
大阪・関西万博の熱狂を「記憶」だけでなく「機能」として日常に繋ぎ止める。株式会社モンドデザインのブランド「SEAL」は、ルクセンブルクパビリオンの屋根膜を再利用したバッグを通じ、万博の新たな意義を提示している。
万博パビリオンの解体資材がバッグに。予約1,800本突破の舞台裏
華やかな祭典の裏側で、常に議論の的となるのが巨大建造物の「その後」である。大阪・関西万博において、一つの鮮やかな答えが示された。株式会社モンドデザインが展開するアップサイクルブランド「SEAL」が、ルクセンブルクパビリオンの屋根膜を再利用したバッグの製造を本格化させている。
予約数は当初の予測を大幅に上回り、既に1,800本を突破。万博閉幕後に回収された強靭な資材は、今まさに大阪の縫製工場で、熟練の職人たちの手によって新たな命を吹き込まれている。単なる記念品に留まらないこの熱狂は、消費者が「物語のあるプロダクト」を求めている証左といえるだろう。
他社の追随を許さない「SEAL」の独自性。大阪の職人が挑む超難関素材
このプロジェクトが特筆すべきは、単なるアップサイクルの域を超えた、高度な技術の融合にある。パビリオンの屋根膜という素材は、過酷な天候から来場者を守るための圧倒的な耐久性を備える一方で、その強靭さゆえに加工は極めて困難を極める。
そこで白羽の矢が立ったのが、大阪の縫製工場、株式会社ふく江だ。素材の硬さや厚みに合わせ、職人が一点ずつ手作業でパーツを切り出す。効率のみを追求する大量生産の論理を排し、素材の個性を読み解くこの緻密な工程こそが、他社には真似できない「SEAL」の独自性である。
捨てられるものに価値を。モンドデザインが貫く「循環」の哲学
モンドデザインの根底にあるのは、2007年のブランド創設以来一貫している「捨てられるものに新たな価値を」という哲学だ。代表の堀池洋平氏は、これまでも廃タイヤチューブという、扱いが困難な素材をバッグへと昇華させてきた。
彼らにとって、万博の資材は特別なものではなく、日常の延長線上にある「未活用の資源」に過ぎない。しかし、その「当たり前」の姿勢が、国家的なイベントにおけるサステナビリティのあり方を、最も現実的かつ魅力的な形で体現している。
資源を「使い切る」執念。このプロジェクトから学ぶべきビジネスの視点
この取り組みから我々が学ぶべきは、資源を「使い切る」という徹底した執念だろう。製造工程における試行錯誤の結果、当初の想定よりも資材を効率的に活用できる見通しが立ち、異例の追加生産が決定した。
これは、現場での工夫が社会的なインパクトを増幅させる好例である。環境負荷の低減を、単なるコストや義務として捉えるのではなく、物語性と技術力によって「欲しくなる商品」へと変換する。その構図こそが、これからのビジネスに求められる真の循環型経済の姿ではないだろうか。



