
地域課題である「海ごみ」を、遠く離れた戦禍の希望へと転換する。特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトが実践する「CoRe Loop」は、単なる支援の枠を超え、教室と世界を地続きにする新しい教育の型である。
【SDGs事例】対馬の海洋プラスチックをリサイクルし、カンボジア難民キャンプの支援へ
長崎県対馬市の海岸に漂着したプラスチックごみやシーグラスが、姿を変えてカンボジアの子どもたちのもとへ届けられた。特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトは、対馬市立西部中学校の生徒たちが制作したリサイクルキーホルダーを、カンボジア・シェムリアップ州の難民支援の現場へ持参し、戦禍を逃れた子どもたちへ直接手渡した。 この取り組みは、同法人が推進する循環型学習プロジェクト「世界とつながる学び(CoRe Loop)」の一環である。単に物資を贈るという慈善の枠を超え、現地の教育・食料支援と密接に連動させ、日本の生徒たちの探究成果を人道支援の実装へと昇華させている。
探究学習の新しい形:なかよし学園が提示する「CoRe Loop」の独自性と教育効果
従来の国際支援や環境教育の多くは、寄付や清掃活動といった「一過性の行動」で完結し、その後の行方は不透明なままになりがちであった。しかし、なかよし学園が構築した「CoRe Loop」は、その名の通り、学びと支援が円環を描く点に真髄がある。 生徒たちは地元の海を汚す「負の遺産」を、誰かを喜ばせる「価値ある作品」へと再定義する。そして、なかよし学園がその「出口」を責任持って引き受け、現地の反応や感謝の声を詳細な記録と共に日本の教室へ「還す」のである。 「届けて終わりではなく、受け取った側の声を教室へ還し、次の探究へつなげる。この循環こそが我々の核心です」 同法人が語るこの仕組みは、支援を単なる施しから、生徒自身の当事者性を育む「生きた教材」へと変貌させている。
環境問題と平和学習の融合:廃棄物を「希望」に翻訳するサステナブルな哲学
この活動の底流には、対立や欠乏を「共創」の機会へと転換する強固な哲学がある。現地で対面したジュエリーアーティストのBel(ベル)氏は、地雷で足を失いながらも、石を磨き、付加価値を付けることで自らの人生と地域の未来を切り拓いてきた。 Bel氏は、日本の生徒が「ゴミ」から生み出したアクセサリーを手に取り、「素材の価値を変える力は、人の希望をつなぎ直す力になる」と語ったという。 海洋プラスチック、地雷、紛争。一見、解決不能に見える巨大な社会課題も、教育と表現というフィルターを通せば、国境を越えて人々を結びつける「共通言語」になり得る。なかよし学園は、課題を嘆くのではなく、それを「平和を構築するための素材」として翻訳しているのだ。
ビジネスへの示唆:CSV経営や企業のサステナビリティ活動が学ぶべき「社会実装力」
ビジネスシーンにおいても、なかよし学園の実践は極めて示唆に富んでいる。第一に、自社のリソースや地域課題を、異なる文脈(コンテキスト)に接続することで新たな価値を生み出す「翻訳の視点」である。 第二に、ステークホルダーを単なる「支援者」に留めず、プロジェクトの「当事者」として巻き込むUX(ユーザー体験)の設計だ。対馬の生徒たちが経験した「自分の作品が世界を動かした」という手触り感のある成功体験は、いかなる座学よりも強い動機付けとなる。 SDGsが形式化しつつある今、求められているのは理念の唱道ではない。課題の現場を歩き、小さなアクションを確かな循環へと育てる、このような「実装の知恵」ではないだろうか。



