
朝食のテーブルで捨てられるはずの「卵の殻」。それが今、世界の一流ホテルが認める最高級のテーブルウェアへと姿を変えている。老舗メーカー「鳴海製陶(NARUMI)」が成し遂げたこの挑戦が、2026年、ついに世界最高峰のアワードで最優秀賞に輝いた。
ゴミ山に眠っていた「白い宝石」
2026年2月、世界の食器業界に激震が走った。「Tableware International Awards of Excellence 2026」のサステナビリティ部門。並み居る世界の強豪を抑え、日本のNARUMIが頂点に立ったのだ。
評価の理由は、誰もが驚く「卵の殻」のアップサイクル技術である。これまで食品工場などで大量に捨てられていた卵殻を、同社の代名詞である「ボーンチャイナ」の原料として再利用することに成功。環境への優しさと、ブランドの命である「美しさ」を完璧に両立させた。
常識を覆す「50%」という数字
他社と何が違うのか。それは、単なる「おまけ」程度の再利用ではないことだ。NARUMIの新しい器は、卵殻を含むサステナブル資源の活用率が、なんと50%を超えている。
普通、リサイクル素材を増やすと、磁器特有の透明感や強度が落ちてしまうものだ。しかし、彼らは長年培った焼成技術を駆使し、見た目も使い心地も「従来品と全く変わらない」レベルにまで引き上げた。手に取ったプロのバイヤーたちが「これが卵の殻からできているのか」と絶句したのも無理はない。
「骨」から「殻」へ。老舗のプライド
なぜ、ここまで卵の殻にこだわったのか。背景には、同社が日本で初めてボーンチャイナの量産に成功した「パイオニアとしての自負」がある。
ボーンチャイナは本来、牛の骨灰を使う。しかし、時代の流れとともに「もっと地球に負荷をかけない素材はないか」と模索を続けてきた。そこで目をつけたのが、未利用のまま眠っていた卵殻だ。彼らにとって卵の殻はゴミではなく、採掘資源である石灰石に代わる「新たな資源」だったのである。
捨てればゴミ、活かせば未来
この物語から私たちが学べるのは、視点を変えることの圧倒的な力だ。「古臭い伝統」と「最新の環境意識」は、対立するものではない。むしろ、伝統の技術があるからこそ、捨てられるはずの素材に命を吹き込める。
一流ホテルや航空会社に愛されるNARUMIが、自ら「当たり前」を壊して挑んだこのプロジェクト。私たちが手にする一枚の皿が、実は地球の未来を守る一歩になっている。そんな新しいスタンダードが、今、名古屋の地から世界へと広がっている。



