はあります。企業をどのような形で支援するかプロジェクトの形が固まれば、はっきり申し上げて私がいなくてもきちんと回っていきます。
でも、それは裏返せば、私がクライアントと向き合えるのは、契約を取る入口だけであり、あとの大半は顧問の方がパフォーマンスを発揮してくださるのを裏から支援する形となります。これは人と人とのビジネスでは、嫌だなーと。契約はシードパートナーとするので、クライアントには、顧問と契約していると思っていただく以上に、シードパートナーと契約してよかったと中長期的に思っていただけるようにしていかなければいけません。尾前損害調査オフィスさんが、「シードパートナーのビジネスと直接関係なくても、引き合わせてくれる」とおっしゃってくださっていますが、これはその一環でもあります。
当社にとってビジネスにならなくとも、クライアントのためになりうるのであれば、できることはしていきたい。それが、シードパートナーが信頼を得る唯一の方法だと心得ているからです。ビジネスをするうえで、この点は結構意識して動いています。
私が起業する際に掲げた理念は、大それたことに国内企業の経済発展に微力ながら貢献することだと考えました。もちろん、当社ができることは本当に小さいことです。それでも、GDPの0.0001%になろうとも、社会にプラスを与えられる存在になりたかった。
クライアントを支援する際も、コストダウンにつながる支援をするよりも、幾らかでも売上貢献につながることを全力で手掛けていきたいと考えました。この想いは今も変わりません。だから、当社のビジネスに繋がらなかろうが、クライアントのビジネスの拡大に寄与できる可能性があると判断すれば、誰かと誰かを引き合わせていく、というのは、当社のコンセプトに合致しています。これからも人との交流を促進していきたいですね。
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尾前損害調査オフィス株式会社さんについて思うこと
永沼 誠実な会社なので、本当に事業を伸ばしていってほしいですね。私は、土井さんと羽角さんのお二人しか、面識はありませんが、お二方とも、しっかりとしたプロであることはわかります。
火災保険の請求代行会社は現在、雨後の筍のように増えてきていますが、プロ意識に欠ける業者も数多いので、業界として若干怪しさが漂ってしまっている状態です。乱暴な営業が罷り通るというか、エンドユーザーに対して、申請してとれたら、儲けものですね。リスクはないから、やりましょうよ、といった強引なアプローチが散見されます。
そこをいくと、尾前損害調査オフィス株式会社さんは、社員の方お一人おひとりが、大手損害保険会社で働いていた方達であり、損害保険の構造や約款を熟知したうえで、ビジネスをしている点で、同業他社とはスタンスが大きく異なります。お客様のために徹するということを実践している方たちでもあるので、ゆくゆくは業界の健全化を牽引していく存在だと思っています。この点、非常に期待していますし、当社として支援できる点は支援していきたいと考えております。
<プロフィール>
尾前美幸
尾前損害調査オフィス株式会社代表取締役
大手外資系損害保険会社の火災保険専門チームで代理店営業および指導、保険金支払いの対応などの業務に携わり、2018年3月に尾前損害調査オフィス株式会社を設立。
土井隆
尾前損害調査オフィス株式会社統括マネージャー
大手外資系損害保険会社にて火災保険の業務に携わり、2018年3月に尾前損害調査オフィス株式会社設立に参画する。
<企業概要>
尾前損害調査オフィス株式会社
https://www.omae-office.com/
〒130-0013 東京都墨田区錦糸1-2-1 アルカセントラル14階
設立:2018年3月20日
電話番号 / FAX:03-6853-6645 / 03-6853-6601