
廃材を活かしたポーチ型ラッピングにD2CブランドSOÉJUの「あたりまえを心地よく刷新する」哲学が凝縮された。衣料品ロス削減に挑む同社の独自性に迫る。
サステナブル経営事例 SOÉJUが導入した「再利用可能」なギフト包装
D2CファッションブランドのSOÉJU(ソージュ)を展開するモデラート株式会社は、2025年12月、ホリデーギフトキャンペーンに合わせ、従来の包装の概念を覆す新しい取り組みを開始した。同社が導入したのは、開封後もポーチや小物入れとして再利用が可能なアップサイクルポーチ型ラッピングである。
ギフトラッピングは役目を終えれば廃棄物となるのが常であったが、ソージュは、この一時的な資材に環境配慮と付加価値を持たせる戦略を選んだ。キャンペーン期間中、このギフトラッピングを含む注文の送料を無料としたことは、単なる販売促進ではなく、環境に配慮した行動様式そのものへの投資と捉えるべきだ。
プレコンシューマー・コットンに注目 SOÉJU独自の残布活用戦略
この包装材の独自性は、素材の徹底したアップサイクル活用にある。袋部分には、縫製工場や紡績工場で生まれる廃材を再利用したリサイクル・プレコンシューマー・コットン生地(GRS認証)を採用した。さらに帯の部分には、リモンタコレクションの製造過程で生じた残布を用い、捨てられるはずだった素材に新たな役割を与えている。
ソージュのラッピングは、再利用可能なポーチとして日常品に生まれ変わる。これは、資材コストを顧客体験の向上と環境負荷の低減という2つの目的に振り替える、極めて先進的なビジネスモデルである。
同社がブランドプロミスの一つに掲げるのは「しなやかな革新 Soft Innovation」である。すなわち、社会と装いの本質を見つめ、「あたりまえ」を心地よく刷新し続けるという哲学だ。この哲学が、今回のラッピングという顧客との接点において、具体的に実践されている。
廃棄物削減を追求 「タイムレスな定番」に見るSOÉJUの経営哲学
ソージュは、流行や年齢に左右されない「ライフスタイルの基盤となるタイムレスな定番アイテム」を提案することで支持を得てきた。そのコンセプトは、資材を使い捨てる包装文化への問題意識と根底で繋がっている。
上質な素材を厳選しつつも手の届きやすい価格で提供する「日常視点の上質 Moderate luxury」という思想は、ラッピングという付属品にも「長く使えること」「無駄がないこと」という倫理観を求めたことに他ならない。
企業の環境配慮は義務であるが、ソージュの取り組みは、それをコストではなく、顧客満足度を高めるための「革新」として位置づけている。この一貫した姿勢が、ブランド価値をさらに高めていると言える。
アパレルD2C企業が「資材ロス」を「優位性」に変える方法
ソージュのアップサイクルラッピングは、アパレル産業におけるサステナブル経営の未来に、重要な示唆を与える。
1つは、企業のサステナビリティ戦略において、環境負荷の低減と顧客満足度の向上が両立し得るという点である。資材をアップサイクル製品に変えることで、企業は廃棄コストを削減し、顧客は再利用可能な魅力的なポーチを手に入れる。
もう1つは、ブランド哲学の徹底である。ソージュは、主力の衣服だけでなく、ラッピングというディテールに至るまで、「長く使えること」「無駄を生まないこと」という一貫したストーリーを構築した。これにより、単なるトレンドとしてのサステナビリティではなく、ブランドの根幹をなす揺るぎない倫理観として顧客に浸透する。
すべての経営資源をサステナブルな思想で貫くことこそ、持続可能な社会において企業が成長し続けるための鍵となる。ソージュの事例は、アパレルD2C企業が「資材ロス」を「競合優位性」に変える具体的な手法を示している。



