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第17回)紙おむつを再利用せよ~ ユニ・チャーム、花王、メタウォーター、進む技術開発

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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高齢化によって増え続ける紙おむつだが、廃棄の際は環境に負荷をかける。国内ではリサイクルの取り組みが始まっており、日本が世界に先駆けてビジネスモデルを確立できる可能性を秘める。近年、企業、研究機関、自治体が協力して、紙おむつのリサイクルで多様な取り組みを行っている。紙おむつのリサイクルは、SDGsの17の目標のうち「つくる責任、つかう責任」「気候変動に具体的な対策を」に合致する。

伸び続ける大人用おむつ生産量

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 国内の紙おむつ生産量は、子ども用は2017年をピークに減少傾向にあるが、それでも2022年は99億枚に達する。大人用は増加し続けており、2022年は93億枚を超えた。今後も大人用おむつは増え続け、子ども用を抜くことが予想される。

 おむつはし尿を吸っており、廃棄物になると重量が4倍程度に膨らむ。環境省によると、2030年度には使用済み紙おむつの廃棄量は245~261万トンに達するとの試算がある。これは、一般廃棄物ぜんたいの6.6~7.1%を占めるという。

 し尿を吸った使用済み紙おむつは燃やすのに時間がかかり、焼却時に温室効果ガスを多く発生させる。ゴミ処理を担う地方自治体にとっても悩みのタネだ。企業でもSDGsへの意識も高まっており、問題への取り組みが近年進んでいる。

ユニ・チャームは鹿児島で

 企業でこの分野を手掛けるのは、当事者であるメーカーと、殺菌技術を持つ水処理企業だ。

 大人用・幼児用おむつ大手のユニ・チャームは、使用済み紙おむつをリサイクルする実証実験を鹿児島県志布志市などで行ってきた。まず、志布志市などの自治体が住民への分別の呼びかけ、ゴミの収集を担う。

 集めた使用済み紙おむつは、ユニ・チャームのリサイクルシステムで脱水処理したうえで洗浄し、素材を、パルプや、水分を吸う「高吸水性ポリマー」に分離する。

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おむつの構造 ユニ・チャームHPより

 紙おむつのうち、し尿に直接触れて吸収する部分にパルプが含まれている。このため、分別後のパルプは洗浄しても大腸菌などの細菌は残っている。そこでユニ・チャームのシステムでは、オゾンによる独自処理をして、未使用パルプと同等の品質にする。オゾンは強い殺菌、脱臭、漂白効果があるのだ。

 高吸水性ポリマーとは、おむつ内部にある「高分子吸水材」と呼ばれる部分で、水分を吸収して閉じ込める役割を担う。リサイクル過程で、吸収した水分を完全に取り出し、再度吸収できる状態に戻す。

栗田工業も水処理技術生かす

 同社の取り組みには、今後、水処理企業の技術が活用されそうだ。自治体の上下水道設備建設や運転管理を担うメタウォーターは、2023年3月、ユニ・チャームとこの分野で協業することを発表した。メタウォーターは、オゾン処理の反応効率を高める技術を持っており、両社での特許出願などで協力する。

 上下水道では、水の汚れやにおいを、オゾンを使って除去する工程がある。元々持っている知見を、紙おむつ再生にも転用するというわけだ。

 民間企業へ水処理プラントと薬品を提供する栗田工業もこの分野に参入した。使用済み紙おむつを分別処理して、燃料や素材に再生する装置「クリタサムズシステム」を開発した。ゴミ収集用の袋に入れたまま装置に投入すると、装置内で専用の同社製薬品で洗浄する。その後、ビニール袋と、パルプ類を含んだ処理水に分別する。プラスチックや、処理水から取り出したパルプ類は固形燃料や再生プラスチックに加工される。排水も処理して放出する。

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栗田工業のおむつリサイクルシステム 同社HPより

 特徴は、袋を破る機能も付いていることだ。使用済み紙おむつをゴミ袋から出すことなく投入できるうえ、袋の成分であるプラスチックも再生できる。

 同社は水処理企業の中でも、薬品の提供ビジネスに強い。装置を売り切った後、洗浄剤をサブスクリプション(定額・定期での提供)として販売することで安定収益を得ることもできるビジネスモデルだ。

花王は京大と技術協力

 紙おむつを作る当事者としてリサイクルに取り組むのは、ユニ・チャームだけではない。花王は京都大学と協力して、紙おむつを燃やし、炭化固形物に変換する「炭素化装置」の開発を進める。紙おむつを燃やすと二酸化炭素が発生するが、炭化させれば固形物内に二酸化炭素を閉じ込めることができる。消臭や殺菌効果も期待できる。この炭化固形物を燃料などで産業利用することも想定している。

 紙おむつの製造や、介護ケアサービスは、高齢化という社会課題に世界でも早くに直面した日本が得意とする産業だ。紙おむつの再利用も、今後、世界で高齢化が進み、同時に環境意識が高まる中、日本企業が存在感を示せる分野になりそうだ。紙おむつメーカーにとっては「作る責任」を明確化でき、水処理企業にとっては新たな事業領域を広げることにもつながる。

自治体の動きも活発化

行政側の動きも活発になっている。先述のユニ・チャームと取り組んだ鹿児島県志布志市の他にも、リサイクルに取り組む自治体はある。福岡県大木町では、紙おむつを収集する専用ボックスを設置。病院・福祉施設や一般家庭から週2回収集し、1日20トンを処理できるリサイクル施設で処理。再生パルプは耐火ボードなどの建築資材に加工された。従来のごみ処理に比べて二酸化炭素を約4割削減できたという。千葉県松戸市や鳥取県伯耆町でも、それぞれの手法で、燃料に再生する取り組みを既に行っている。
 民間企業がいくら技術を開発しても、リサイクルの「入り口」である自治体の協力がなければ、取り組みは進まない。環境省も、自治体のごみ処理施設の整備には補助金メニューを用意して、使用済み紙おむつのリサイクルを後押ししている。

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種市 房子 (たねいち・ふさこ)

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1975年生まれ。98年から毎日新聞、同社傘下の週刊エコノミストで記者・編集者として勤務。2023年4月に独立後は仕事探し、自分探しの毎日。

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