障害者の手仕事が「本」と出会う

選書サービス「菊川」(岐阜市)は、社会福祉法人いぶき福祉会との共創による夏の限定企画「夏の百~偶然が結ぶ、本とアートとあなたの物語」を2025年7月16日からオンライン限定で販売開始する。
今回で3年目となるこのシリーズは、今年初めて障害者福祉とのコラボレーションを実現。100種類の本と、それぞれに一点もののアートバッグを組み合わせたセットで、福祉施設の支援と文化体験を同時にかなえる取り組みとして注目を集めている。
小麦粉袋をアップサイクル、100通りの“偶然”を楽しむ選書体験
この「夏の百」では、いぶき福祉会が手がける“世界に一つだけのアートバッグ”が主役となる。バッグは、お菓子作りの現場で使用された小麦粉の袋を再利用して制作。23名の障害者と10名の職員が、拭き上げ・裁断・ペイント・縫製という工程を分担しながら一枚一枚手作業で仕上げた。
かつては廃棄されていた袋が、人の手によって鮮やかな表情を帯び、唯一無二の作品へと昇華されている。
販売される商品は全100点。購入者はあらかじめ割り振られた「1から100までの番号」を直感で選び、その番号にあてがわれた選書とアートバッグを受け取る仕組みだ。どの本が届くかは事前に分からず、まさに「偶然との出会い」を楽しむ構成となっている。価格は税込4,290円(送料込み)で、売上の一部はいぶき福祉会への寄付として還元される。
コラボのきっかけは……

今回のコラボレーションの契機は、2024年7月に開催された「夢よもっとひろがれ展」。同展を偶然訪れた市川由加里代表は、小麦粉袋を使ったアートバッグに心を奪われたという。「うわあ!これは…すごい!」と胸を打たれた彼女は、その後、福祉会が運営するショップ「ほとり」を訪問。窓ガラスに書かれた「いっぱいあそびにおいでね」という文字に感銘を受け、共創への想いを募らせていった。
「この場には、だれもが安心できる“居場所”がある」。そう感じた市川さんは、福祉と文化が溶け合う新たな取り組みとして、今回の「夏の百」をいぶき福祉会との共作として発表した。アートバッグはこの企画のためにサイズや持ち手の素材を再設計し、まさに本企画専用のオリジナル作品に仕立てられている。
市川さんはこう語る。
「選書という営みは、“偶然”との出会いの連続です。数字を選ぶことで生まれるささやかな驚きと、それを受け取る喜び。そして今回は、その出会いに福祉の現場で生まれたアートが加わります。本とアート、人と人が交差するこの小包が、日々の生活にワンダーを届けられたら――。そう願って、この夏の企画を送り出します」。
福祉施設への寄付も実施、「想いが宿る本とバッグ」が生むつながり
菊川は、これまで400件以上の選書を手がけ、「偶然を愛する人へ。」というコンセプトのもと、本との一期一会を届けてきた。今回のコラボレーションは、アートと福祉、そして読書体験を通じた新たな社会貢献の形として、文化と福祉を橋渡しする事例とも言える。
いぶき福祉会は1995年に設立された岐阜市初の障害者福祉法人で、150名以上の利用者が所属。「どんな障害の重い人でも、豊かに安心して暮らせる地域づくり」を掲げ、お菓子づくりや農作業など地域との接点を大切にした活動を展開している。
特設ページでは、プロジェクトの背景や福祉会の活動紹介、バッグ制作の様子なども紹介されており、すでにYahoo!ニュースや地元メディアでも反響を呼んでいる。
偶然から始まった出会いが、本とアート、そして社会課題との新たなつながりを生んだ。100通りの小さな物語が、この夏、誰かの手元に届くことになる。
【販売概要】
・商品名:「夏の百 ~偶然が結ぶ、本とアートとあなたの物語~」
・販売開始:2025年7月16日(水)午後8時〜(オンライン限定)
・価格:税込4,290円(送料込)
・販売数:限定100セット(数字1〜100のうち1つを選択)
・内容:選書1冊 + アップサイクルアートバッグ1点
・販売サイト:https://kikukawabook.base.shop/