
スターバックスコーヒージャパン(東京)は24日から、全国の約2000店舗で紙製ストローを順次廃止し、バイオマスプラスチック素材のストローへの切り替えを開始した。紙製ストローを導入してから約5年ぶりの刷新となる。飲み心地の改善と廃棄物削減の両立を図る狙いがあり、1月に沖縄県の店舗で先行導入したところ、利用者から高い評価を得たという。
カネカ製のバイオプラスチック素材のストロー
新ストローには、大手化学メーカー・カネカが開発したバイオプラスチック素材を採用。植物油を主原料とし、海水や土壌中の微生物によって二酸化炭素(CO2)と水に分解されるという特性を持つ。紙製よりも軽量であることから、店舗での廃棄物量を年間約200トン、約5割削減できると見込まれている。
また、紙製ストローの課題だった舌触りのざらつきや、時間経過によるふやけを解消し、より快適な使用感を提供する。色はスターバックスのブランドカラーであるグリーンを採用し、デザイン面にも配慮した。
今回の切り替えは、アイスコーヒーなどの通常の飲料メニューに使用する直径6ミリメートルのストローから始まり、4月上旬にはフラペチーノなどに使用する太さ10ミリメートルのストローも新素材に変更する予定だ。4月末までには全国の店舗での切り替えが完了するとみられる。
スターバックスは2020年以降、使い捨て素材の削減に向けた施策を進めており、ストロー不要のカップ蓋やバイオマス素材のカトラリーの導入、繰り返し使用できる樹脂製の店内用グラスの採用などを進めている。同社サステナビリティ部の古川大輔部長は「今後も使い捨て素材を削減し、リユースへシフトするアクションを推進していく」と24日に東京都内で開かれた報道陣向けの説明会でコメントしている。
バイオマスストローとは? 本当に環境に優しいのか
バイオマスストローは、植物由来の原料を使用し、最終的に自然界で分解されることを特徴とする。今回スターバックスが採用するバイオマスプラスチックは、微生物の働きによってCO2と水に分解される「生分解性プラスチック」に分類される。しかし、実際に環境に優しいかどうかは、一概には言えない。
一つの論点は、分解の条件だ。バイオマスプラスチックの多くは、特定の温度や湿度、微生物が豊富な環境でなければ分解が進まないとされる。一般的な環境では分解に時間がかかるため、適切な処理をしなければ従来のプラスチックと同様に残存する可能性がある。また、製造過程においても、化学的な処理やエネルギー消費が伴うため、全体としての環境負荷が低いとは断言しにくい。
さらに、バイオマスプラスチックが「カーボンニュートラル」であることが必ずしも保証されるわけではない。植物由来である以上、製造時のCO2排出量は化石燃料由来のプラスチックより少ないとされるが、原料の栽培・加工に伴うエネルギー消費や農地の利用による影響も考慮する必要がある。
また、プラスチック自体の使用削減が求められる中で、使い捨てストローを継続することの是非も議論の対象だ。より環境負荷の少ない選択肢として、リユーザブル(再利用可能)なストローや、ストローを不要とするカップの普及を進めることの方が、長期的には持続可能な解決策となるかもしれない。
環境配慮の取り組みは進むも、課題は残る
スターバックスの今回の取り組みは、使い捨てプラスチックの削減と、利用者の利便性向上のバランスを取る試みとして評価できる。しかし、バイオマスストローが本当に環境負荷を軽減するのか、ライフサイクル全体での影響を見極める必要がある。企業の環境施策は、単なる「グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)」に終わることなく、科学的なデータに基づいた持続可能な選択であることが求められるだろう。