
マルニ木工は、家具製造で発生する木くずを再資源化した新素材「Konoko」を開発した。和紙糸を用いた独自のアップサイクル生地で、2026年2月から全国発売を開始する。天然素材の魅力を循環させる挑戦が始まる。
木くずから生まれた新アップサイクル素材「Konoko」の発売概要
株式会社マルニ木工は、家具製造時に発生する木くずを原料の一部として再利用した生地「Konoko(このこ)」を2026年2月に全国で発売すると発表した。同社によると、木くずを100ミクロンのパウダーへ加工し、マニラ麻と混ぜ合わせて和紙を製造。その和紙を細く裁断し、撚りをかけることで横糸となる和紙糸が生まれる。
縦糸には綿を使用し、軽さと強度を兼ね備えた生地に仕上げた。自然素材の穏やかな風合いを生かしたアイボリー、ベージュグレー、ブラウン、カーキの4色展開で、「MARUNI60」などのシリーズに順次導入される予定だ。
マルニ木工が取り組む循環型ものづくりと素材開発の独自性
Konokoの特徴は、素材循環をすべて自社工場内で完結させている点にある。同社の家具づくりでは、樹種ごとに異なる木くずが多く発生するが、従来であれば廃棄されるこれらを回収し、新たな素材として再生させている。
木くずの粉砕から和紙化、糸づくりまでの一連の流れを自社で構築したことで、外部依存を最小限に抑えた「工場内アップサイクル」の仕組みを確立した。家具づくりの副産物が再び家具の素材として還元される構造は、同社ならではの強みとなっている。
伝統技術と最新加工が生む和紙糸生地の強度と風合い
Konokoが持つ独特の質感は、和紙糸ならではの軽さと涼やかさによるものだ。和紙は古くから織物や紙幣にも利用されるほど強度があり、マニラ麻の繊維に木くずパウダーを加えることで、天然素材ならではの陰影と深みを帯びる。
細く裁断された和紙を撚り合わせる工程には職人の技が入り、均一ながらも柔らかな表情を持つ糸となる。家具張地として必要な耐久性を維持しつつ、さらりとした触感や繊細で控えめな光沢が生まれ、木製家具の質感と自然に調和する。
アップサイクルが家具業界にもたらす価値と企業への示唆
Konokoの取り組みは、アップサイクルが単なる環境配慮にとどまらず、「付加価値の創出」として成立することを示している。廃棄される素材を手仕事と技術によって新しいプロダクトへ転換し、市場価値を再構築する仕組みは、ものづくり企業にとって大きな示唆となる。
また、製造過程で生じる副産物を再利用できる体制は、原材料調達の不確実性を抑え、長期的なサステナビリティ戦略にもつながる。Konokoが家具業界に広がれば、アップサイクル素材がスタンダードとして浸透する可能性がある。
循環型ものづくりが求められる中で、マルニ木工の取り組みは、次の時代の素材開発に向けた一つの方向性を示している。



