
野菜の「端材」を単なる廃棄物と見なすか、それとも高付加価値な資源と捉えるか。独自技術で未利用野菜を粉末化するグリーンエースの視座は、地方の農産物供給網が抱える構造的課題に一石を投じている。
山形から発信される「捨てない」パンの衝撃
山形県内を走る「マックスバリュ」の店頭に、鮮やかな緑を纏ったベーカリーが並び始めた。 一見すれば食欲をそそる新作パンだが、その正体は、本来なら畑の隅で捨てられるはずだったアスパラガスの「足元」である。
株式会社グリーンエースとイオン東北が仕掛けたこのプロジェクトは、山形県が推進する「やまがた フード・プロジェクト」から産声を上げた。 出荷の際に切り落とされる硬い根元や不揃いな個体。最上地域だけでも年間約30トンに及ぶというこの「未利用資源」が、今、消費者の手に届く逸品へと生まれ変わっている。
栄養と色彩を封じ込める「粉末化」という魔法
他社によるアップサイクルと一線を画すのは、グリーンエースが誇る独自の粉末化技術だ。 通常、野菜を粉末にする過程では熱や酸化により色や香りが損なわれやすい。
しかし、同社の技術はアスパラガスが持つ本来の芳醇な香りと、鮮烈な栄養成分を損なうことなく粒子に閉じ込める。 この「アスパラガス粉末」を、イオン東北が持つインストアベーカリーの開発力と掛け合わせた。
チーズの塩気が効いたケークサレや、燻しベーコンと合わせたピッツァ。 それらは「社会貢献のために我慢して食べる」ものではなく、純粋な「美食」として完成されている。
「もったいない」を経済価値へ変える思想
「ただの有効活用」で終わらせない背景には、同社が掲げる“UpVege”という確固たる哲学がある。 代表の中村慎之祐氏が率いるグリーンエースは、単なる加工業者ではない。
農家にとっては処理コストでしかなかった廃棄部位を、技術によって原材料という「資産」へと変換する。 地域課題を解決しながら、同時にビジネスとしての持続性を担保する。
この冷徹なまでの合理性と、地域農業への深い愛情の同居こそが、同社の歩みを加速させている要因といえるだろう。
供給網の「隙間」を埋めるビジネスの真髄
今回の取り組みから学べるのは、個別の企業努力を超えた「共創」の重要性だ。 未利用素材を抱える農協、技術を持つスタートアップ、販路を持つ大手小売、そして全体を繋ぐ行政と卸。
自社だけで完結させようとせず、各々の強みをパズルのように組み合わせることで、30トンの廃棄物は利益を生む商品へと変貌した。 「付加価値は、捨てられていた場所にこそ眠っている」 グリーンエースが示したこの事実は、停滞する地方経済における再生のヒントを雄弁に物語っている。



