
使われなくなった着物や帯に新たな息吹を吹き込み、現代の装いへと昇華させる。伝統文化の衰退という課題に対し、Relier81は「靴」という実用的なアプローチで、世代や国境を超えた新たな価値の結び目を作り出している。
横浜に現れる一点物の聖地
眠っていた伝統が、再び街を歩き出す。京都を拠点に、着物や帯のアップサイクルを展開する「Relier81」が、2月12日からニュウマン横浜でポップアップストアを開催する。店頭に並ぶのは、単なるリメイク品ではない。日本の国番号「81」を冠したブランド名が示す通り、伝統技術と現代の感性を結んだ「今の時代の履物」である。今期は、廃棄リンゴを再利用したアップルレザーを新作バッグに採用するなど、循環型社会を見据えた挑戦の歩みをさらに進めている。
素材の記憶を解き放つ独創性
他社と一線を画すのは、徹底した「個」へのこだわりだ。大量生産の波に抗うかのように、使用する着物や帯の部位によって、全ての製品が世界に一つだけの表情を持つ。特筆すべきは、そのデザインのバランス感覚だろう。伝統を声高に主張するのではなく、あくまで現代のスタイリングに馴染むよう、本革と掛け合わせたメリージェーンや、歩行の安定性を追求したチャンキーブーツへと落とし込まれている。消費者は「社会貢献」という義務感ではなく、「美しい一点物」という純粋な所有欲から、結果としてサステナブルな選択をすることになる。
「時をほどく」という哲学
このブランドの根底には、単なるリサイクルを超えた「時をほどき、今を纏う」という深い思索がある。代表の田尻氏は、使われなくなった着物が溢れる現状を憂い、それを「カタチ」を変えることで身近に引き寄せようとしている。特筆すべきは、その生産背景の透明性だ。職人の高齢化が進む靴産業の現状を打破するため、製造工程を動画で公開し、ものづくりの尊さを可視化している。伝統を棚に飾る骨董品としてではなく、血の通った「産業」として次世代へ繋ごうとする強い意志が、そこには流れている。
伝統を静脈から動脈へ戻す知恵
Relier81の取り組みから我々が学ぶべきは、既存の価値を否定せず、文脈を書き換える「編集力」の重要性だ。廃棄物処理やリサイクルという、いわば社会の「静脈」を支える背景を持つグループが、アップサイクルという「動脈」の事業へ挑戦する姿は、持続可能なビジネスの理想的な形を示唆している。古いものをただ守るのではなく、現代の生活習慣に適合させるインターフェースを開発すること。それこそが、成熟した日本社会における、真に豊かなイノベーションの姿ではないだろうか。



