
「葬儀の後に残る、あのロウソクを無駄にしたくない」
名古屋を拠点に全国展開する葬儀大手、株式会社ティアの現場から上がった切実な想いが、人々の心を打つ新たな価値を生み出した。
葬儀の残り火が美しいアロマへと生まれ変わるまで
年間2万6千件もの葬儀を執り行うティアの舞台裏では、これまで大量の「残ろうそく」が廃棄物として処理されていた。故人を送り、家族の祈りを見守った灯火が、役目を終えた瞬間に捨てられてしまう。この現実に光を当てたのが、再生プロジェクト「Re:rousoku(リ・ロウソク)」である。
同社は各会館から出るろうそくを100%回収し、丁寧に精製。そこへ心安らぐアロマを加え、誰もが手に取りたくなる洗練された缶入りキャンドルへと再生させた。2025年秋の先行販売では「供養の心が形を変えて手元に残る」と大きな反響を呼び、ついに待望のECサイト販売が開始された。
異才のアーティストが彩る命の循環

この商品が単なるリサイクル品と一線を画すのは、その圧倒的な芸術性にある。蓋を飾るのは、自閉スペクトラム症などの困難を抱えながら、類まれな感性で筆を走らせる「アール・ブリュット」の書き手たちの世界だ。
「カラフルキリン」や「ボタニカルハチドリ」といった、命の躍動を感じさせる作品たちが、かつて祭壇を照らしたろうそくと調和する。売上の一部はアーティストの活動支援に加え、「あしなが育英会」を通じて遺児たちへも届けられる。一つの灯火が、次なる世代の支援へと繋がっていく。そこには、ビジネスの枠を超えた深い慈しみの循環が完成している。
死を見つめる企業だからこそ見えた光
「命あるものすべてが幸せに暮らすことのできる社会」 ティアが掲げるこの哲学は、決して形だけのものではない。死の悲しみを知り尽くした葬儀社だからこそ、残された資源や、社会で埋もれがちな才能を救い上げる大切さを誰よりも理解していた。
本来であれば廃棄されるはずのものを、人々の心を癒やす芸術品へと昇華させる。この試みの裏側には、既存の価値観に縛られることなく、あらゆる命の形を肯定しようとする同社の強い意志がある。
既存の資源に眠る新たな価値の可能性
ティアの試みは、現代の企業活動における重要な示唆を含んでいる。「自社の事業プロセスで捨てられているものに、新たな役割を与えられないか」という問いかけだ。それは決して高度な技術革新だけではない。目の前の資源を慈しみ、異なる分野の才能と手を取り合うことで、社会に貢献する道が開けることを証明した。
今後、さらなる作品ラインアップの拡充を予定しているティア。その歩みは、単なる葬儀社の域を超え、持続可能な社会を照らす先駆者としての存在感を強めている。命を見送る場所から生まれた新しい光が、今、私たちの日常に穏やかな希望を灯し始めている。



