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メガソーラー支援、27年度廃止へ 「北欧の夢」から覚めた日本が直面する、再エネ賦課金と原発の冷徹な現実

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メガソーラー支援廃止へ

政府・自民党は12月14日、大規模太陽光発電施設(メガソーラー)について、2027年度から新規事業に対する支援を廃止する方針を固めた。東日本大震災以降、「脱原発」の旗印の下で聖域化されてきた再生可能エネルギー政策だが、環境破壊や年間3兆円を超える国民負担の増大を受け、歴史的な転換点を迎えている。

今回の決定は、単なる補助金カットではない。製造業立国である日本が、「理想論」を捨ててエネルギー確保の「総力戦」へと舵を切る、極めて現実的なシグナルと言える。

 

「釧路の湿原を守れ」高市首相がメスを入れる“野放図な太陽光”の終焉

複数の政府・自民関係者によると、出力1000キロ・ワット以上のメガソーラーや、10キロ・ワット以上の地上設置型設備について、市場価格に上乗せして電力を買い取る支援制度の対象から除外する。自民党は15日にも提言をまとめ、政府は年内に関係閣僚会議で正式決定する見通しだ。

今回の方針転換の背景には、太陽光発電の「野放図な拡大」に対する強烈な反省がある。2012年の制度開始以来、山林を切り開いて設置されたパネルは土砂災害のリスクを高め、景観を損なうとして各地で軋轢を生んできた。北海道の釧路湿原国立公園周辺での開発計画などは、その象徴的な事例として問題視されている。

高市首相は9月の総裁選で「釧路の湿原に太陽光パネルを敷き詰めるような補助金制度を大掃除する」と明言しており、今回の措置はその公約を具体化するものだ。また、2025年度の再エネ買い取り総額は約4.9兆円に達し、その原資として電気料金に上乗せされる「賦課金」は3.1兆円にのぼる。もはや限界に達した国民負担を軽減し、環境負荷の少ない屋根設置型へ誘導することで、持続可能な制度への是正を図る狙いがある。

 

なぜ日本は「再エネ100%」になれないのか? 製造業立国が抱える「地理的宿命」

この政策変更を巡り、一部では「世界の脱炭素潮流に逆行する」との声も上がるかもしれない。北欧諸国などを引き合いに出し、「オール再エネ」を目指すべきだという議論も根強い。しかし、今回の政府判断の根底にあるのは、日本と北欧では前提条件が全く異なるという冷徹な事実認識だ。

人口密度が低く、平坦な土地や安定した風況に恵まれた北欧とは異なり、日本は山岳地帯が多く、可住地に人口が密集している。その狭い国土で、世界有数の規模を持つ製造業の電力需要を賄わなければならない。「使えるものは何でも使う」「省エネを徹底する」「電化できない熱需要はバイオマス等へ転換する」という、あらゆる手段を組み合わせた総力戦でしか、日本のエネルギー需給は成立しないのが現実だ。

ある意味で、日本のエネルギー問題は世界でも類を見ないほど「激ムズ」なパズルと言える。メガソーラーへの過度な依存からの脱却は、「日本は日本独自の最適解を見つけなければならない」という、エネルギー自立への覚悟の表れとも解釈できる。

 

「電気は東京、責任は新潟」 柏崎刈羽に見る統治の歪みと国の責任

再エネの「夢」から覚めた日本が次に直視しなければならないのが、ベースロード電源としての原子力、とりわけ再稼働を巡るガバナンスの構造的な欠陥だ。現在、首都圏の電力供給の鍵を握っているのは東京電力・柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)である。ここで発電される電気は関東一円で消費され、日本のGDPを支える首都圏の経済活動や市民生活に使われる。しかし、その再稼働の可否を決める事実上の拒否権は、電力の直接的な受益者ではない新潟県知事一人の判断に委ねられている。

関東の消費者が高い電気料金負担や電力不足の不安を強いられる一方で、再稼働という国家レベルの決断の責任を、一自治体の首長が負う。知事の肩にはあまりに重すぎる荷が積まれているのが現状だ。この「受益と負担、そして責任のねじれ」こそが、日本のエネルギー政策を停滞させている最大の要因ではないか。

 

メガソーラー支援の廃止は、無邪気な再エネ礼賛時代の終わりを告げる号砲だ。今後は、国がエネルギー安全保障の責任をより前面に押し出し、知事個人に過度な負担をかける現在の再稼働プロセスを見直すなど、泥臭くも現実的な制度設計が求められることになる。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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