
モビリティの安全を追求してきた企業が、今、社会全体の生存率向上に挑んでいる。株式会社TCLが提唱するのは、単なる備蓄ではなく、極限状態での「使いやすさ」を機能化した実効性ある防災ソリューションの姿だ。
SDGs Week EXPO 2025に見る、災害対策の最前線
2025年12月10日、東京ビッグサイトで開幕する「SDGs Week EXPO 2025 自然災害対策展」。持続可能な社会の実現を掲げる本展示会において、ひときわ異彩を放つブースがある。輸入車販売のホワイトハウスグループを母体とする株式会社TCL(名古屋市)の展示だ。
同社が披露するのは、国内累計販売4万本を突破した次世代消火器具「ファイヤーショーカスティック」や、昨今の社会問題に応えたクマ遭遇回避デバイス「ベアーガード」など、計4点の災害対策グッズ。これらは単なる「備品」の域を超え、テクノロジーによって人的被害を最小化する「能動的なデバイス」としての性格を強めている。
「非日常」を「日常」の操作性で解決する
TCLの製品群が他社の防災用品と一線を画すのは、徹底したユーザー体験(UX)へのこだわりだ。
主力製品の「ファイヤーショーカスティック」は、従来の消火器のような重厚な薬剤容器ではない。わずか365gという超軽量のスティック型であり、イタリア発のガス消火技術によって、周囲を汚さず、かつ迅速な初期消火を可能にしている。
また、初披露となる「ベアーガード」は、110dBの警告音と高輝度LEDを組み合わせ、聴覚と視覚の双方から野生動物を遠ざける。既存の防災用品が「起きた後の対処」に重きを置く中で、同社の製品は「被害を未然に防ぐ、あるいは最小化する」という予防医学的なアプローチを特徴としている。
モビリティ企業が「命」に寄せる合理性
なぜ、自動車販売を祖業とするグループがこれほどまでに防災領域で存在感を示すのか。そこには、常にリスクと隣り合わせの「移動」を扱ってきた企業ならではの、冷徹なまでの合理性がある。
同社代表の木村文夫氏は、安全を情緒的な精神論ではなく、物理的な「機能」として定義する。例えば、火災避難用の「エスケープキット」に含まれる粘着式保護メガネは、一刻を争う煙の中で「迷わず貼るだけ」で視界を確保できる設計だ。
「有事の際、人間は普段通りの思考はできない」という前提に立ち、直感的に使える道具を社会に実装する。この現場主義的な哲学こそが、同社の製品開発を支える背骨となっている。
BCP対策の「形骸化」を打破する視点
多くの日本企業にとって、TCLの取り組みはBCP(事業継続計画)をアップデートするための指針となるだろう。
一つは、既存事業の知見(小型・高性能・高耐久)を社会課題へ接続する柔軟性。そしてもう一つは、防災を「義務」ではなく「実効性ある投資」へと昇華させる視点だ。
サステナビリティの本質とは、環境保護のみならず、災害リスクに対し、いかに被害を最小化し迅速に日常を取り戻すかにある。TCLが提示するプロダクト群は、技術によって「絶望の時間を減らす」という、極めて実効性の高い社会貢献の形を我々に示している。



